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「やってきたことは無駄ではない」ジャイアンツ優勝に導いた4番岡本和真の復活劇

2024年9月28日4年ぶりにリーグ優勝を果たした読売ジャイアンツ。歓喜に包まれたビールかけ会場の中、集中的にビールを浴びている選手がいた。第20代キャプテンの岡本和真選手だ。これ以上ないほどの笑顔がこぼれ、仲間たちと抱き合い優勝を噛み締めるキャプテン。その笑顔の裏には今年野球人生最大の試練があったことなど、誰が想像できようか。2025年シーズンに向けて、キャプテン岡本の試行錯誤しながらも優勝を掴み取った姿をクローズアップした。※トップ画像出典/Getty Images

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若きキャプテンの重責、ポーカーフェイスの裏には

2024年2月1日、宮崎でのキャンプ地で春季キャンプ初日を迎えたジャイアンツ。ホテルを出て必勝祈願に向かい、神社の本殿内で絵馬に決意をしたためる。『勝つ、打つ』ただ4文字だが、この4文字にどれほどの思いが込められているか計り知れない。


練習前に呼吸を整えるためのルーティンで、床にリラックスした表情で横たわる岡本。ふと起き上がり「寝るとこやったわ」と飄々と起き上がり、カメラマンに向かって「まじめにやってると思ったでしょ」といたずらっ子のようなやり取りを見せた。何ともつかみどころの無い、いわゆる天邪鬼な性格が見え隠れしている。

入団10年目の節目。「いくら(個人の)成績が良くてもチームとして優勝やAクラスでなければ意味がない。優勝するためにやっている」と、やりきれない思いを溢した。

チームが2年連続Bクラスという責任を誰よりも感じている4番。契約更改の会見では「優勝したかった。本当に優勝できるチームを。優勝、優勝、優勝、日本一を達成したいなと思っています」と、優勝の2文字を何度も繰り返し貫徹した思いを吐露した。

開幕、不調、レジェンドとの特訓

球団としても創設90周年を迎える記念すべき1年。3月29日、開幕戦の試合前に阿部慎之介監督は、「キャンプの時も言ったけど、皆はとにかく自分の技術向上だったり数字だったり、そこにこだわってやって欲しい。俺は皆がどうやったら勝てるかというのを俺は必死に考えるから。皆は思う存分グラウンドでパフォーマンスを出して下さい。最高の1年にしよう」と、檄を飛ばした。

続くキャプテン岡本は、「これから1年始まりますので、頑張っていきましょう。長いと思うんですけど、その日出せる全力を出し切って…勝つだけです。あとはもう勝つだけです!行くぜ!さぁ行こう!」とチームを鼓舞した。20代のキャプテンという事もあり、選手内には先輩らも多くいる。その中でも溌溂とした明るさを忘れず、チームを引っ張っていこうとする気概が感じられる挨拶だった。

開幕戦の翌日、センターのスタンドに第1号ホームランを叩き込み、守りではスクイズをダイビングキャッチし守備でも攻めの姿勢を貫いた。

しかしその後、快音は鳴りを潜め5月6月の得点圏打率は1割台まで落ち込んだ。皮肉にもその一方で、チームは開幕から首位争いに食い込んでいた。

成果を出せない日々に、苦悩する岡本。「今年に関しては良い時が無いんで、自分の中で。なんとか最善を見つけながら色々やってますけど」と語る口調も苦し気だ。

絶不調の中、練習で取り組んだのは“積極的なデータ活用”だった。そこで役立ったのが、選手達の要望もあり昨年より導入された米国製の最新機器『HitTrax』だ。打球速度はもちろんの事、スイングの軌道やインパクトの位置まで可視化され、調子の波をデータで把握することができるハイテク機器である。「やってきたことは無駄ではない」。そう語り練習に取り組む岡本の額には、大粒の汗が光っていた。


ジャイアンツの王者奪還を誰よりも願っている人がいる。現役時代リーグ優勝13回、日本一を11回経験しているレジェンド、長嶋茂雄終身名誉監督だ。栄光の時代を知る長嶋は88歳という高齢ながらも力強く、「勝つ!勝つ勝つ!本当に頑張ってくれ」と拳を振り上げて選手を激励した。後日、不調に悩む岡本は病院で静養中という、かつての4番である長嶋の元を訪れ素振りの特訓を受けたという。

その甲斐あってか、7月には岡本に復活の兆しが見えた。攻撃ではセンターのフェンスに直撃するタイムリー2ベースヒットを放ち逆転勝ちに大きく貢献。試合後のヒーローインタビューでは、303日ぶりのレフト守備に対して尋ねられると「めちゃくちゃ汗かきました」と答え、その汗の理由を尋ねられると「ベンチからレフトまで距離長いんで」と飄々と答え観客を沸かせた。


不調を乗り越え努力を重ねたキャプテンの姿に、矢野謙次コーチは「結局人間がグラウンドで野球するので。人間性がグラウンドでのプレーに必ず出てくるので、そういう(真剣に)取り組む姿勢がいいなと思ってる。そういうのがジャイアンツの優勝に直結すると思う」と背中で語る努力のキャプテンを語った。

待ちわびた瞬間、歓喜に沸くジャイアンツ

優勝争いが佳境を迎える9月、スタンドから岡本コールが沸き起こる中、岡本は監督との特訓が活かされた右中間への均衡を破るホームランで、チームをこの日首位に押し上げた。9月の得点圏打率は4割を超え、その後続く試合も岡本のひと振りがチームを勝利に導いた。

そして9月27日には、10年目の節目に通算1000安打を達成し、優勝マジックも1となった。

そしてついに翌日、岡本は4安打3打点の活躍を見せ、ジャイアンツは実に4年ぶり39回目のリーグ優勝を決めた。

スタンドのファンの声援に応え胴上げを終えた後、ベンチでは目を赤くしタオルで涙を拭う岡本の姿があった。

ビールかけ会場では、他の選手達と一緒にはしゃぐ岡本。キャプテンの重責、選手としての不調の時期を乗り越えやっと辿り着いたリーグ優勝。その頬を伝うのはビールだろうか、それとも涙だろうか。2025年シーズンの彼の活躍にまた期待したい。



「DAZN GIANTS 2024 -INSIDE- EPISODE 2 : 岡本和真 10年目の涙」より

※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています