【選手ヒストリー】逆境を乗り越えた長打王が切り拓いたプロ野球の世界ー井上晴哉(千葉ロッテマリーンズ)活躍の軌跡/2024年プロ野球引退選手
崇徳高校、中央大、日本生命を経て千葉ロッテマリーンズにドラフト5位で入団した井上晴哉は4番としてチームを支え、持ち前の長打力とひょうきんな性格から「アジャ」の愛称で親しまれた。※イラスト/これ松えむ
打撃と長打力で注目されるもプロ入りを逃した理由
広島県広島市で生まれた井上晴哉は、兄の影響もあり3歳で野球を始めると、小学校の時には軟式野球チームの温品ヤングウルフクラブに在籍。広島市立福木中学校に進学後は広島スターズで実力を高めていった。
崇徳高等学校では1年秋から4番右翼手のポジションを掴むと、2年生(2005年)夏の県予選では野村祐輔(元広島東洋カープ)らを擁する広陵高校を下して決勝に勝ち進み、井上も打率6割のハイアベレージをマークして存在感を示した。井上はこの頃から高校通算31本塁打の長打力で注目を集めることとなったが、3年生(2006年)春は県8強、3年夏は2回戦敗退に終わり、甲子園出場はならず、卒業後は中央大学に進学することとなった。
中央大学では、当時は2部に在籍していたチーム状況はありながらも、入学間もない1年(2008年)春のリーグ戦で早くも4番を任されると、1年秋のリーグ戦では2部リーグ優勝と1部昇格に貢献。2部でも持ち前の長打力を発揮し、2009年秋のリーグ戦では打率.359をマークし、首位打者とベストナインを獲得。2年春から3年(2010年)春までは3季連続で打率4割を超える活躍で存在感を示し、2010年には大学日本代表にも選ばれた。その後3年の秋以降に大幅に打撃成績を落とした影響で、NPBの指名はならなかった。
中大卒業後は日本生命に進んだ井上は、1年目は主に5番を任されると、チームの都市対抗の第3代表獲得に貢献したが、準々決勝までチームが勝ち進む中で、3試合でわずか1安打と低調な成績に終わった。だが、2012年秋の日本選手権では、3試合に出場して打率.545(11打数6安打)、4打点を記録。翌2013年には井上の活躍もあり都市対抗野球出場を成し遂げたが、本大会では三菱重工横浜に敗れ、予選で大会を去った。
月間MVP&20本塁打達成でロッテ打線を牽引
2013年のドラフト5位で千葉ロッテマリーンズに入団した井上は、ルーキーイヤーの2014年から110kgの体重などから「最重量ルーキー」として注目を集めると、オープン戦で15試合に出場して打率.435、2本塁打、7打点の活躍。チーム待望の長距離砲として注目を集めることとなり、新人ながらも開幕戦(3月28日、対福岡ソフトバンク)に4番として起用されることとなった。チームでは64年ぶりに登場したルーキーの4番打者に多くの視線が注がれたが、レギュラーシーズンでは成績が低迷。36試合に出場して打率.211、2本塁打、7打点の成績に終わった。だが、フレッシュオールスターでは1試合2本塁打を含む3安打3打点の活躍でMVPを獲得している。
ほぼ二軍で過ごした2015年を経て、2016年シーズンは開幕からレギュラーポジションを掴むと、開幕戦では大谷翔平から2塁打を放つも、4月末に登録を抹消され、以後は二軍で過ごすこととなるも、イースタン・リーグで打率.342を記録。規定打席に45足りない状況ながらも、例外規定の適用により首位打者を獲得した。前年までと同様に開幕を一軍で迎えたものの、シーズン中盤に二軍落ちを経験した2017年には、10月5日の楽天戦でプロ入り初のサヨナラ安打を放った。
イラスト/これ松えむ
プロ入り5年目の2018年は、開幕を4番で迎えると、2戦目の東北楽天戦では2打席連続本塁打の活躍を見せた。5月には打率.208、2本塁打、12打点と低調に終わり、交流戦ではベンチを温める日もあったが、交流戦を終えた6月25日には、西武の今井達也からプロ入り初の満塁本塁打を放つと、翌日も本塁打を放ち、復調の兆しを覗かせた。好調時の打撃を取り戻して勢いに乗る井上は、7月には月間打率.400、7本塁打、23打点を挙げる活躍を見せて、自身初の月間MVPを獲得。8月には再び低空飛行を見せるも、9月8日の西武戦で本塁打を放ち、シーズン20本塁打に到達した。2018年は自己最多の133試合に出場。打率.292、24本塁打、99打点で、自己最高の成績を残してシーズンを終えた。
苦悩の中で光ったパワーヒッターの実力
続く2019年も、開幕を4番で迎えながらも、4月に二軍降格を味わったが、チームとしては初芝清以来20年ぶりとなる2年連続20本塁打の活躍。打率.252、65打点は前年の成績を下回ったが、持ち前の長打力でチームを支えた。コロナ禍の影響により6月に開幕を迎えた2020年はソフトバンクとの開幕戦(6月19日)に7番で出場。3戦目の21日には満塁本塁打を放つと、7月28日の楽天戦(ZOZOマリン)では自身初の1試合3本塁打を放ち、気を吐いた。シーズン終盤には不調に陥り苦しい時期を過ごしたが、9月13日の楽天戦(ZOZOマリン)では自身3度目となるサヨナラ安打を記録。この一打で「月間サヨナラ賞」「スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞」を獲得した。なお2020年は113試合に出場し、打率.245、15本塁打、67打点の成績でシーズンを終えている。
2021年6月2日の中日戦で見せたダイビングキャッチの影響で、右手首を負傷。以後は二軍で過ごすこととなり、オフには右手関節三角繊維軟骨の縫合手術を受けることに。2022年7月に一軍に戦線復帰を果たすと、一塁手として60試合に出場し、打率.246、7本塁打、34打点の成績を残した。2023年はソフトバンクとの開幕戦に4番として出場したものの、一軍定着には至らず、32試合の出場にとどまり、打率.179、1本塁打、8打点に終わった。2024年は一軍昇格を果たせず、この年限りで引退を表明。プロレスラーのアジャコングを由来とする「アジャ」の愛称で親しまれた長距離砲は、11年間の現役生活に幕を下ろした。
profile
name:井上晴哉(いのうえせいや)
Birthplace:広島県
date of birth:1989年7月3日
Height/Weight:180cm/115kg
Pitching/batting:右投げ右打ち
position:内野手
ドラフト:2013年ドラフト5位
通算成績
実働11年:601試合 打率.250 1944打数 486安打 76本塁打 313打点 2盗塁
月間MVP(2018年7月度)
スカパー!サヨナラ賞(2020年10月、11月度)
スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞(2020年)
*The information in this article is current as of the time of publication (as of November 2024).