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フェンシング全日本選手権が初の屋外開催!エペ団体金メダリストの加納虹輝は貫禄を見せる

フェンシングの全日本選手権が11月6日、六本木ヒルズアリーナで開催された。国内大会では初の屋外会場を使って開催された大会では、男女全6種目の日本王者をめぐるレベルの高い戦いが繰り広げられ、フェンシング協会会長の武井壮さんも「お客さんの楽しんでいる姿が見られてとてもうれしい」と、2年ぶりの有観客開催に手応えを感じている様子だった。ここでは、昼と夜の2部にわたって開催された大会の夜の部の様子をレポートする。

Icon s  801300490 0Yuhei Sato | 2021/11/06

女子フルーレスペシャルマッチ 上野 優佳選手 14対13 菊池小巻選手

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決勝に進出した東莉央選手(明治安田生命)の負傷欠場の影響により、不戦勝で初優勝に輝いた上野優佳選手(中央大学)は、代わりに開催された菊池小巻選手(セガサミーホールディングス)とのスペシャルマッチを実施。一時はリードを許したものの、14−13で逆転勝利を収めて面目を保った。

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――試合を振り返った感想を教えてください。


Ueno:決勝戦を戦う相手選手の怪我によって試合ができない状況のなか、相手をしてくれた菊池選手には本当に感謝したい。一本勝負で勝ち切れたので、よかったなと思っています。「全日本選手権で試合をしたかった」という気持ちが強いので、素直に喜べない部分もあるが、試合に勝てたので、その点では「優勝の価値はあったのかな」と感じている。 

――東京五輪(6位入賞)を経験し、世界との距離は感じられましたか?併せて次の目標も教えてください。

Ueno:これからGPやW杯が行われる。まずは、これまでに獲得したことがないメダル獲得を目標にしていき、来年の世界選手権ではメダル争いに食い込めるようにしていきたい。

「コロナ禍」の影響で、試合が外国人選手と試合をする機会が限られているので、海外選手との距離を測ることは難しい。全日本選手権の優勝は自分の自信になりました。これからは、国内だけではなく、世界でも戦えるように実力やメンタルを磨いていかないといけないと思います。 

普段から練習をしている相手に対して、自分の持ち味でもあるアタックで点数を取ることができたのは自信になったが、攻め込まれて点数を取られた守備面では反省点もあります。普段から練習で決まっている技を信じて撃つことができたことが、勝利につながったと思っています。

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  急遽、六本木ヒルズアリーナでの試合に臨むこととなった菊池小巻選手。一時はリードを奪うなど、上野選手を相手に善戦。

女子サーブル決勝 髙嶋理紗選手 15対14 江村美咲選手


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女子サーブルでは、東京五輪団体で5位入賞した江村美咲選手(立飛ホールディングス)と、髙嶋理紗(オリエンタル酵母工業)が対戦。一時は5点差を逆転された高嶋選手だったが、14−14からポイントを奪って初優勝。表彰台では涙を見せながら、勝利を噛み締めた。

ーー試合を振り返ってみていかがでしょうか?

 江村:情けない試合になってしまったというのが率直な気持ちです。今回は、これまでに経験した大舞台のなかでも、一番残念な試合でした。今まで、自分は「緊張には強いタイプ」と思っていたのですが、初めて自分で自分に負けたなと感じさせられた。   
  
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――試合終わった後、悔しそうな表情を滲ませていましたが? 


 江村:試合に関しては、もっと冷静に臨めたらよかったですが、試合前にも、既に「気持ちが上がっていた部分」があったと思います。東京五輪の前は、エネルギーに溢れていて、「どんどんエネルギーが湧いてきて、何かしないと気が済まない」くらいの状況でしたが、五輪を終えてから悩むことも多くて…。エネルギーが続かなくなってきた感覚がある。

「頑張りすぎ」ではないけれど、「やらないといけない」と、無理して練習をした結果、疲れが溜まり、練習の質も落ちる。今後は、自分の心身の状況を把握できるようにして、フェンシングの質を戻せるようにしたい。 

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――試合での「緊張」はありましたか?


