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The Tokyo Olympics documentary "THE WALL - CLIMB FOR GOLD" is now available! Nonaka Ikumo talks with Abe Hifumi & Murakami Mai about their thoughts on 2022

東京五輪・スポーツクライミング女子複合で銀メダルを獲得した野中生萌選手をはじめ、五輪に挑む4人のクライマーの姿を追ったドキュメンタリー映画『THE WALL – CLIMB FOR GOLD』が、1月18日よりAmazonプライムなどで配信される。五輪出場権をかけた大会の様子や、コロナ禍の影響による過酷な日々など、東京五輪に挑むトップ選手達の2年間を克明に映し出した内容に仕上がっている。 作品のリリースに先立ち、主演の野中生萌選手(スポーツクライミング・銀メダリスト)と、 阿部一二三選手(柔道男子66キロ級・金メダリスト)、村上茉愛選手(女子体操ゆか・銅メダリスト)の同世代メダリスト対談が実現。作品を観た感想や、東京五輪を終えてからの日々。そして、2022年に懸けるそれぞれの想いを語った。

Icon fopv vbvqbakaduJunichi Swan | 2022/01/18
――まずは、『THE WALL – CLIMB FOR GOLD』をご覧になられた感想を教えてください。

野中: これまで外の岩場が映画に出てきたことはありましたが、競技としてのクライミングが、映画になるのは初めてだそうです。なので、その作品に自分が出演しているのは不思議な感覚で、とてもワクワクしています。

阿部:本当に大会の裏側や、そこに挑む選手達の素直な気持ちが見られて、同じアスリートとして共感できる部分がたくさんありましたし、「(競技は違っても、)同じ想いで闘っている」ということを改めて感じさせられる作品でした。

Murakami:五輪の時は、正直自分のことで精一杯だったので、他の競技をあまり見られていなかったので、「THE WALL」という作品を通じて、スポーツクライミングのことを深く知るきっかけになりましたし、「自分と同じように、他の競技の選手達も辛い経験を乗り越えて、五輪に出場しているんだな」と感じさせられました。


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――作中では、「スポーツクライミング」の辛さも描かれています。それぞれの競技で活躍されている御三方が抱いた、競技に対する率直な印象を教えて下さい。

阿部:壁に登るのはしんどそう。自分なら絶対できない(一同笑)


Murakami:凄すぎて、言葉にすることも難しいんですけど、トレーニングの動画を見て、指だけで全身を支えていることに驚かされました。体操もそのような場面はありますが、競技の時には必ずプロテクターをつけている。素手でやっているのは考えられないですね。

野中:選手それぞれが、瞬間の極限を乗り越えて競技をしているので、絶対にそれなりのしんどさはあるんですけど、(作品として改めて見ると)凄いですよね。 

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――
『THE WALL』という作品ですが、皆さんが「壁」に直面したエピソードと、それらを乗り越えた方法を教えて下さい。

阿部:僕は、五輪出場まで苦しい場面が続いた時に、「壁」を感じましたね。 (2020年12月に行われた)日本代表内定選手決定戦で勝利して代表選手に内定するまで、本当に苦しかったです。思うように勝てない時期もありましたからね。自分自身を信じられたからこそ、結果として五輪で優勝を掴み取れたのかなと思います。

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野中:
コロナ禍の影響で、五輪までの選手選考が長引いて苦しんだ時期もありましたし、さまざまな制限があるなかで試合に出て、五輪に向けてトレーニングしていく日々は、本当にたくさんの困難がありました。私は競技としても壁に登っているのですが、五輪に向けても「本当にたくさんの壁を登ってきたんだな」という感覚がありますね。

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Murakami:腰痛の影響で日本の五輪出場権獲得が懸かった世界選手権(2019年10月・ドイツ)に出られず、大会を外から見る形になってしまいました。 

その時は、体操やそれ以外のスポーツを見ることすらも辛い状況もありましたが、一方では、自分自身を冷静に見つめ直すきっかけになった。満足に競技が出来なかった時のさまざまな発見のおかげで、辛い時期を乗り越えることが出来たかなと思っています。

 そして、日本の体操は、男子選手はこれまでも多くのメダルを獲得してきましたが、女子選手は、前回の東京五輪(1964年)からずっとメダルを獲得出来ていなかった。 どこか諦めているような周囲の風潮もあるなかで、私は食らいつくように「メダルが欲しい」と言い続けた。それがキツかったですし、自分自身にプレッシャーをかけることにもつながっていました。  

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――五輪のメダル獲得を経て、生活や環境に変化はありましたか?

阿部:緊急事態制限が明けるまでは、そこまで大きな変化もありませんでしたが、最近は街を歩いている時に気づかれるとか…。くらいじゃないですか(笑)。でも、そう言う時に、「五輪の影響力は本当に凄いんだな」と改めて感じさせられますね。

Murakami:あまり知らない親戚が増えたとかですかね。「何年前に知り合った誰々さん」みたいな方が、次々と…(苦笑)。でも、メダルを獲得したことによって、さまざまな方に応援していただけていることに気づけたのかなとも思います。

野中:環境の変化はあまりないんですけど、村上さんと同じように、知り合いや友達が急に増えるといったことはありましたね。
 

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――野中さんの練習場は、立教大学に併設されていますよね?注目を集めやすい場所だと思いますが?

野中: 立教大学の練習場は、周囲の道路から練習している様子も見えるので、五輪前から注目を集めていましたが、東京五輪でメダルを獲得してからは、「より注目されてきたのかな」と感じることはありますね!

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――東京五輪は、無観客で迎えることになりましたが、自国開催大会に向けたプレッシャーや、調整の難しさなどを感じられたことはありましたか?
 

Murakami:「コロナ禍」の世の中になってしまい、アスリートが思い通りの発言をしにくくなってしまった状況はありました。

 本来開催されるはずだった2020年から、私は、東京五輪に対して大きな期待を寄せていましたが、1年間の延期や、「開催できるかわからない」と言われている期間を経て、無観客での開催が直前に決まった。 正直、気持ちがマイナスになってしまう部分もあるなかで、(無観客開催を)気にせずにモチベーション保ち続けるのは難しかったですね。  

 不慣れな無観客の会場で、聞こえないはずの音が耳に入ってきたり、余計なこと考えてしまった場面はありました。 残念ながら、一発目から本領を発揮することはできませんでしたが、応援してくれる人がいる大切さを、改めて感じさせられる大会にもなりました。 

野中:五輪でクライミングが開催された初の大会だったので、当初は「どういう風になるんだろう」と、想像出来ない部分もありました。 東京五輪の開幕後は、日本代表チームのメダルラッシュが続きました。「競技として迎える初の五輪が、生まれ育った東京での開催」というさまざまな要素が重なった大会への重圧はありましたが、日本選手団の勢いに乗りたいという思いで頑張りました。 

阿部:直前まで、「中止になるかもしれない」という状況のなかで迎えた五輪は、しんどい部分がありましたね。さらに柔道は「金メダル獲得が絶対」という風潮がある。これまでは自分自身もそれを当たり前のように思っていましたが、実際に当事者として経験してみると、それは本当に凄いプレッシャーで…。計り知れない重圧を感じさせられました。

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――2022年の目標は何ですか?

Murakami:私は引退して指導者の道に進むことになりますが、とにかく選手に信頼されることが大切だと思っています。絶対に人を裏切るようなことはしないで、とにかく頑張っていきたい。「体操を広めていく」という目標もありますが、東京五輪の女子体操でメダルを獲得できたのは私しかいないので、この経験を下の世代に伝えて、次のメダリストを輩出できるようにしていきたい。直近ではまだまだ難しいかもしれませんが、ロス五輪(2028年)以降はきちんと結果を出していけるように頑張っていきたいです。

野中:私は、次のパリ五輪でもメダルを狙いたいですが、そのためにも、出場した大会は全部勝つつもりでやりたいですし、W杯や世界選手権といった大会で、表彰台に立ち続けていきたいと思っています。

阿部:
来年は「負けなし」が目標。五輪に出る大変さは、今回の東京五輪で身に沁みてわかったので、連覇を懸けたパリ五輪に出場できるように、きちんと結果を残していきたいです。

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昨年行われた試写会で、「2021年を漢字一文字で表すと?」というお題に答える選手たち。この日のインタビューには残念ながら参加できなかった阿部詩選手 (柔道女子52キロ級金メダリスト)の姿も見られた。

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 【文章】白鳥純一【写真】佐藤悠平