
女王の強さ、光る才能、再起の兆し──マイアミOPを彩ったプレーたち
WTA1000「マイアミ・オープン」が3月にフロリダ州で開催され、世界トップクラスの選手たちが熱戦を繰り広げた。サバレンカは全試合ストレート勝ちで大会初優勝を果たし、圧倒的な強さを見せつけた。大坂なおみは4回戦進出で復活の兆しを感じさせ、加藤未唯は新ペアでダブルス準優勝と存在感を放った。春のマイアミで、それぞれの物語が鮮やかに描かれた。※トップ画像出典/Pixabay(トップ画像はイメージです)

女子テニスのWTA 1000シリーズ「マイアミ・オープン」が、3月中旬から下旬にかけてアメリカ・フロリダ州マイアミガーデンズで開催された。毎年この時期には、カリフォルニア州インディアンウェルズで行われる「BNPパリバ・オープン」と日程が連続しており、プロ選手たちは厳しいスケジュールの中で戦っている。
「マイアミ・オープン」は、BNPパリバ・オープンの閉幕直後となる3月17日に予選がスタートし、3月19日から本戦に突入。両大会を連続優勝することは「サンシャイン・ダブル」として特別な称号が与えられる。華やかな舞台の裏には、過密な日程と過酷な戦いがあるのだ。
世界1位の貫禄、サバレンカが全試合ストレート勝ちで初優勝
女子シングルス決勝は、世界ランキング1位のアリーナ・サバレンカと、同4位のジェシカ・ペグラによるトップ対決となった。結果は7-5、6-2のストレートでサバレンカが勝利し、同大会で初優勝を果たした。
今大会のサバレンカは初戦から全試合ストレート勝ちと圧倒的な強さを見せた。決勝でもその勢いは衰えず、第1セットの第2ゲームで早々にブレーク。声を上げながら打つ力強いショットはコースも正確で、ラリーの中で相手の逆を突いたり、空いたスペースを突いたりする場面が何度もあった。高く弾むサーブも威力十分で、リターン側の頭の高さを超えるような軌道に、思わず目を見張るシーンも。また、ハードヒット一辺倒ではなく、ネット際に柔らかく落とすドロップショットも交えて試合の流れを巧みに操った。
第2セットではペグラも意地を見せる。強烈なサーブをブロックリターンで粘り、サバレンカのグランドスマッシュにも反応してブロックショットで返球。さらにその返球を再び叩き込まれても、冷静にコースを読み、クロスへ打ち返してポイントを奪う場面もあった。サバレンカの完勝で終わった決勝だったが、随所に見応えあるラリーが繰り広げられた。
今大会の優勝により、WTA1000シリーズでは通算8勝目。これは元世界ランク1位のマリア・シャラポワに並ぶ記録であり、ツアー通算19勝目となった。圧倒的な強さで頂点に立ったサバレンカ。最多優勝記録を塗り替える瞬間も、そう遠くはないかもしれない。
加藤未唯、光った瞬発力と才能でペア初勝利からの快進撃
加藤未唯が、スペインのクリスティーナ・ブクサとのペアで女子ダブルス準優勝を果たした。今季、このペアで白星がなかった中での快進撃。初勝利を挙げるとそのまま勢いに乗り、決勝進出まで駆け上がった。決勝の相手は、2024年パリ五輪女子ダブルス銀メダルのディアナ・シュナイダーとミラ・アンドレーワ組。格上ペアに対し果敢に挑んだが、惜しくもタイトルには届かなかった。
それでも加藤のプレーは随所で光った。ダブルスならではの駆け引き「ポーチ」での動きは特に印象的だった。後衛同士のラリーが続くなか、前衛にいた加藤は一瞬の判断でポーチに出ると、バックボレーで相手の意表を突いた。驚くべきはそのフォームで、ボレーの瞬間には後ろ向きだったにもかかわらず、的確にボールをとらえていた。直後、フォア側へ飛んできたボールにも瞬時に反応。まるで全てを予測していたかのような切り返しだった。ジャンプしながらのハイボレーでも、視線は常にボールに集中しているわけではなく、空間把握能力と身体感覚だけで打ち込むようなプレーが続いた。経験によるものか、勘なのか。それが「才能」だと感じさせるプレーだった。
大坂なおみ、確かな手応え。復活を感じさせたマイアミでの4回戦進出
1月の全豪オープン以降、勝利から遠ざかっていた世界ランク61位の大坂なおみが、マイアミ・オープンで復活の兆しを見せた。4回戦敗退という結果ではあったが、“4回戦進出”には数字以上の意味がある。
4回戦の相手は、世界ランク7位のジャスミン・パオリーニ。第1セットを6-3で先取し、流れを掴んだかに思えた。第5ゲームでは、大坂がネット際のドロップショットに素早く反応し、クロスへの返球でラリーを制する見事なプレーを披露。さらに相手の逆を突くショットで流れを引き寄せた。しかし第2セットからはパオリーニの攻撃が鋭さを増す。粘り強いラリー戦に持ち込まれると、大坂のショットにもやや乱れが見え始める。最終セットでは、ポイントは取られたものの大坂がスマッシュのコースを読んでいた場面もあり、随所に高い集中力を見せたが、流れを完全に引き戻すには至らず。結果は6-3、4-6、4-6の逆転負けとなり、ベスト8進出にはならなかった。それでも、要所で見せた強打や正確なリターン、ポイント後に見せたチームへのガッツポーズには、今の大坂の前向きな姿勢が表れていた。チームと共に戦う姿は、かつての孤独な王者とは違う頼もしさがある。少しずつだが確実に戻ってきている。今大会で見えた自信と手応えが、大坂のこれからのステップアップを後押ししていくはずだ。