すべての白球女子の代表として。ライバルとともに高みを目指す谷山莉奈。
過去3シーズンで2度の最多ホールドと1度の最優秀防御率のタイトルを獲得し、8月の女子野球W杯日本代表に初選出された女子プロ野球・埼玉アストライアの谷山莉奈投手。 抜群のコントロールで次々と打者を打ち取っている印象を受けるが、実は対戦するにあたって苦手意識を持っている選手もいるそうだ。 最終回ではライバルとの対戦についてに加えてプライベートの過ごし方、そして野球を愛する女子たちへのメッセージを話してもらった。
Sen big tree
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2018/07/16
リーグ屈指の好打者・三浦伊織との戦い
ー苦手意識のある対戦相手はいますか?
フローラの(※)三浦伊織選手ですね。もう10割打たれてるような感覚です(笑) 気持ちで負けてるんでしょうね。
普段はちゃんとコースに投げられているところを意識しすぎて真ん中に投げちゃったり、甘いところに入っちゃったりして勝負できない状態なので、それをどうにか克服したいです。
逆に言えば三浦選手を抑えられれば相手にプレッシャーをかけることができますし。
※三浦伊織:女子プロ野球・京都フローラ所属の外野手。女子プロ野球1期生でこれまで首位打者2回、最多安打3回、盗塁女王6回を獲得している。高校時代はテニス部キャプテンという経歴の持ち主。日本代表。
ー三浦選手は打率5割を打ったシーズンもありますし、6度の盗塁女王にも輝いていますね。
特に今年は打順が1番になって初回に最初に当たるバッターなので抑えたいところです。ランナーに出すとリードもめちゃめちゃ大きくて、足から戻っているのに牽制しても刺せないんですよね。どうにか対策をと思って色々考えてはいるんですけど。
W杯でも一緒なのでいろいろ聞きながら勉強できたらと思っています。
あとは私の調子のバロメータとしてディオーネの(※)中田(友実)選手のインコースに投げられるかが基準になりますね。そこに投げきることができれば調子は良い方です。
中田選手は思い切って勝負できるというか、対戦が楽しみなバッターなんです。今まで直接やり取りする機会はなかったんですけどW杯の合宿で話すようになって、そこからは毎試合前に会話しています。
やはり中田選手のような左バッターのインコースに投げきれない時は全部真ん中に入ってきて長打を打たれてしまいますね。
※中田友実:女子プロ野球・愛知ディオーネ所属の外野手。2016年に育成球団・レイアからトップチームに昇格すると打率.356を記録し、最優秀新人賞を獲得した。日本代表。
プロとして野球をする女の子に伝えたいこと。
ーやはり先発へのこだわりはあるのでしょうか。
元々プロに入った時から先発をずっとやりたいと思っていました。でもその前に中継ぎをやったことがすごく勉強になっていて、その経験があるから今があると思っています。
結果、先発の座を去年掴むことができて幸せです。特に1年目の時に良くても悪くてもこの1人のバッターを抑えて来いという形で起用してくださっていた新原(千恵=現京都フローラヘッドコーチ)さんと朝井(秀樹=現読売ジャイアンツ打撃投手)コーチに良い経験をさせてもらいました。
ーもし先発する試合の前にやっているルーティーンがあれば教えてください。
周りの音が聞こえないくらいの音量で音楽を聴いて遮断します。聞く歌はその時によって違うんですけど、ミスチルが好きなのでそのメドレーを流したり、自分の登場曲(Over Drive・JUDY AND MARY)を聴いたり洋楽を聴くこともあります。
気分に合わせた曲リストを作っています。登場曲をOver Driveにしているのは夏っぽくて爽やかで、昔から聞いてた自分の馴染みのある曲として選びました。最近の曲はあんまりわからないので。
ーずばり、ここは誰にも負けないという自分の長所は?
スイッチが入った時の集中力は誰にも負けないというのがありますね。オフの時はダラっとしてますし、逆に集中してない状態は自分でも分かります。集中のスイッチがハマる確率を上げていくことで調子の波をちょっとでもなくしていきたいです。
ーオフの時は何をして過ごすことが多いですか?
オフの日は野球のことを考えないようにしてます。休みの日はだいたいお昼ぐらいまで寝て、映画を見るのが好きなので家で見たりとか映画館に行ったりとか。ケーキも好きなのでカフェを探して行ったりしてゆっくり過ごしています。出かける時は高校、大学の同期や地元の友達とですかね。
ー最後にこれから野球をやる女の子へのメッセージ、そしてW杯に向けた意気込みをお願いします。
私の時は高校からはソフトボールをやるというのが当たり前だったんですけど、今は野球もソフトボールも選べる環境が少しずつできてきているし、野球ではプロも目指せるようになりました。
中学でのプレーの環境はまだなかなかないと思うんですけど、続けられる場所というのはあると思うのでやめないで続けて欲しいというのは思います。 私も1回野球から離れたけど続けていてよかったとすごく思うので、自分で選択肢を消さないでほしいです。硬式を触ったこともなかった私でもプロで頑張っているというのも見せていきたいですね。 女子野球は世界では今は日本が5連覇している状態ですけど、もっと強い国が増えてきて盛り上がってきたら競技人口も増えるでしょうし、オリンピック競技になることもあり得ると思います。私自身は今後できるところまで現役で結果を残していきたいですし、軟式野球からでもプロを目指してくれる人を増やしたいです。軟式野球のレベル自体も上げていきたいので、女子の軟式野球の指導にも行きたいですね。
取材・写真=森 大樹
前編→http://king-gear.com/articles/868
中編→http://king-gear.com/articles/869
谷山莉奈(たにやま・りな)/女子プロ野球選手
埼玉アストライア投手・背番号16。1992年9月26日生まれ、埼玉県出身。
春日部女子高校ではソフトボール部に所属。卒業後は日本体育大学に進学し、女子軟式野球部でプレーした。
硬式野球未経験のまま、2014年女子プロ野球入団テストに合格。ルーキーイヤーの2015年は京都フローラ、翌2016年から埼玉アストライアに移籍した。
最多ホールド2回、最優秀防御率1回。162cm。右投右打。
谷山選手が所属する女子プロ野球・埼玉アストライアの次回ホームゲームが本日7月16日(月・祝)に開催されます! 年に1度の一大イベント、神宮球場での試合開催、ぜひこの機会に女子プロ野球の観戦に足を運んでみてはいかがでしょうか。
◯7月16日(月・祝)
AEON LakeTown Presents
埼玉アストライアvs愛知ディオーネ
場所:明治神宮野球場
時間:19:00~
詳細:https://www.jwbl.jp/astraia/news/detail/id/7989