Img 1558

自分らしく、そして高みへ――東京で挑むmoe-Kのフリースタイル物語

ボールひとつで自分を表現するフリースタイルフットボーラー、22歳のmoe-K(櫻井萌華)。イタリア・トリノで行われたフリースタイルフットボールの世界大会に挑んだ彼女は、無観客という特異な環境の中で「自分との戦い」に集中し、新たな発見を得た。競技スキルだけでなく、語学や身体作りにも真剣に向き合いながら、東京という大都市でさらなる成長を目指す。世界に挑み、未来を切り開くmoe-Kの挑戦の軌跡とは――。※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

IconIppei Ippei | 2025/01/01

初挑戦の地、イタリア・トリノで感じた特別な空気

11月、moe-Kが訪れたのはイタリア・トリノ。フリースタイルフットボールの大会でヨーロッパを訪れるのはこれが初めてではないが、イタリアの街並みと雰囲気は彼女にとって新鮮だった。

「ピザが本当においしかったです(笑)。でも、それ以上に街全体の雰囲気が独特で、ヨーロッパの他の国とはまた違った魅力がありました」

静寂の中で挑んだ「無観客大会」

Thumb f43a566f 22e3 4e9a af50 e2130bb1cca5

画像提供/本人

今回の大会は、moe-Kにとってこれまでと一線を画する特別な挑戦だった。それは「無観客大会」という形で行われたからだ。

「人生で初めての無観客大会でした。観客がいないし、仲間の声援もない。ただ静かにジャッジとカメラマンだけが見ている空間でした」

フリースタイルフットボールでは、観客の応援や仲間のアドバイスがパフォーマンスの大きな支えとなる。しかし、今回はそのすべてが排除された環境。技を決めても歓声はなく、moe-Kは「まるで練習みたい」と感じるほどの静けさを体験した。

「普段は『頑張れ!』とか『そろそろ締めろ!』って仲間の声が背中を押してくれるんです。それがなかったため、会場の静けさが今まで経験したことのない雰囲気感での大会で新鮮でした」

女子フリースタイルフットボールの現在地

Thumb img 1581
Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

女子フリースタイルフットボールは、まだ発展途上の競技だ。その中でリードしているのはヨーロッパ勢。ポーランド、フランス、イギリスなどが中心となり、世界トップの選手たちを輩出している。今回のイタリア大会で優勝した選手も、10年以上このカルチャーに携わり、表彰台の常連として知られるベテランだった。

「彼女たちには圧倒的な慣れと実力があります。どんな状況でも柔軟に対応できる力があって、そこでまだまだ自分との差を感じます」

英語力が開く、世界への扉

Thumb img 1634

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

世界の舞台に挑む上で、競技スキルと同じくらい重要なのが語学力だ。moe-Kは、独学で英語を学びながら、世界大会でのインタビューや海外の選手との交流を積極的に行っている。

「音楽や映画を使って勉強しています。好きなドラマや映画を何度も見て、最初は字幕あり、次は字幕なしで見る。それを繰り返して少しずつ覚えていきました」

特に効果的だったのは、実際に海外のフリースタイラーたちと話すことだった。

「『あ、この単語ドラマで聞いたことがある』って繋がる瞬間があって、それが一番の勉強になりました」

フリースタイルフットボールという競技を通じ、世界の舞台で交流を深めながら、語学力を磨いてきた。その努力は、さらに大きな扉を開く原動力となっている。

東京での挑戦ー刺激と向き合う日々

Thumb img 1640 1

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

「フリースタイルフットボールで挑戦を続けたい」という思いから東京に戻ったmoe-K。再び大都市での生活をスタートさせた彼女は、日々の刺激に心を動かされながらも、自分らしいペースを大切にしている。

「東京には刺激がたくさんあって、毎日新しいことを学べる気がします。ただ、人混みが多い場所に行くと疲れてしまうので、無理せず自分のペースで挑戦を続けています」

練習漬けだった日々から一歩引き、2日に1回は意識的に休息を取るようにした結果、練習の質が上がったと語る。

明確な目標ー世界に挑む準備

Thumb img 1609

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

「ここ1~2年の間にタイトルを獲得すること。それが今の目標です」

moe-Kは短期集中型のトレーニングを取り入れ、効率を上げることに注力している。さらに、体幹トレーニングや食生活の見直しも行い、競技者としての基盤を整えるべくパーソナルトレーナーとの連携も視野に入れている。

「練習だけでなく、体のメンテナンスや栄養管理も真剣に取り組むことで、自分を最大限に高めていきたいです」

フリースタイルフットボールは「自分そのもの」

Thumb img 1520

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

フリースタイルフットボールが自分にとってどんな存在か、という問いに彼女は迷うことなく答える。

「『生きがい』そのものですね。これがあるからこその自分がいます」

過去にスランプを経験したとき、彼女を支えたのは競技を通じて出会った人々だった。

「一人では無理でした。出会った人たちがその時々で必要な力をくれて、それが今の自分につながっています」

挑戦を物語にー未来への夢

Thumb img 1537

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

moe-Kの人生は「漫画みたい」と周囲から言われることもある。

「順調だったわけではないけど、成功すればそれまでの失敗も含めて一つの物語になる。失敗があったほうが、結果的にその物語はもっと素敵なものになるんです」

彼女は競技だけでなく、フリースタイルフットボールの魅力を広める活動にも力を注ぎたいと語る。体験会やワークショップを通じて競技の楽しさを伝え、サッカー界やアパレルブランドとのコラボにも意欲を見せる。

「この競技はウェアが自由だからこそ、表現の幅も広がります。もっと多くの人にフリースタイルフットボールを知ってほしいですね」

未来に向けてー進化し続けるmoe-K

Thumb img 1423

Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

東京という大都市で、次なる挑戦に向けた準備を進めている。その道のりは決して簡単ではないが、彼女は自分の物語を力強く描き続けている。

「フリースタイルフットボールがある限り、私は挑戦し続けます」

彼女の挑戦は、スポーツや表現の枠を超え、新たなインスピレーションを届ける未来を切り開く。moe-Kが描く物語は、これからも多くの人々を魅了し続けるだろう。


moe-K

2002年2月16日生まれ、静岡県出身。14歳の時にフリースタイルフットボールと出逢い、人生が一転。現在では日本一、アジア一の称号を持ち、次は世界に挑戦している。フリースタイルフットボールの魅力をより多くの人に知ってもらうため、パフォーマンスやイベント、レッスンなどを積極的に行っている。また世界への挑戦を一緒に支えてくれる企業やスポンサーも募集中。