キャスターとして知ったMLBの魅力 期待を寄せる未来のスーパースター「本当に魅力的な若手」(中編)
「野球に詳しすぎるフリーアナ」として各メディアで活躍中の山本萩子(しゅうこ)さん。山本さんは、週刊プレイボーイで「山本萩子の6-4-3を待ちわびて」を連載し、テレビや配信、YouTube番組などに積極的に出演するなど、そのマニアックすぎる視点や知識量を活かして活動の場を広げている。中編では、ヤクルトファンとして育った山本さんが務めたNHK・BS『ワースポ×MLB』キャスターへの道と、日々の仕事を通して知ったMLBの魅力やおすすめ選手について聞いた。※トップ画像撮影/長田慶
MLBキャスター就任で1日3試合を視聴
ーー山本さんが野球好きからキャスターになっていく経緯をお聞きしたいです。きっかけはありましたか?
「野球が好きだから野球に携わりたい!」とか全然そんなことはなくて、どちらかというと、記者とかスポーツ新聞社に勤めたいなとなんとなく考えたことはあったんです。
テレビとか表に出るキャスターとして仕事をすることは一切考えてなくて、大学2年生の時に偶然バスに乗っているときに今の事務所の方に声をかけていただいて始めたんです。野球と直接的に関わっていたわけではなくて、とくにその時はずっと続けていた馬術を辞めたタイミングでもあったし、何か新しいことがしてみたいと漠然と考えていた時期だったので、せっかくだからチャレンジしたいと思って始めてました。
いろんな仕事を経験していくなかで『ワースポ×MLB』という野球番組のオーディションの声がけをいただいて、それを受けて受かって。それも偶然とタイミングと出会いが重なったと思っていて、キャスターとして野球に関わるとは正直思っていなかったです。
Photography/Kei Nagata
ーーいろんなタイミングが重なってそこにたどり着いたという感じですか?
自分の長所を挙げるとすれば本当に運がいいことだなと思っていて、そういう巡り合わせが良かったと思っています。
ーーキャスターで入られたMLBについてはそれまで観ていましたか?
その時の有名どころというか、中継でやっているものをチェックするくらいだったんですけど、メジャーリーグというものに本格的に携わってのめり込むきっかけになったのは完全に番組です。それ以降、毎日1日3試合スコアをつけながら観るという生活を続けていてどんどん観るにつれてメジャーリーグにはまっていったという感じです。
ーー実際に『ワースポ×MLB』に入られて観ていく中で面白い点や魅力的だと思うことはありましたか?
もちろん日本のプロ野球もプレーに本気だし、本気で優勝を目指すという意味では変わらないんですが、メジャーリーグって、ちょっと刹那的というか。
チームの入れ替わりが激しくて、このチームで戦うのはこの年だけだと、このチームで今年本気で優勝を目指していこうと携わってる全員が考えていることとか。メジャーリーグって球場のことを「ボールパーク」と言うんですが、お客さんが遊びに行く感覚で球場を訪れて、純粋に心から楽しんでという空間をメジャーリーグとしても作ろうとしているなとすごく思います。
楽しませることを怠らないというところは日々のちょっとした演出とかで感じます。イチローさんがまだマリナーズにいたころ、ファウルボールを追っていた時にファンの方とちょっと接触して、そのファンの人が大のイチローさんファンで、すごくテンションが上がって嬉しそうだったんです。
その12年後とかにイチローさんは引退されていて、その女性を始球式に呼ぶというサプライズがあって。そういう演出も粋で、ホームランボールを大人がキャッチして近くの子どもに渡したら大人と子ども両方次の日ベンチに呼んじゃおうとか、野球に携わる全てを楽しみに来ている人たちを全力で楽しませにかかっているところがすごく素敵だなと思います。
Photography/Kei Nagata
名門オリオールズで育つ若手の有望株
ーー山本さんは1日3試合を観るみたいなスケジュールで推しチームや選手は見つかりましたか?
番組をやっていた時はチームとしてなかなか一点集中というわけにはいかず全チーム平等に肩入れせずというのを心がけていたんですが、とはいえ好きな選手、惹かれる選手もいて。今は1つのチームを追ってもいいかなと思い、最近ではボルティモア・オリオールズをめちゃくちゃ追っていて、メジャーの試合はもちろんなんですが、マイナーの試合も有料コンテンツに課金して観ています。
オリオールズは今は強いですがずっと低迷していた時期があって、どんどん若手が育つような環境なわけです。ドラフトの上位指名権があって、いい選手を積極的に獲っていくので、チームの目先の勝利にそこまでこだわらずに選手の育成ができる。
そのオリオールズがそういう時代を経て今はすごく強くなっているので、そういう時代が長かったからこそいっぱい若手が育っているわけです。本当に魅力的な若手がたくさんいて、「この選手が何年後かにこうなっているんだな!」と想像しながら観ています。
Photography/Kei Nagata
ーーマイナーでこの選手が上がってきたら面白いと思う選手はいますか?
ヘストン・カースタッドという2020年のドラフト1順目の外野の選手なんですけど、足をあげるフォームで真似したくなるフォームなんです。プロスペクト(若手の有望株)の選手で、スイングが早かったり身体能力があったり、送球が良かったりという選手なんですが、この選手はオリオールズと契約した直後に心筋炎という病気の診断を受けて、21年のシーズンはほぼ全休だったんですよね。
22年は怪我もあって出遅れたりもあるなかでマイナーでしっかり結果を残して23年のスプリングトレーニングで1軍に参加して。たくさん怪我や病気など苦労もしてなかなか大変ななか去年から少しずつ(メジャーの)試合にも出ていて、華があります。
オールスターのフューチャーズゲーム(マイナーの有望株によるエキシビション)に去年出ていて私は去年オールスターをシアトルに取材に行っていて、「あの選手すごい良いよね」と映像を観ながら喋っていたのがこのカースタッド選手だったんです。
ーーカースタッド選手は現在活躍している選手で近いプレーヤーはいますか?
右投げ左打ちの外野手で、守備範囲も広くて結構足も速い。誰でしょう? パンチ力もあってスピードもある感じなので、いわゆる5ツールプレーヤーで、全てを兼ね備えている感じの選手なので、(エンゼルスのマイク・)トラウト選手だったり、(オリオールズの)ガーナー・ヘンダーソン選手もそうかもしれない。
あとは(ブレーブスのロナルド・)アクーニャJr.選手とか、(パドレスのフェルナンド)・タティスJr.選手とかで、タティスJr.は割と近いかもしれないですね。めちゃくちゃ期待してますし、バッティングセンターで真似したくなるフォームなので観ていただきたいです。
Source: Getty Images
後編につづく。
山本萩子
1996年10月2日生まれ。神奈川県出身のフリーアナウンサー。日本女子大学人間社会学部心理学科卒業後、日本女子大学家政学部食物学科栄養学部を卒業。大学在学中にスカウトされセント・フォースに所属。2019年にNHK BS ワースポ×MLBのキャスターに就任し、5年間勤める。現在もテレビやラジオで野球番組などに多数出演している他、週刊プレイボーイで連載コラム「山本萩子の6-4-3を待ちわびて」を担当。趣味は野球観戦で、特技は乗馬。日本馬術連盟認定騎乗者資格B級。
Hair&make:Anri Toyomori (PUENTE.Inc)
Photo:Kei Osada