「町田で積み上げた日々の先に、代表は見える」望月ヘンリー海輝が選び取ろうとする未来とは
「選ぶのは、いつだって自分」——その言葉に、迷いのないまなざしが宿る。 J1デビュー、日本代表合宿、そして2年目の開幕。目まぐるしい日々の中でも、望月ヘンリー海輝は焦ることなく、静かに自分と向き合い続けている。大切なのは、与えられることではなく、自分で選ぶこと。試合中の1対1も、日々の準備も、「どう捉えるか」「どう反応するか」はすべて自分次第。心に残った一冊の本、仲間との本気のミーティング、プレーで伝えたい“自分らしさ”。サイドバックとして、ひとりの人間として、彼はどんな未来を選び取ろうとしているのか。※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

「選ぶのは、いつだって自分」──“自由”を大切にする心のあり方
──インタビューをしていると、すごく俯瞰的にご自身を見ている印象があります。サッカー以外の時間で意識して取り入れていることってありますか?
最近なんですけど、友達にすすめられた本を読んでいて、その中にすごく心に残った考え方があったんです。「物事に対する反応は、自分で選べる」という内容で、たとえば雨が降ったときに「最悪だ」と思うのか、「雨のおかげで植物が育つ」とポジティブに捉えるのか。
同じ出来事でも、どう受け取るかは自分の“選択”なんだっていう話で、すごく納得感がありました。サッカーでも、たとえばコーチに怒られたときに「ダメだった」と思って落ち込むのか、「これは成長のための指摘だ」と前向きに受け止めるのか。最近はそういう“反応の選び方”を意識するようにしています。
──まさに、自分でベストな選択をしていく、という感覚ですね。
そうですね。自分の目標とか、なりたい姿に向けて、「そのために今、どんな選択をするのがベストなのか」っていう視点で考えるようになってきました。本に書いてあった「選択の自由」という言葉が、自分の中ですごく刺さっていて。誰かがこう言ったからじゃなくて、「自分がそうしたいから、そう選ぶ」という感覚。そこを大事にしています。
──“自由”というキーワードは、望月選手の中でも大きなテーマになっている?
はい。やっぱり、人に流されずに、自分の意思で選ぶこと。それが、最近の自分の中ではすごく大事なテーマになっています。
「人生は、捉え方次第」──メンタルと選択のスポーツ、サッカーを通して伝えたいこと
──そんな望月選手がサッカーを通じて、人々に伝えたい思いはありますか?
うーん…ちょっと難しいですね。正直、これまであまり深く考えたことはなかったんですけど、最近はやっぱり「メンタルがすべてだな」ってすごく感じています。捉え方ひとつで、物事の見え方ってまったく変わる。誰かが何かをしたからって、自分の人生が大きく変わるわけじゃないし、どうにもできないことに振り回されるよりも、「じゃあ自分に何ができるか」っていう気持ちでいられることが、生きていく上でも大切なんじゃないかなと思っています。
──それをプレーを通して感じ取ってもらえたら、という思いもありますか?
はい、まさにそうです。サッカーって、常にいろんな選択肢の中から“その瞬間のベスト”を選ぶスポーツだと思っていて。だから、自分が試合の中で「今どんな選択をしているか」を、もし見てくれている人が感じ取ってくれたら嬉しいですね。
毎回うまくいくわけじゃないですけど、それでも判断の質とか、気持ちの強さとか、自分の選択で突破していこうとする姿勢から、何か伝えられるものがあればと思っています。
「勝つために、本気でぶつかれる仲間がいる」──町田で感じるチームの強さと一体感
──2025シーズン序盤を振り返って、2位と好調な位置にいますが、ここまでの手応えはいかがですか?
開幕戦は広島に負けて、2戦目は勝って、3戦目でまた敗戦と、正直つまずきもありました。でも、そこで連敗しなかったのはチームとして大きかったと思います。特にヴェルディ戦の反省点を、全員でしっかり共有して修正できたことが、直後の3連勝につながったのかなと。
今シーズンは、内容も結果も含めて、チームとしてすごく良いスタートが切れたと思っています。
──FC町田ゼルビアで2年目を迎える中で、このクラブならではの魅力や強みをどこに感じますか?
まず、選手同士の仲が本当に良いです。他のチームではもっとピリピリしてるって話も聞くんですけど、町田はすごく雰囲気がいい。僕は町田しか経験していませんが、だからこそ「この環境は恵まれてるな」と実感しています。サッカー面で言えば、やっぱりタフな守備。そこがこのチームの明確な強みだと感じています。
──谷選手も「勝つ集団」としての一体感を語っていましたが、その意識はやはり強いですか?
はい、そこはすごく強いと思います。全員が“勝つ”ことに対して本気で取り組んでいて、日常からそれが見えます。練習後にも自然と話し合ったり、自主練をしたり、ミーティングで細かい部分まで意見を交わしたり…。選手もスタッフも一緒になって、「どうしたらもっと良くなるか」を真剣に考えて行動している。そういう日々の積み重ねが、今の結果につながっているんじゃないかなと思っています。
「代表は“夢”じゃなく、結果としてたどり着く場所」
──先日、日本代表がW杯出場を決めた試合がありましたよね。望月選手も代表合宿の経験がある中で、今、あの舞台に対してはどんな思いがありますか?
そうですね…正直に言うと、今の自分にはまだそのチャンスを掴みきれていない感覚があります。まずはクラブでしっかり結果を出さないといけないですし、そういう意味でも、あの舞台はまだまだ距離のある場所だなという印象です。
この前の試合を見て、改めて思いました。アジアの中で、日本代表って本当に飛び抜けて強い。最速でW杯出場を決めるだけの力があるし、試合前からの大きな期待を背負いながら、それを結果に結びつけられる。あのチームには、そういうプレッシャーを力に変えられる“強さ”があると感じました。
海外で活躍している選手たちが当たり前のようにスタメンに名を連ねていて、日本のサッカーを一人のサッカーファンとして見ても、「これは強いわ」って思いますよね。
──サポーターも、望月選手がその舞台でプレーする日を楽しみにしていると思います。
僕自身も、もちろんいつかはあの舞台に立ちたいと思っています。
でも、「ただ出たい」ではなくて、自分がそのレベルに到達できたら、自然とそこに行ける。そういう感覚なんです。代表に選ばれることって、ゴールではなく“結果”だと思っていて。自分が日々成長して、その積み重ねの先に代表がある。だからこそ、今は焦らずに、毎日のトレーニングや試合を大切にして、楽しみながら目指していきたいと思っています。
「守った瞬間に湧き上がる“快感”」──止めるプレーにこそ、自分らしさがある
──望月選手がサッカーをやっていて、「最高に高揚感を感じる瞬間」はどんなときですか?
やっぱり、1対1で相手を止めたときですね。特にサイドの攻防で、ドリブラーと真正面から向き合って、それをしっかり止めきれた瞬間。あの快感は格別です。すごく気持ちが高ぶります。
──確かに、サイドって個の力が問われる場面が多いですよね。
だからこそ、1対1で勝てたときの喜びは特別ですね。攻撃も好きですけど、自分の中では守備で勝てたときの方がテンションが上がります。
──他にも、プレー中に「気持ちいい」と感じる瞬間はありますか?
細かいところですけど、難しい体勢でトラップしてロングボールをピタッと止められたときとか。誰にも気づかれないような地味なプレーでも、自分の中で「よっしゃ」って思える瞬間はけっこうありますね。
──ファンには、そういったサイドの攻防にもぜひ注目してほしいですね。
はい、ぜひ見てほしいです(笑)。攻撃ももちろん頑張ってますけど、自分の中ではやっぱり守備に強みを感じているので、1対1の場面は特に注目してもらえたら嬉しいです。
──最後にラフな質問で…望月選手、「これだけは手放せない!」というモノや趣味はありますか?
そうですね…ゲームですかね。やっぱりゲームはずっと好きです。
──どんなタイトルをよくやってるんですか?
一番プレイしてるのは『Apex Legends(エーペックス レジェンズ)』ですね。最近はそこまで長時間やってるわけじゃないんですけど、オフの日とか、リフレッシュしたいときにやってます。
考えすぎずに済むというか、頭を一度リセットできる感覚があって。自分にとってはちょうどいい“気持ちの切り替え”の方法になってます。
▼試合情報
日程:4月13日(日)14:00キックオフ
対戦:浦和レッズ
場所:国立競技場
チケットは▷Here
望月ヘンリー海輝(もちづき・へんりー・ひろき)
2001年9月20日生まれ、埼玉県出身。ポジションはDF。上福岡サンダース、大宮アルティージャU-12、三菱養和サッカークラブを経て国士館大学に進学。2024年より町田ゼルビアに所属し同年2月にJ1デビューを果たす。同年8月と10月にFIFAワールドカップ2026アジア最終予選の日本代表メンバーに招集された。
Photo: Rika Matsukawa
FC Machida Zelvia's Souma Yuki: "Don't be afraid of challenges, enjoy the differences" - Moving forward with determination
FC Machida Zelvia's Yuki Souma: "The doubts and suffering are all for the sake of moving forward"
FC Machida Zelvia's "Soma Yuki" "If the ball goes to this player, something will happen" - The belief of this unorthodox dribbler

Ayumi Kaihori: "Women's soccer is a place where everyone can be the protagonist" - A place where everyone can get involved freely. This is what the WE League is aiming for now.

Beyond the world's best. Ayumi Kaihori talks about passing on the baton of Japanese women's soccer
