Gettyimages 2195464234

「相手の方向に転がってるのはわかってた」鈴木彩艶が語る、ローマ戦スーパーセーブの舞台裏

3月20日。バーレーン戦に勝てば、日本代表は史上最速でワールドカップ出場を決めるという大一番を迎えていた。そんな重要な試合に向けて注目を集めていたのが、ゴールキーパー・鈴木彩艶(すずき・ざいおん)だ。最終予選では6試合でわずか2失点と安定した守備を見せ、海外クラブでも存在感を放ち続ける守護神。ここではその素顔に迫る。※トップ画像出典/NurPhoto via Getty Images

Icon %e5%90%8d%e7%a7%b0%e6%9c%aa%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af 1King Gear Editorial Department Entertainment Team | 2025/04/30

「キーパー人気が高い」鈴木が語る海外のリアル

ワールドカップ出場を目前に控えた日本代表。そのゴールを託されたのは、22歳の若き守護神・鈴木彩艶(すずき・ざいおん)だ。最終予選では6試合を終えてわずか2失点という安定感を見せ、海外クラブでもレギュラーとしてプレーを続けるその姿は、まさに日本のゴールキーパー像を塗り替える存在と言っても過言ではない。現在、鈴木はイタリアの名門パルマに所属し、セリエAという世界最高峰の舞台で戦っている。移籍初年度ながら開幕戦からスタメン出場を果たし、これまでリーグ戦26試合に出場。何度もスーパーセーブでチームを救ってきた。ヨーロッパの地に渡って約1年、異国の地での生活にも徐々に適応してきているそうだが、言語面での苦労は少なくないようだ。

「食事が非常に美味しいので、その楽しみもありますし、大変なのは言語。最近難しいと思ったのは、ピッチ上ではイタリア語で指示しようと思ってるんですけど、まだイタリア語を喋れない選手に対しては英語に切り替えるのが難しい」と話す。

ゴールキーパーというポジションの特性上、コミュニケーション力が重要であることが伝わってくる。また海外でプレーするなかで、日本とのカルチャーギャップも感じるという。特に顕著なのが、ゴールキーパーに対する見られ方の違いだ。

「海外の方がキーパーの人気がすごい。日本以上にユニフォームを買ってくれることが多かったりとか、キーパーに対する熱量の違いを感じますね」

日本ではまだまだ“地味”と思われがちなポジション。しかし鈴木は「もっとGKの魅力が伝われば」と語る。

好セーブ連発も「まだ進化の途中」 

今季は移籍1年目ながらすでに好セーブを連発している鈴木だが、その手応えを聞くと謙虚な答えが返ってきた。
「試合には継続して出場できていますが、結果を見た時に失点数が多いので、良い意味で色々なことを学べているなと思う。良いプレーをした時は褒めてくれるし、悪いプレー・ミスをしたら厳しく言われるので。サッカーが根付いている、サッカーの目が肥えている印象を受けますね」と、出場機会を得られていることへの感謝をにじませつつも、あくまで目指すのは「チームを勝たせるGK」であり、そこに至るまではまだ進化の途上だと見据えている様子だ。そして自身のストロングポイントとして挙げたのは、“シュートストップ時の伸び”。ゴールライン際での最後のひと伸びは、彼の代名詞といってもいいだろう。攻撃面で飛距離のあるキックでチャンスを生み出す能力も強みだと語る。まさに現代型GKの資質を体現する存在だ。

“彩艶の1ミリ”に詰まった、GKとしての矜持

その能力が最大限に発揮されたのが、今季のローマ戦で見せたスーパーセーブだ。
「中に選手がいなかったので、相手のスルーパスを狙う考えや、この後の状況への準備をしながらポジション修正をしていた。アクシデント的な感じで裏にボールが抜けてきて、味方の足が少し止まる感じがあったが、GKとしては笛が鳴るまで最後まで続けることが一番大事。自分としては集中を切らさず、常に準備を続けていた」
弾いたボールが相手の前に転がっても、すぐに起き上がってコースを消す――反応、判断、そして執念。味方が足を止めかけた場面でも、最後まで集中力を切らさずにゴールを守り抜いた。さらに矢部が「これは“彩艶の1ミリ”って呼んでます」と絶賛したシーンでは、「ラインを割ってないという感覚があった」と胸を張る。相手FWが真ん中にシュートを打ってくると読んだ鈴木は、「自然に体がボールをかき出そうと動いていた」と語り、状況判断の鋭さを見せた。本人曰く「キーパーとしてはラインを割るまで、ネットにボールが当たってボールをキックオフの場所に戻すところまでプレーが終わらない」という言葉がすべてを物語っているだろう。

ファンからの質問に答えるコーナーで「これまで対戦して“ヤバかった”選手は?」と聞かれると、インテル・ミラノのフェデリコ・ディマルコの名を挙げた。クロスと見せかけてシュートを打つ、その一瞬の判断の難しさが印象に残っているという。

強さの裏にある、冷静な自己分析。鈴木彩艶は、進化の真っただ中。22歳という若さでこれだけの視座を持つ彼が、日本代表のゴールマウスを守るという事実に希望しかない。

DAZN『やべっちスタジアム #192 : 鈴木彩艶登場!“彩艶の1ミリ”をストップ解説』より
*The information in this article is current as of the time of publication.