
感動と笑いに包まれた松井大輔の引退試合
松井大輔は2000年に京都パープルサンガ(現在の京都サンガF.C.)に入団し、プロデビュー。以後、6か国13クラブでプレーし、日本代表としても活躍した稀代のテクニシャンだ。2023シーズンを最後に引退し、現在は横浜FCサッカースクールのコーチとして指導者の道を歩み始めている。そんな松井の、2024年12月15日(日)にニッパツ三ツ沢球技場で行われた引退試合の様子を紹介する。※トップ画像出典/Getty Images

JAPAN DREAMSが圧倒的強さを見せた前半戦
松井と縁のある選手や著名人が集結したMATSUI FRIENDSと、日本代表で共にプレーした選手が集結したJAPAN DREAMSが対戦。松井選手は最初、MATSUI FRIENDS側で出場した。
試合開始より8分、MATSUIFRIENDSの太田宏介が左サイドからクロス上げ、ゴール前の三浦知良がシュート打つもGKに阻まれる。そのこぼれ球を松井が決めて、先制。主役の初ゴールに大きな歓声が上がった。
18分、MATSUI FRIENDSに再びチャンスが訪れる。中山克広が右サイドをドリブルで運んだボールを松井が受け、ゴール前中央の三浦にパス。三浦がキープしたボールを、最後は松井が右足を振り抜いて追加点を決めた。
2点ビハインドのJAPANDREAMS。20分、小野伸二のクロスをファーサイドの大久保が頭で合わせ、1点を返した。さらに22分、FKのチャンスを得たJAPAN DREAMS。ボールを蹴るポジションに立ったのは本田圭佑と遠藤保仁。その姿は、南アフリカW杯デンマーク戦で17分に本田、30分に遠藤がFKを決め、勝利を掴んだ伝説の場面を彷彿とさせた。本田が左足で蹴ったシュートは、残念ながらクロスバーに当たってしまうが、既視感のあるFKに会場は大いに盛り上がった。
32分、本田からの浮き球を足元に吸い付くようにトラップをした小野伸二。最後はヒールでシュートを決め、JAPAN DREAMSが同点に追いついた。40分、JAPAN DREAMSへとチームを交代した松井が、南アフリカW杯カメルーン戦で、貴重な1点を決めた本田とのホットラインを再現する。松井がゴール前にクロスを上げ、フリーでボールを受けた本田がシュートを決めた。
44分には大久保からのクロスを、ゴール前にいた松井が胸でトラップ。GKをかわし、自身3ゴール目を決めた。前半アディショナルタイムにはロングボールに反応した本田選手が最終ライン裏から抜け出し、シュートを決める。JAPAN DREAMSが3点リードで前半を終えた。
松井の粋な計らいから感動のクライマックスを迎えた後半戦
後半が開始から57分、JAPANDREAMSの佐藤寿人が、ディフェンスがクリアしたボールを押し込んで追加点を奪う。一方、58分にはMATSUI FRIENDSの矢部浩之がゴール前でパスを受け、ヒールでゴールに流し込み1点を返す。続く66分にも、矢部が追加点をあげた。
75分にはまさかのプレーが飛び出す。交代で出場した元ハンドボール選手の土井レミイ杏利が、右サイドからのクロスを手でキャッチし、ゴールへ投げ込んでしまう。レッドカードが出され一発退場となってしまうが、引退試合ならではのシーンに会場は笑いに包まれた。
78分、JAPAN DREAMSの駒野友一が右サイドからクロスを上げる。松井選手が、胸でトラップからのボレーシュートでゴールネットを揺らした。
その直後、MATSUI FRIENDSは相手が守備につく前にスタート。皇治が確実にシュートを決める。さらに、そのゴール後すぐに衝撃の荒技が飛び出す。湘南乃風HAN-KUNがタオルを回してディフェンス陣をなぎ倒し、西岡剛へパス。西岡からの折り返しに、吉田沙保里が押し込みゴール。MATSUI FRIENDSが連続で2点を返した。
85分には右サイドからのクロスに、JAPANDREAMS松井がオーバーヘッドで合わせゴール。さらに、87分には華麗なボールさばきから、香川真司がシュートを決めてJAPAN DREAMSが10点目を獲得した。
そして89分に、ペナルティーエリア内でドリブルを仕掛けた香川選手に、元女子レスリング選手の吉田がタックルする場面も。香川が吉田にレッドカードを出して退場となり、JAPAN DREAMSがPKを獲得した。
PKを蹴るのは駒野。南アフリカW杯の決勝トーナメント1回戦で、パラグアイと対戦した日本代表は、0-0のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦となった。3人目のキッカーだった駒野選手はPKを外してしまい、結果チームも破れてしまった苦い思い出がある。
松井は、引退試合のクライマックスに訪れたPKのチャンスにそんな駒野を指名。そして、両チームの選手が肩を組んで見守る中、駒野が蹴ったボールはゴールネットを揺らす。結果、12-6でJAPAN DREAMSが勝利した。
松井からの感謝を伝えるラストメッセージ
試合終了後、松井は引退試合に関わった全ての人、ファン、家族に感謝の言葉を伝えた。さらに、プロ1年目の京都パープルサンガで共にプレーした三浦選手を「自身のサッカー人生において欠かせない人」と名前を挙げた。
「18歳の若造をかわいがってくれたり、怒ってくれたりと、たくさんのことを学ぶことができました。本当に、カズさんがいなければ今の自分はないと思います」とメッセージを伝えた。そして、「これからスーパーテクニカルコーチを目指して、指導者の道を歩んでいきたい」と今後の目標を話し、ラストメッセージは終了した。
笑いあり感動ありだった松井の引退試合。それは、松井選手が歩んできたサッカー人生を表すようなものであった。とくに南アフリカW杯を思い起こすような場面がいくつもあり、サッカーファンにとっても胸が熱くなる時間となったのではないだろうか。
そして現在は指導者の道を歩み始めた松井が、今後どのような選手を育成していくのか、とても楽しみである。
「ABEMA松井大輔-Le dernier dribble- ~STARSEEDS SPECIAL MATCH~」(2024年12月15日(日)配信)より
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています