パリ五輪・日本人メダリストの活躍と注目の戦いを総括(大会15日目)
現地時間7月26日に開幕したパリ五輪も、8月11日の閉会式をもって17日間にわたる熱戦に幕が落とされた。ここでは8月10日(日本時間8月10〜11日)の大会15日目にメダルを手にした日本人選手たちの活躍や、注目選手の戦いぶりを振り返る。※トップ画像出典/Getty Images
大会15日には、レスリング男子フリースタイル 57キロ級の樋口黎選手、女子フリースタイル 57キロ級の櫻井つぐみ選手、女子ブレイキンの湯浅亜実(ダンサーネームAMI)選手が金メダル、スポーツクライミング男子複合(ボルダー&リード) の安楽宙斗選手が銀メダルを獲得した。
レスリング 男子フリースタイル 57キロ級 樋口黎 金メダル
リオデジャネイロ五輪の銀メダリストで2大会ぶりの五輪出場となった樋口黎選手は、レスリング男子フリースタイルの57キロ級に出場し、金メダルを獲得した。
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対戦予定だったアリレザ・サーラク(イラン)の計量不参加により、初戦を不戦勝で勝ち進んだ樋口は、準々決勝でダリアントイ・クルス(プエルトリコ)と対戦。圧倒的な展開で12-2のテクニカルスペリオリティ勝ちして準決勝に駒を進めた。
樋口は準決勝でのちに銅メダルを獲得するアマン・アマン(インド)と対戦。第1ピリオドの開始早々に大技の『一本背負い』で4ポイントを奪った樋口は、その流れから片足タックルでさらに得点を加えて6-0のリードとし、強さを見せつけた。その後も相手を圧倒した樋口は、第1ピリオドで10-0のテクニカルスペリオリティ勝ちを収め、決勝進出を決めた。
決勝でスペンサー・リチャード・リー(アメリカ)と対戦した樋口は、序盤に場外ポイントで得点を奪われて0–2と本大会で初めてリードを許す展開に。だが、得意とする『片足タックル』ではなく『両足タックル』に切り替えた攻撃が功を奏して同点に追いつくと、終了間際に2点を奪って4-2として逆転勝ちし、樋口は自身初の金メダルを獲得した。
レスリング 女子フリースタイル 57キロ級 櫻井つぐみ 金メダル
レスリング女子フリースタイルの57kg級に、現在まで世界選手権3連覇(※)を成し遂げている櫻井つぐみ選手が出場し、金メダルを獲得した。
(※2021年は55kg級、2022、2023年には57kg級で優勝)
1回戦でハナフェイ・テーラー(カナダ)を6-1で勝利した櫻井は、準々決勝でルイサ・バルベルデ(エクアドル)と対戦した。果敢に攻める櫻井は第1ピリオドを5-0で終えると、第2ピリオド途中で11-0のフォール勝ちして準決勝へと駒を進めた。
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準決勝で櫻井は、リオデジャネイロ五輪の決勝で吉田沙保里に勝利し吉田の五輪4連覇を阻止したヘレンルイーズ・マルーリス(アメリカ)と対戦した。櫻井は試合開始早々に先制を許したものの、第1ピリオドの終盤に逆転すると、第2ピリオドでは『アンクルホールド』などで得点を重ねて、10-4で勝利した。
櫻井は決勝で、昨年の世界選手権で顔を合わせたアナスタシア・ニキータ(モルドバ)と対戦した。タックルから2点を先取した櫻井は、その後も2点を加えて第1ピリオド4-0で折り返すと、攻撃の手を緩めなかった櫻井は試合の終盤にも2点を追加し、6-0で競り勝ち金メダルを獲得した。
ブレイキン 女子 湯浅亜実 (AMI) 金メダル
パリオリンピックから新競技として導入されたブレイキンの女子に出場した湯浅亜実(ダンサーネームAMI)が金メダルを獲得し、五輪初代女王の座を射止めた。
ブレイキンはDJが即興でかける音楽に合わせて選手たちが即興でダンスを披露し、技術や表現力、独創性といった5つ審査基準を元にして競い合うこととなっている。まずは4選手による予選が行われ、各組上位2名の8選手による3ラウンド制のトーナメントによって、順位が決定される。
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完成度の高いダンスを披露したAMIは危なげない戦いぶりで、予選リーグを1位で通過。決勝トーナメントに駒を進めた。
決勝トーナメントでも「パワームーブ」や「トップロック」など、多彩な技を組み込んだパワフルな演技を見せたAMIは、地元の大声援を受けるシア・デンベレ(フランス)を3対0で下すと、準々決勝で日本の福島あゆみ(AYUMI)を退けた難敵のインディア・サルジュー(INDIA、オランダ)にも2対1で勝利した。決勝では昨年の世界選手権を制した17歳のドミニカ・バネビッチ(NICKA、リトアニア)と対戦したAMIは、パワームーブを駆使した勢いのあるパフォーマンスを見せるNICKAに対して、総合力の高いダンスで応戦。終始落ち着いた雰囲気の中で「ハイチェア」といった高難度のトリックを駆使しながら流れるようなパフォーマンスを見せて3対0で勝利。初代金メダリストに輝いた。
〈予選〉
2対0(8-1、9-0) 対アンティライ・サンドリニ(イタリア)
2対0(9-0、9-0) 対ファティマザフラ・マムニ(モロッコ)
2対0(8-1、9-0) 対曽瑩瑩(ズォン・インイン、中国)
〈決勝トーナメント〉
3対0(8-1、9−0、8−1)シア・デンベレ(フランス)
2対1(3-6、6-3、8-1)インディア・サルジュー(オランダ)
3対0(6-3、5-4、5-4)ドミニカ・バネビッチ(リトアニア)
スポーツクライミング男子複合(ボルダー&リード) 安楽宙斗 銀メダル
東京五輪から正式種目となったスポーツクライミングの男子複合に安楽宙斗選手が出場し、銀メダルを獲得した。
複合種目は4つの課題を登った数で競う『ボルダー』と、課題をクリアしながら登った高さを競う『リード』の合計点によって争われる新たなフォーマットが今大会から導入され、準決勝ラウンドまでのポイント獲得ランキング上位8名が決勝に進むルールとなっている。
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17歳で五輪初出場の安楽宙斗は、準決勝の『ボルダー』で2つの課題をクリアして完登。69.0点の高得点を叩き出して早々に決勝進出を決めると、『リード』も全体4位の68.0点でまとめて、全体1位(137.0点)で決勝進出を決めた。
決勝でも安楽は『ボルダー』の第一課題をわずか45秒ほどで完登して幸先の良い滑り出しを見せると、第2課題も楽々とクリア。決勝進出した選手の中で唯一『スラブ』を決めるなど、4つの課題に挑戦して69.3点を獲得した安楽は、首位で自信が得意とする『リード』に挑むこととなった。
先に競技を終えたトビー・ロバーツ(イギリス)を上回るには85.9点が必要な安楽だったが、疲労の影響もあってか中盤以降に得点を伸ばせず、金メダルが確定する『ホールド』の前で落下。76.1点の5位でトビー・ロバーツの逆転を許し、安楽は初挑戦の五輪を2位で終えた。
準決勝
ボルダー:69.0点(1位)
リード:68.0点(4位)
合計点:137.0(1位)
決勝
ボルダー:69.3点(1位)
リード:76.1点(5位)
合計点:137.0(2位)
楢崎智亜 準決勝敗退(10位)
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Semifinal
ボルダー:54.4点(2位)
リード:12.1点(14位)
合計点:66.5点(10位)
前回の東京大会4位の楢崎智亜は準決勝の『ボルダー』で2位につけたが、『リード』の序盤でホールドを掴めずにまさかの落下。全体10位の成績に終わり、決勝に進出することはできなかった。
陸上 男子400mリレー 決勝 5位
男子400mリレーに坂井隆一郎選手、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手、桐生祥秀選手、上山紘輝選手、柳田大輝選手の5名が出場し、37秒78の5位で戦いを終えた。
男子400mリレーの予選に出場した日本チームは、アメリカや南アフリカといった競合が揃う予選第1組に出場。サニブラウン・アブデル・ハキーム、柳田大輝、桐生祥秀、上山紘輝の4選手で予選に挑んだ日本チームは、第1走のサニブラウンが10秒32の区間トップの走りを見せると、桐生も区間3位の走りを見せて38秒06の4位でフィニッシュ。着順は4着で自動的に決勝進出が決まる3位以内に入れなかったものの、4位以降の上位2位のタイムに該当し、決勝進出を果たした
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決勝ではそれまで第2走を担い、バトンを受け渡す重責を果たしていた柳田大輝に代割って坂井隆一郎を起用。これまでに実践経験がない、坂井隆一郎、サニブラウン・アブデル・ハキーム、桐生祥秀、上山紘輝のオーダーで決勝に挑むこととなった。
第1走の坂井が安定した飛び出しを見せて先行した日本は、バトンパスにやや詰まりが見られたものの2走のサニブラウンが“区間賞”の8秒88で快走。3走の桐生が巧みなコーナーワークで区間2位の9秒16で走り抜けると、首位で第4走者の上山にバトンが渡された。
強豪国のエースが揃う最後のストレートで振り切られ、惜しくも37秒78の5位でレースを終えた日本は、リオデジャネイロ五輪以来2大会ぶりのメダルに惜しくも手が届かなかった。