 江村:普段は緊張することもあるが、それを良いプレーに活かせている。今回は、結果的に飲まれてしまったと思う。今振り返ると、もう少し心に余裕があれば良かった。自分の自信のなさが、一歩下がる勇気を引き出せず、敗戦につながってしまったと思います。

 ――いわゆる「燃え尽き症候群」を経験されているということなのでしょうか?

 江村:五輪を終えた後も、しばらくは「もっと頑張ればメダルが取れる」という気持ち強かったので、「燃え尽きた」という感覚はありませんでした。大会を終えてしばらく経った今、結果的に追い込みすぎていたのかなと思う。今後は、自分の状況を把握しながら、調整していきたい。    

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――初優勝を達成されました。改めて決勝戦を振り返ってみていかがですか?


 高嶋:江村選手も私も、お互いが「どうやって勝つか」を考えながら、試合に臨んだと思います。決勝では、これまで自分がやってきた動きが出来た。思い通りの攻撃でポイントが取れたのは素直に嬉しいです。      

前半は、前に出て引っ張ることが多く、後半も続けて「チャレンジをしよう」と思ったが、徐々に江村選手に対応され、取られるポイントも増えてきた。相手を見てから、切り返しつつ前に出る判断をしたことが勝利につながったと思います。

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――試合の最後は、「14ー14」の1本勝負になりましたが?
 

 高嶋:最後の一本も、当初は切り返すことを考えていた。だが、(江村選手が)大きく入ってきたので、想定していた状況とは異なっていた。だが、瞬間的に判断して、対応出来たことが勝利につながったと思います。

 苦手意識はありましたが、今までのことは全部忘れて試合に臨みました。これまでは、序盤からリードされて追いつけないまま終わるパターンが多かったですが、今回は、「1本目から自分が取りに行く」という強い気持ちで挑めました。いい試合展開だったと思っています。
 
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――同期の江村さんは、東京五輪にも出場されました。日本代表選手に勝てたというのは、高嶋選手にとっても大きな自信になるのでは? 


 高嶋:前回の全日本選手権を始め、江村選手にはこれまでも負け続けてきましたし、世界でも活躍し、多くの経験を積んでいる選手でもあります。私自身も、東京五輪にギリギリで出られなかった悔しさはありました。今回、全日本選手権で優勝することが出来て、「サーブルには、私もいるんだ」ということを、ファンの方にも見せられたと思う。

強い美咲に勝って優勝出来たのはいい経験になりましたし、自分にとっても大きかった。 五輪直後の大会で、日本代表選手やメダリストが注目を集める中、出場を逃した私が勝てたのは大きいと思いますし、パリ五輪まで3年しかないなかで、出場権とメダル獲得を目指して頑張っていきたい。    

男子エペ決勝 加納虹輝選手15対4 村上仁紀選手

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東京五輪で金メダルを獲得した男子エペ団体メンバーの加納虹輝選手(日本航空)と、YouTuberとしても活動している村上仁紀選手(あおぞら病院)が決勝で対戦した。

試合は序盤から金メダリストの力を見せつけた加納選手が、隙のない剣裁きを見せ、15対
4で勝利。自身初のタイトルを獲得した。

――試合を振り返った感想をお願い致します。

Murakami:本当に五輪の金メダリストと決勝で戦えるというのは貴重な経験でした。大敗しましたが、フェンシングの楽しさを感じた。負けたけど清々しい気持ちです。

ーー加納選手と対戦された印象はいかがでしたか? 

Murakami:普段練習しているので、ある程度は“手の内”はわかるのですが、僕に対して「隙を与えない手堅いフェンシング」をしている印象を受けました。

駆け引きを続け、相手が無理してきたところを狙うのが僕の持ち味ですが、加納選手はその隙を出さず、対照的に僕が無理してしまうパターンになってしまった。強い選手だと感じさせられましたね。  

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――直前までSNSの更新を続けていましたが?
 どのような想いでインターネット上での活動をされているのでしょうか?

