Fighter Mikuru Asakura's fashion revolution! Matan Avenir's challenge and evolution [Part 2]
格闘家兼YouTuberの朝倉未来が立ち上げたファッションブランド、マタンアヴニール。「動けるお洒落」をコンセプトに、アスリートならではの動きやすさを重視しつつ、こだわりとトレンドを取り入れたスタイリッシュなデザインが特徴だ。ブランドのさらなる飛躍を狙い、クリエイティブ・ディレクターに岩谷俊和が就任。スポーツブランド「Champion」とのコラボレーションが大ヒットを記録し、“ファッションとしてのスポーツ”をいち早く提案してきた人物だ。 今回は、マタンアヴニールの運営責任者であるたくま氏と、岩谷氏へのインタビュー後編をお届けする。彼らが描くマタンアヴニールの未来像とは何か。その進化へのビジョンを探る。※メイン画像:撮影/軍記ひろし
柔軟さと本物志向!朝倉未来の人気に頼らないブランドへの挑戦
――岩谷さんから見た朝倉未来さんは、実際にお仕事を一緒にされてどのような印象を持ちましたか?
岩谷:繊細な方ですが、細かいところにも気づく力があり、その本質を見極める力は素晴らしいと思います。
――アイディアの打ち合わせのミーティングなどは行いますか?
岩谷:基本的に「餅は餅屋」という感じで、一度任せると決めたら完全に任せるスタイルです。これが逆にとてもやりやすいんです。もともとアパレルの会社ではないので、その点が新鮮で仕事がしやすい。アパレル業界では、変えたいと言いながらも従来のやり方を変えない会社が多いのですが、朝倉さんのアプローチは非常に柔軟で、そこがとても助かっています。
撮影/軍記ひろし
――たくまさんから見て、岩谷さんに特に期待したい部分はありましたか?
たくま:ありましたね。マタンアヴニールで求めるものは一つだけでした。朝倉未来は格闘家でありインフルエンサーでもあり、彼の名前が先行してしまうことが多いんです。多くのインフルエンサーや格闘家が自分のブランドを出していますが、どうしてもファングッズのように見られがちです。僕らはアパレルブランドとして本物にしたかった。
そのためには岩谷さんのような専門的な知識や経験が必要で、アパレル業界でも「本物だ」と認められるブランドにしたかったんです。朝倉未来の人気には限界があるかもしれませんが、その時にブランドとして確立されていれば、長く続くと思います。
――今回の発表について、岩谷さんにはどんな反応が寄せられましたか?
岩谷:多くの人から「ピッタリだね」と言われることが多かったですね。いいタイミングでの出会いだったと感じています。
撮影/軍記ひろし
――たくまさんの中で今回のラインナップの中で特に想像を超えたアイテムはありましたか?
岩谷:今回はプレコレクションなので、小規模なコレクションです。急に大きく変えたくはなかったので、今までのマタンアヴニールの要素を一度クリーンにし、無駄を削ぎ落とした形にしました。
たくま:そうですね。今までの「マタンらしさ」を整理し、整えたコレクションにしています。
画像提供 / マタンアヴニール
――“動けるおしゃれ”というブランドコンセプトを整理したということですね。
岩谷:そうですね。次からはもっとファッション性を取り入れていくつもりですが、今回はその序章としてクリーンな状態にしました。テストとして2つの流れを取り入れています。
撮影/軍記ひろし
一つは、2000年代半ば頃に僕が提案していたスポーツウェアを装飾的にするスタイル。その時代の要素を今っぽく取り入れて、ちょっとギラッとしたテイストをさらっと表現しています。もう一つは、レトロスポーツの流れ。昔っぽいレトロスポーツの要素と2000年代のスタイル、この2つを軸にして全体をまとめました。
従来のアパレルが進化!インフルエンサーとのハイブリッド戦略で新時代へ
画像提供 / マタンアヴニール
――実際に着てみると、そのよさがさらにわかります。特に生地の伸び感がとても気持ちいいですね。
岩谷:比較的しっかりとした素材を使うようにしています。ナイロンの7倍の強度がある「CORDURA®(コーデュラ)」繊維と綿を混紡した素材で、 肉厚で強度の高い素材ながら、綿のしなやかなタッチが特徴です。
これまでいろんなブランドで活動してきましたが、黒を軸としたブランドというのは初めての経験です。これまでは色や柄を得意としてきたので、黒だけで様々な表現を行うのは新鮮であり、同時に制約を感じる部分もある。しかし、逆にその制約があることで、より売りやすいデザインを生み出すことができる。制約がないと、どうしてもデザインが過剰になってしまいがちで、結果的に購入しづらいアイテムが多くなってしまいます。
――言える範囲で、どんなチャレンジをしていきたいと考えていますか?
