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過去最多を記録!Jリーグにおける”サポーター”の存在とあるべき姿とは?
2025年2月14日(土)より開幕した「2025明治安田Jリーグ」。2025年は開幕節の入場者数が過去最多を記録するなど昨シーズン以上の盛り上がりを見せるJリーグ。今回はそんなJリーグを支える“サポーター”の存在に注目してみたい。フットボール文化において、「12番目の選手」と表現されることがあるサポーター。勝利のために全力で応援する彼らの存在は、クラブにとっても頼もしく不可欠なものに違いない。しかしその一方で、日本ではサポーターがネガティブなニュースの中心になることが近年増えている。海外リーグの事例とも比較しながら考察していく。※トップ画像出典/Getty Images
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ヨーロッパ3大リーグのサポーター文化
国によって生活や文化が違うように、サポーターの感覚や応援の仕方もそれぞれ違う。フットボールの母国イギリスでは、応援文化の過程に「フーリガン問題」といった暗い過去もあるが、今ではスタジアムの雰囲気もすっかり改善されている。応援スタイルについて話が及ぶと、イギリス出身のスポーツライター ベン・メイブリー氏は「イングランドの場合、コールリーダーがクラブによっているところもあるんですが、基本的には自発的な応援が多いんですよね。別に誰が歌い出してもいい。周りのウケ次第で(歌が)広まるんです」と話す。
スポーツコメンテーターで「ロマニスタ」でもある北川義隆氏は、イタリアの応援文化について問われると「昔は怖かったなぁ、ウルトラスは。昔は本当に鉄パイプとか持って入って来ました」と回顧。以前は爆竹や催涙弾が使われることもあり、ゴール裏は危険地帯だったと言う。サッカー解説者の細江克弥氏も「一時期本当に危険な雰囲気で、それを敬遠するかたちでお客さんが減ってしまって。これはどうなのかなって思いましたけど、ここ10年で劇的に改善されたので、だいぶ見やすく安全なスタジアムになってきていると思う」と補足した。
スペインの応援文化については、サッカー解説者小澤一郎氏によると「サッカーは演劇と同じ“ショー”」だという。お金を払ってサッカーというエンターテインメントを見に行くのがスペイン流であり、「『1日の最後に家族みんなで、しかもその家族もおじいちゃんおばあちゃん含む3世代で、みんなで年間シートを周辺でしっかり取って、みんなでサッカーを見て帰りましょう』というのが文化的に根付いている」と語る。
日本独特の応援スタイル「日本の縦社会を感じた」
Jリーグのサポーター文化は、ヨーロッパ3大リーグのそれとはだいぶ異なる。スポーツコメンテーターの桑原学氏は、30年というまだ短い歴史の中で「サッカーを見る目」が養われつつも、日本独特の応援方法はずっと変わらないと話す。コールリーダーに合わせて歌を歌い、飛び跳ね、手拍子をする。そんな日本のスタイルに外国籍選手が口を揃えて「ずっと歌い、ずっと飛び跳ねている」と驚くが、それだけ日本の応援が特徴的なのだろう。
また、2003年から11年間ガンバ大阪のゴール裏にいたというベン氏は、そこに「日本の縦社会」を感じたと言う。「リーダーがいて、若者は言うことを聞かないといけない雰囲気」がとても興味深かったとも明かす。Jリーグが誕生してから30年。応援したい人、試合を見たい人、その場を楽しみたい人といったさまざまなタイプの観客が足を運ぶようになった。そんな多様化した楽しみ方がさらに全面的に受け入れられれば、より多くの集客に繋がり、入場者数をさらに伸ばすに違いない。
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クラブのトラブル対処法は適切?
サポーター同士や選手とサポーターの衝突が度々話題になる昨今。2023年シーズンからその数は増え、2025年1月にはついに逮捕者が出るまでになった。
Jリーグクラブにおけるサポータートラブルの対処法は果たして適切と言えるのだろうか。
「一線を越えてしまう、暴力をふるうとか、そういう人っていうのはどの社会にもいますよ。絶対に。それを修正することが外からできるのかっていうと、多分僕はできないと思っていて。それだったら『そういうことをしたからもう今後入れません』とシンプルでいいと思う」と桑原は話す。ほんの数人が問題を起こしたからといって観戦ルールを厳しくするのではなく、ルール違反をした本人に対してのみ対処するべきだと持論を展開した。
さらに、北川は「サポーターとチームの選手たちがメガホン持って話してるでしょ。あぁ、あんなことをやるんだって(驚いた)」と試合後に見たワンシーンに触れる。桑原も「なんでゴール裏にだけああいうことをするのかが本当に分からないんですよね。それをやることによって、ゴール裏のほんの一部の方の話ですけど、勘違いさせてしまうことも僕は往々にしてあると思うんですよ。『俺たちが文句を言えば話を聞いてもらえる』とか」と疑問を呈した。
最後に「サポーターはどんな存在であるべきか」の問いに対して、桑原は「やっぱり常にクラブが感謝したくなる、そういう存在であることが一番大事かなと(思う)」と語る。
開幕節から過去最高の盛り上がりを見せるJリーグ。日本のフットボール文化の明るい未来のために、サポーターもクラブもお互いの距離感や関係性を改めて見直すべきなのかもしれない。
「Football Freaks#105 今こそ『サポーター』について考えよう」(2023年9月20日(水))より
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています