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地域と共に歩むジェフ千葉、佐藤勇人が語る“勝利を超える”クラブの使命

ジェフユナイテッド市原・千葉で地域密着の活動に力を注ぐ佐藤勇人が、クラブと地域の理想の関係について語る。地域の課題に寄り添い、その解決に貢献することこそがプロスポーツクラブの真価だと考える佐藤。ウォーキングフットボールなどの活動を通じて、新たなつながりを築きながら地域に根ざしたクラブ作りを目指している。勝利だけじゃない、地域と共に歩むクラブの未来とは何か?※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

IconIppei Ippei | 2024/11/21

「助け合いの精神が息づくウォーキングフットボール–人生の本質が詰まったスポーツ」

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

――本日はお疲れ様でした。最初にイベントの感想をお伺いします。

今日のイベントでは、普段一緒に活動している仲間とだけでなく、初めて参加された方とも触れ合うことができて、とても新鮮な時間を過ごしました。このウォーキングフットボールというスポーツは、サッカーのように激しく競うわけではなく、一人ひとりが無理をしない範囲で協力し合い、楽しむことが大切にされています。こうした「無理をしないで助け合う」というスタンスは、人生そのものにも似ていると感じました。

今の社会では、頑張りすぎてしまう人が多くいるように思いますが、こうして協力し合いながら、自分ができることを少しずつ積み重ねていくことが大切だと改めて実感しました。日々の生活も、スポーツも、人と人とが支え合うことで成り立っているんだなと感じさせられましたね。ウォーキングフットボールには、みんなで助け合いながら生きていく人生の本質がある気がして、今回のイベントを通じて学びを深めることができました。

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

――ウォーキングフットボールを何度かプレーされているとお聞きしましたが、これから初めて挑戦する方へのアドバイスがあればお願いします。

まず言いたいのは、このスポーツは終わった後の爽やかさが特徴です。試合が終わっても、皆さんの顔を見ていると、ヘトヘトで「もう何もできない」っていう人はいません(笑)。むしろ、みんなが笑顔で余裕を持って楽しんでいるのが見て取れます。これは、ウォーキングフットボールならではの良さだと思います。

ウォーキングフットボールは、適度な運動量で、1日の中でもちょうどいいリズムを生んでくれるスポーツです。気軽に始められて、終わった後もエネルギーが残っている。まさに楽しく、余裕を持って楽しめるスポーツだと思います。初めての方も、ぜひリラックスして挑戦してみてほしいですね。体力に自信がない人でも参加しやすいので、誰でも気軽に楽しめると思います。

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

――スポーツの中で、仲間や人生の大切さを感じたエピソードを教えてください。

スポーツには勝ち負けがつきものですが、その勝敗が人とのつながりを深めてくれると感じます。特に負けたときこそ、仲間の存在のありがたさが身にしみます。僕自身、これまで何度も悔しい敗北を経験してきましたが、そんなときに支えてくれる仲間がいたことで乗り越えられたと思います。

スポーツを通して感じたのは、勝ったときの喜びももちろん大切ですが、負けたときに感じる仲間の大切さ、支え合いの価値です。スポーツを通して、仲間と共に支え合うこと、絆の力を、多くの人に感じてもらえたら嬉しいです。スポーツの本当の価値は、結果以上に、仲間と共有するそのプロセスにあると強く思います。

「プロクラブの使命」試合の勝敗を超えた、真の価値

――現在ジェフ千葉で地域密着の活動をされていますが、地域との関係性を深める上で意識されていることはありますか?

まず大切なのは、この地域が持つ特徴や抱える課題をしっかり理解することだと思っています。地域で本当に求められていることを知るためには、実際に現場に足を運んでコミュニティに関わり、そこで生活している人たちと交流することが不可欠です。また、新しい関わりを広げるだけでなく、すでに築かれているつながりを深めることも重要だと考えています。

地域の課題をしっかりと感じ取り、それに応える形で協力し合いながら解決を目指すことが、プロスポーツクラブとして理想の姿ではないかと思っています。もちろん、試合で勝利することもファンの方々にとっては重要ですが、それ以上に、クラブが地域の課題解決にどれだけ貢献できるかが、自分たちの存在意義を示す部分だと感じています。今後も、地域とのつながりを育みながら貢献を続けていきたいですね。

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

――イベント活動などでも積極的に現場に出向かれているようですが、X(旧Twitter)での発信も見かけますね。

そうですね。SNSも活用して、地域の方々やファンの皆さんとのコミュニケーションの場を広げています。私自身、かつてオシムさんという方から多大な影響を受けました。彼は「サッカーは勝つことも大事だけど、それ以上に地域が大切だ」と常におっしゃっていました。この言葉は私の中で大きな指針となっています。

地域がクラブを応援してくれるからこそ、私たちもその地域に恩返しをするような活動が必要だと感じています。私たちが活動を通じて地域の人々の役に立つことが、クラブが愛され、応援される理由になると信じています。オシムさんの教えを受け継ぎながら、地域と共に歩むクラブを目指して日々活動しています。

――これまでの経験や現役引退後の日常で、スポーツが役立っていると感じる瞬間はありますか?

特に家族や子どもたちと接する時に、スポーツを通じて学んだことが生きていると感じます。例えば、子どもたちに対する伝え方ですね。スポーツの場面で自然と身についた「分かりやすく、丁寧に伝える」ということが、家庭でも大きな助けになっています。勝ち負けや協力することの意味を通して、子どもたちに大切な価値観を伝えられるのは、スポーツの経験があったからこそですね。

「地域と共に歩む未来」–貢献を積み重ね、育まれる信頼

――佐藤さんが影響を受けたオシムさんについてもお聞きしたいのですが、彼からの教えや存在は、どのように佐藤さんの人生に影響を与えていますか?

オシムさんからは「今ももちろん大事だが、未来を見据えて行動しなさい」という教えをいただきました。例えば、サッカーの場面でも「10年後にどうなっているかを考えながら行動せよ」とアドバイスをもらったことが印象に残っています。その言葉が私にとっては、スポーツだけでなく、地域社会とのつながりや自分の行動にも影響を与えています。

オシムさんの教えに沿って、ピッチを離れた場面でも、自分の果たすべき役割や地域への貢献を忘れずにいたいと思っています。サッカー以外の場所でも自分にできることを探し、そこに全力で汗をかいて取り組む。それが、地域や未来に向けての私の使命だと考えています。

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

――最後に、今後の目標や展望についてお聞かせください。

現在もジェフのクラブ運営に関わらせてもらっていますが、クラブの存在意義や価値をもっと高め、地域にとって欠かせない存在にしていきたいと思っています。地域との信頼関係を築き、支えてもらえるようなクラブに成長させたいですね。

そのためにも、オシムさんの教えに沿って、ただ勝つだけでなく、地域に根ざした行動を積み重ねることが大切だと考えています。試合での勝利と同じくらい、地域への貢献を誠実に続けていくことで、クラブの未来と地域の未来をともに創り上げていきたいと思います。

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Hayato Sato
1985年3月12日、埼玉県出身。プロサッカー選手。ポジションはMF。地元である埼玉県春日部市で小学1年生からサッカーを始め、18歳で現ジェフユナイテッド市原・千葉とプロ契約し、チームを2度の優勝に導いている。代表歴としては1999年のU-18代表候補に選出後、2003年にU-22代表、2006年と2007年に日本代表としてプレー。2019年にプロサッカー選手を引退。その功績を称えられJリーグ功労賞を受賞。現在はジェフ千葉のアンバサダーやJリーグや海外サッカーの解説を行っている。


Photo:Rika Matsukawa
Interview:Yu Masaki