岩谷:今までのベースに新しい要素を加えることで、より機能性やファッション性が高まるようにしたいです。今までのアイテムにプラスαを加えることでより今らしくなる。メンズ提案が基本ですが、女性が着てもいいように、あえて女性用としての提案はしないつもりです。
――普段の制作過程で、どのくらいの頻度でミーティングを行い、どのくらいディスカッションを重ねて商品を作り上げていますか?
岩谷:頻度については決まっていませんが、1つの商品を作るために何度かの打ち合わせが必要です。作るものの種類によっても異なりますが、週に数回は打ち合わせをしています。
たくま:対面でのやり取りもありますし、LINEでのやり取りもしています。LINEは日常的な確認事項が多いですね。
撮影/軍記ひろし
――ミーティングの中で、二人のやり取りが他と違って面白いと感じることはありますか?
たくま:役割分担がしっかりできていると思います。岩谷さんがどんなことをやりたいかを聞いて、僕がそこに予算を当てる形です。おそらく、岩谷さんがこれまでやってきたやり方とは全然違うと思いますよ。従来のアパレル業界では、手に取ってもらって試着してもらうのが一般的ですが、僕たちはネットでのみ販売しているので、試着もできない状況。まずは商品をYouTubeなどで見せて、家に届けるというやり方なんです。
そのため、打ち合わせの中で、お互いに従来のアパレルのやり方と、インフルエンサーや拡散力をミックスしていくのがとても楽しいです。ハイブリッド型のアプローチを目指しています。
「朝倉未来のブランド」から「本物のアパレルブランド」へ! 進化するマタンアヴニール
画像提供 / マタンアヴニール
――店舗販売ということでは、ムラサキスポーツ限定アイテムなどの展開もしていますね。
たくま:僕たちはどちらかというと正規のスポーツ、オリンピックで行われるようなスポーツにはあまり注力していませんでした。むしろ、ストリート系のスポーツ、ダンスやスケボー、バスケットボールの3on3など、ストリート寄りの活動に関心があります。
ムラサキスポーツさんはアパレルブランドというよりもセレクトショップのようなイメージがあります。そのため、多くの学びがあり、たまたま関わる機会を得たことで、現在取り組みを進めています。
撮影/軍記ひろし
――最後になりますが、今後のマタンアヴニールを通じての目標や意気込み、また注目してほしいポイントなどがあれば教えてください。
岩谷:本当に10月、11月から発売する次のメインコレクションには特に注目していただきたい。今回のコレクションはラインナップも広がり、新たな試みに挑戦しています。
例えば、動きやすいデニムなど、日本の代表的なデニムブランドと形から作るコラボレーションや、ワークウェアブランドとのコラボレーションなども予定。素材やデザインにおいてこれまでにないアイディアを取り入れたアイテムが多く含まれています。これらの挑戦がみなさんに伝わり、より多くの人にマタンアヴニールの魅力を感じてもらえれば嬉しいですね。
撮影/軍記ひろし
たくま:今までも僕たちのブランドには優れたデザイナーが参加してくれていましたが、今回、岩谷さんというプロフェッショナルが加わったことで、さらにブランドの魅力が深まったと思います。岩谷さんのクリエイティブなアイディアや経験を存分に活かしたコレクションを、ぜひ楽しんでください。
現在、メインコレクションを作りながら、新しい香水やアンダーウェアの開発も進めています。こうした身の回りのアイテムを増やしていきたい。街で僕たちのアイテムを着ているときに、「これは朝倉未来のブランド」と認識されるだけでなく、「これは本当にカッコイイブランド」だと感じてもらえるような存在になりたいです。