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先発不足とリリーフ過多のジレンマ、東京ヤクルトスワローズの黄金期再現に向けた新たな挑戦

東京ヤクルトスワローズは、自身もリーグを代表するセットアッパーだった高津臣吾監督が2021年から22年にかけてリーグ連覇を達成。21年には前年最下位からの日本一を成し遂げた。200勝まで残り14勝に迫った石川や小川が試合を作り、実力派のリリーフ投手の活躍で勝利を積み重ねてきた。ここでは過去の球団の投手データを元にしながら、東京ヤクルトスワローズの投手起用の変化や分業化の歴史を振り返ってみたい。※イラスト/vaguely

Icon kinggear iconKING GEAR Editorial Department | 2025/03/07

2005年、投手陣とリリーフ陣が活躍するも終盤で失速

前年は後半戦に追い上げを見せ、2位でシーズンを終えたヤクルトだったが、2004年のオフに稲葉篤紀がFAで移籍。7年目を迎えた若松勉監督に求められたのは、新たな戦力の発掘やチーム内の世代交代だった。野手では古田敦也が2000本安打達成や、シーズン200安打の活躍を見せた青木宣親の大ブレイクなど、ニュースの多い1年となった。

投手陣に目を向けると、石川雅規を中心に藤井秀悟と館山昌平が10勝をマーク。前年新人王を手にした川島亮やガトームソンが続き、着実に白星を積み重ねていった。完投数を見ると、館山、川島、そして後に野手として活躍する高井雄平が1完投ずつ記録し、チーム全体ではわずか3完投に留まっている。リリーフ陣では、「ロケットボーイズ」として親しまれた速球派の五十嵐亮太と、抑えで37セーブを挙げた石井弘寿が控えており、継投で勝利を掴み取る場面が多く見られた。球界に多くの話題を振りまいたヤクルトだったが、シーズン終盤の勝負所で横浜に振り切られて4位に終わっている。

2015年、真中監督の元でリーグ優勝を達成も日本一は届かず

2005年に退任した若松監督に代わり、2006年にはチームの黄金期を支えた古田敦也氏が選手兼任監督に就任して3位に。2007年には監督1本に専念するも最下位に沈んだ。翌年の2008年から3シーズンは高田監督、2011年から14年までの3シーズンは小川監督がチームを牽引するも、上位と下位を行き来する不安定なシーズンが続き、1990年代のような強さを手にするまでには至らなかった。そして2015年からは黄金期を支えた真中満氏が監督に就任し、チームの指揮をを執ることとなった。

2015年のシーズンは首位打者の川端慎吾、本塁打王と盗塁王の2冠を手にした山田哲人、打点王の畠山和洋らを擁する破壊力のある打線が奪ったリードを、ロマン、オンドルセク、そして23試合無失点の球団新記録もマークしたバーネットの3人が守り切るスタイルを作り上げる。白星を積み重ねたチームは終盤まで続いた阪神、巨人とのデットヒートを制して、真中監督が現役だった2001年以来となるリーグ優勝をつかみ取った。

先発陣は石川が13勝、小川泰弘の11勝が中心となったが、完投数に目を向けると年間を通じて小川、石川、山中が1完投ずつの合計わずか3完投に留まっており、リリーフに対する信頼の厚さと、3番手以降の先発陣の薄さが垣間見えるシーズンとなった。日本シリーズでは福岡ソフトバンクホークスの前に敗れ、2001年以来の日本一達成とはならなかった。

2024年、先発陣の不足とリリーフ陣の負担が続く

リリーフエースとしてヤクルトの黄金期を支えた高津臣吾氏が2020年に監督に就任し、最下位に終わった初年度から2021年は日本一、2022年にはセ・リーグ連覇を成し遂げた。しかし、その後は再び低迷し、先発陣の層の薄さなどが影響し、5位に沈んだ。年間を通じて先発投手が安定して試合を作れず、リリーフに過度な負担がかかり、敗戦を重ねることとなった。投手陣のやりくりの難しさを感じさせた一年だった。

この年、2桁勝利を挙げた投手はおらず、チーム最多勝は9勝の吉村貢司郎、高橋奎二が8勝で続いている。今後は、試合を作れる先発陣の育成や補強が急務になってくるだろう。完投数に目を向けると楽天に移籍したヤフーレ、ベテランの石川、吉村、サイスニードがそれぞれ1完投ずつ記録。このなかでも明るいニュースといえば、初登板初完封勝利を挙げたルーキー松本健吾の台頭だろうか。残念ながら昨季はこの1勝に終わってしまったが、さらなる飛躍に期待したいところだ。

一方、救援陣は60試合に登板して防御率1.34を記録した大西広樹や、55試合に登板し3勝3敗5S16Hとフル稼働を見せた木澤尚文など、評価すべき選手は多い。リリーフ投手に頼る戦術は現代の野球においては主流となりつつあるが、やはり軸となる先発投手がいなければ長いシーズンを勝ち進むのは困難といえるだろう。

浮き沈みを乗り越えたヤクルト、次なるエース育成が急務か

上位と下位を行き来する浮き沈みの激しいシーズンを過ごしてきたヤクルトだが、チームを上位に押し上げてきたのは、実力派の外国人投手や安定したリリーフ投手の活躍にほかならない。再び黄金期を築くためには、小川、石川に続くエースの育成や、登板数の多めなリリーフ陣の離脱を防ぐことが重要だ。2024年シーズンは救援陣の活躍が目立ったが、これは先発投手の手薄さによるものと考えてよい。チーム自体は投手の分業制が進んでいるとはいえ、やはり長いイニングを投げられて2桁勝利ができる先発投手がいなければリリーフ陣も疲弊していき、上位に食い込むのは難しくなるだろう。投手陣の抜本的改革が実現するかどうかに期待したい。