北口榛花が金メダル!新時代を切り開いたやり投げ~プレイバックパリ五輪2024~
パリオリンピックで行われたやり投げでは、女子の北口榛花選手が金メダルを獲得。北口選手は2度目のオリンピックにして悲願のメダル達成となった。また陸上日本女子のフィールド種目においても、初めて金メダルを獲得した瞬間だった。※トップ画像出典/Corbis via Getty Images
パリ五輪“やり投げ”をおさらい
やり投げは陸上競技の一種で、幅4m、長さ30m以上の助走路で助走をつけて、やりを遠くに投げる能力を競う種目である。やりの重さは男子が805〜825g、女子が605〜625gで、長さは男子が2.6~2.7m、女子が2.2~2.3mと定められている。選手1人につき最大6回試技を行い、最も遠くに投げた記録で順位が決まる。オリンピックでは、最初の3回の試技で上位に入った選手だけが4回目以降の投てきを行うことができる。投てきは半径8mの弧のラインの後方から行われ、投げたやりが29度の扇形の内側に落ちなければ記録にはならない。やりの先端が地面に着地し、その最も弧に近い地点から測定を行うのが基本的なルールだ。やりが線上や扇形外に落下した場合は無効で、助走路を越えると失格となる。
オリンピックの試合は予選と決勝にわけて試合が進行され、予選通過の標準記録に達した選手全員が決勝に進むことができる。標準記録に達した選手が12名未満の場合は、上位12名が決勝進出。決勝では、上位8番目に入った選手はさらに3回の試技を行える。合計6回の試技のなかでマークした最高記録によって順位が決められる。
プレイバックパリ五輪2024ホットな瞬間
やり投げ種目で最も盛り上がった瞬間といえば、男子の部に出場したパキスタンのアルシャド・ナディーム選手がオリンピック新記録となる92.97mの投てきを見せて見事に金メダルを獲得した場面だろう。自国パキスタンにとっては1984年ロサンゼルスオリンピック以来の金メダルであり、個人競技としては初の快挙となった。決勝の1投目を失敗で終えたナディーム選手は、2投目で早くもオリンピックレコードとなる92.97mを記録。その後は、90m台すら出ないまま競技が進み、最後の6投目を迎えた。ここでナディーム選手は、2投目に続く91.79mを叩き出し、本日2度目の90m台を記録する。最後までほかの選手に記録を抜かれることなく競技は終了し、2位に3点以上の差をつけて金メダル獲得を決めた。90m台を記録したのもナディーム選手ただ一人であり、文句のつけようのない優勝劇だった。
プレイバックパリ五輪2024【日本選手メダル獲得の瞬間】
日本勢の活躍で忘れてはならないのが、女子やり投げで初の金メダルに輝いた北口榛花選手の存在だ。予選の1投目で予選通過ラインを超え、余裕を持って決勝に臨んだ北口選手は、全12名の中4番目に登場。1投目でシーズンベストとなる65m80cmをマークし、1投目終了時点で首位に立った。その後は、3投目で南アフリカのJ.A.ファン ダイク選手が63.93点を叩き出すも、1投目の記録を超える選手は現れなかった。トップを維持したまま迎えた5投目の前には、北口選手が会場の観客に拍手を求める場面も。結局、6回目の投てきを待たずに金メダル獲得が決定し、2回目のオリンピックで女王の座を射止めた。地元の北海道旭川市ではパブリック・ビューイングが行われ、市民たちがその瞬間を共に祝った場面も印象的だった。
パリ五輪2024キングギア編集部が注目した選手
群雄割拠といえるほどに実力が拮抗したやり投げ女子選手のなかで、やはり前大会の銀メダリストであるマリア・アンドレイチク選手、銅メダリストのケルシーリー・バーバー選手のほか、前々大会女王のサラ・コラク選手など、過去のメダリストたちの登場には注目が集まった。
前大会の銀メダルを、母国の子どもの手術費用を募るために競売にかけたことでも話題になったアンドレイチク選手は予選1位、3大会連続出場のコラク選手は予選2位と下馬評通りの強さを見せたなか、バーバー選手は予選通過ラインの62mを超えることができずに脱落。決勝ではアンドレイチク選手は8位、コラク選手は4位と、ともに6投目まで残り観客を沸かせた。なお「やり投げ王国」として知られ、北口選手も活動の拠点としているチェコからは、ニコラ・オグロドニコバ選手が銅メダルの成績を残した。
【北口榛花】パリ五輪の戦績
予選:7位通過(記録:62.58m)
決勝:1位(記録:65.80m)
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