上田絢加、スキーモへの情熱:夢を追い続けた私のスポーツ人生 VOL3
自分の信じた夢を追い続ける。それは、例え幾つになっても、どんな逆境が待ち受けたとしても、そこに挑むことは人生の醍醐味かもしれない。今回、紹介する夢追い人とは、2026年ミラノ冬季オリンピックで新種目となる「スキーモ」に全力で挑んでいる上田絢加さんだ。スキー板を履いて歩き、板を担いで走り、そして滑り降りるという過酷なスポーツに魅了された彼女は、大企業に就職していた25歳の時にスキーモと出会った。高校までの陸上経験を活かし、瞬く間に頭角を現し、2年後には日本選手権で準優勝を果たした。 昨年、上田さんはスキーモに専念するため、思い切って会社を辞め、群馬に移住するという大胆な決断をした。現在、過去、そして未来にわたる上田さんの情熱と挑戦の物語を、余すことなく語ってもらった。
出会いが私の原動力!人生の転機を与えてくれる人々
撮影:長田慶
私はまだ成功しているとは思っていませんが、本当に人との出会いには恵まれていると感じています。例えば、群馬での引っ越し先の隣人と私の目指すところや今困っていることをお話しする機会があり、その方の紹介で現在の所属先である中央カレッジグループの理事長と出会いました。
そして、理事長が私の挑戦を応援したい言ってくださり、初のアスリート採用を実現してくれました。また、サントリーを退職した後でもサントリーからサポートを受けています。会社を辞める時は、その後のことは何も決まっていませんでしたが、すぐに素晴らしい出会いがありました。
画像提供:上田絢加(本人)
また、今年の4月からはTHE NORTH FACEにもサポートいただけることになりましたが、この3社に共通しているのは「チャレンジ」を大切にしているということです。私の挑戦をこんな素敵な会社に応援いただけることになり、本当に運がいいと思います。
画像提供:上田絢加(本人)
現在は、スキーモのシーズンが終わってランニングのシーズンに入ったところです。1年間フルスロットルでやるのは難しいので、今の時期は気持ちを少しオフ気味にしています。
画像提供:上田絢加(本人)
1日のタイムスケジュールは日によって異なりますが、まず、朝起きたら軽く10分から15分程度のヨガをして体の動きを整え、その後ジョギングを。ジョギングから戻ったら朝ごはん、できるだけ魚を食べるようにしています。その後は少し休んでからトレーニングを始めます。
トレーニング内容は日によりますが、陸上競技場で走る時もあれば、山に行く時もありますし、ジムでウエイトトレーニングをしたり、スキーの技術トレーニングをする時もあります。
撮影:長田慶
午後はご飯を食べてから、明日だったら所属している学校に出社します。私が所属している中央カレッジグループは、9校の専門学校と1校の高等専修学校を運営しているので、その学生さんたちに講演をします。その後、帰宅して仕事がある日はあまり走ったりはしませんが、午後にももう一度練習をすることがあります。
あまりオフがないような生活ですが移動の日は休みに当てることが多いです。例えば、関西まで車で移動する日や、ヨーロッパでオーストリアからスペインまで車で1000キロ移動する日などは、物理的に練習ができないので。途中でストレッチをするためにサービスエリアに寄ることも。コーチと相談して、休むべき日はしっかり休むようにしています。
小さな目標を積み重ねて理想の自分を追い求めていく
撮影:長田慶
スキーモの選手として自分の理想を100とすると、今は50パーセントか、40パーセントくらいだと思います。やらなければならないことは分かっているので、それに向けて取り組んでいくだけ。ゴールという目標だけと向き合うと高すぎて苦しくなることもありますが、小さな目標を立て、超えていくことで、一歩ずつ理想に近づいている感覚が持てています。
画像提供:上田絢加(本人)
大会でも目標タイムや順位はありますが、それ以外にもう1つポジティブになれる目標を掲げています。数字的な目標が達成できなかったとしても、他の達成できた部分に目を向けることで、前向きな気持ちを保つようにしています。
撮影:長田慶
このスポーツはタイムが重要ですが、山に行った時は「無事下山できた」ということを1つの目標にしています。山での活動はリスクもあるので、無事に下山できたことが大切です。あえて高くない目標も持つようにしています。
画像提供:上田絢加(本人)
そう心掛けるのにも理由があって、私は数字にこだわりすぎて、達成できなかった時にすぐに落ち込んでしまう。コーチからも「命があることが大切で、怪我をせずに無事に下山できたことを目標にしなければならない」と言われています。そうすることで心が軽くなり、自分らしく競技に取り組むように心がけています。
挑戦を選んだ私が描く未来、アスリートとしての道
撮影:長田慶
今後もどのような形であれ、競技にずっと関わり続けたい。自分の競技活動に加え、若い子に教えたり、普及活動に携わったりすることで、このスポーツに関わり続けたい。このスポーツの良いところは、走れなくなったら歩けばいいし、スピードを落として登山に切り替えることもできるという点です。
画像提供:上田絢加(本人)
形を変えて、動けなくなるまで続けたいと思っています。大学時代はやりたいことがなくて悩んでいましたが、今はやりたいことが見つかり、それに向かって取り組めることが幸せですし、この環境にとても感謝しています。
vol1とvol2はこちらから
上田絢加(うえだあやか)
1993年2月10日生まれ、大阪府出身、群馬県在住中央カレッジグループ所属、THE NORTH FACE アスリート。神戸大学卒業後、25歳からスカイランニングに挑戦。大会初出場となる2018年のアジア選手権で3位に入る。会社員の傍ら競技に取り組み、2020年はスカイランニング日本選手権で初優勝、2021年にはスカイランナージャパンシリーズで史上初のスカイ、バーティカルの2種目で年間チャンピオンに輝いた。現在はスキーモで2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指すため、群馬県に移住。昨シーズンのワールドカップ初戦のミックスリレー種目では11位を獲得。夏も冬も山で活動する二刀流のアスリート。
Interview place:渋谷SLOTH