Murakami:フェンシングは、徐々に取り上げてもらえるようになり、多くの人の目に触れるスポーツになったが、まだまだ経験できる環境は限られており、楽しく教えられるところは少ない。
フェンシングのことを知ってもらい、楽しさを感じてもらえたら嬉しいですし、少しでもフェンシングの普及に繋げられたら良いと思っている。ゆくゆくは小学校に出向き、フェンシングの楽しさを伝えていきたいです。

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――「さときんぐ」としての活動が、競技に及ぼす好影響はありますか?

 Murakami:直接の効果はないけど、SNSを通じて、少しでも認知広がればいいなと思っている。直接的に試合に結びつくわけではないですけど、もし、SNSをきっかけに僕のことを知ってくれる人がいたら、効果はあったのかなと思います。 

王冠を被って「さときんぐ」として活動していただけの選手が、決勝行くとは誰も思っていなかったと思う。良い形で期待を裏切れた。「ふざけている時だけではない」と知ってもらえたのなら、SNSを続けた収穫はあったのかなと思います。まだ所属先と話してみないといけないが、今後の去就については追々決断していきたいと思います。

――好きなキャラクターは「スライム」ということですが? 

Murakami:僕自身がフルーレからエペに転向した。スライムは何にでもなれる。色々変化できるので似ている部分もあるのかな。(苦笑) 自分一人でキングスライムになりたいですね。

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――五輪後初の有観客での試合を初優勝で飾りました。
試合を振り返っていかがでしょう?

Ghana:全日本選手権の決勝に進むのも、優勝するも初めてなので、今はホッとしていますし、素直に嬉しいです。自分自信のプレッシャーにも勝つことができ、金メダリストとしての意地を見せられたと思う。

――ご多忙だったと思いますが、試合までのトレーニングの工夫もあったのでしょうか?

Ghana:8〜9月は、テレビやラジオの出演が忙しく、練習頻度が落ちてしまうこともあった。ですが、9月後半以降はきちんと練習に取り組み、10月後半には調子が上がってきていたので、「練習不足」を感じることはなかったと思います。 

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――「金メダリスト」としてのプレッシャーや、緊張を感じる場面はありましたか?


Ghana: 緊張はなかったですが、お客さんが入っている試合で、「金メダリストが負けるのはどうなのか?」と感じていた。そのような意味でのプレッシャーはありました。 全日本選手権は、どうしても取りたかったタイトルなので、決勝では絶対に勝ちたいと思ってトレーニングしてきました。

 ――対戦相手の「さときんぐ」こと村上選手が、「加納選手を丸裸にする動画」をアップされていたようですが?

Ghana:僕も動画を見ましたからね。「どう対策しようとしているのか」がわかるので、公開してしまったら意味ないですよね(苦笑)。動画が出る前には、僕のところにも連絡がありました。 
――「エペジーーン」が流行語にノミネートされました。率直な想いを教えてください。

Ghana:
正直、本当にノミネートされるとは思っていなかったので、素直にビックリしました。

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ーー屋外のナイトゲームを経験されてみて、普段との違いは感じられましたか?

Ghana:夜は綺麗でよかったと思うが、寒さがないぶん昼の良さもある。最初は、騒音や壁の影響があると思ったが、あまり気にならず試合に集中できました。ドラクエのコラボも個人的に好き。「格好いい」と思いましたし、楽しかったです。

 ――「ロトの剣」を掲げた感想はいかがでしょう? 

Ghana:まさか掲げることになるとは思わなかったので、一生の思い出になるかもしれません。「王者強さを見せつける」という気合が、点数の差がつく試合展開に繋がったと思います。

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決勝は、スマートフォンゲームの「ドラゴンクエストウォーク」がゲームスポンサーを務めた。スクウェア・エニックス社から提供された「ロトの剣」を掲げる加納選手