ラグビー選手とスクール代表、二足のわらじを履く岸岡智樹の挑戦(後編)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの岸岡智樹選手(SO)は、選手としての活動にとどまらず、『岸岡智樹ラグビースクール』代表としての活動も行っている。多忙なトレーニングの合間を縫って、岸本選手はなぜ、二足のわらじを履くのか。時間のやりくりや組織づくり、活動で感じたことについて話してもらった。※トップ画像提供/©岸岡智樹のラグビー教室

――社業、選手、スクールの時間をどのように割り振っているのですか?
この時間はこれをやると(決めたら)、次のこと考えずに、目先にあるものを黙々とやるようにしています。
僕は元からマルチタスクが上手いタイプでした。
徐々にやらなきゃいけないものの優先順位をつけられるようになったのか、それとも元々できていたのか。その辺りについては自分でもよく分からないんですけど、ふとした時に「自分はマルチタスクが得意だ」と気付かされたんです。
――「一つのことを終えたら次!」と言った具合に、きちんと頭を切り替えられるものなのですか?
そうですね。午前9時から17時までの8時間は会社の仕事がありますが、
17時に仕事を終えたら、その瞬間から次のことをやって良い。そこから眠りにつく夜0時までは7時間もありますから、「仕事を終えた17時から、まだ7時間も仕事ができる」というのが僕の感覚です。
――睡眠に関してお伺いしたいのですが、いつ寝ているのですか?
みなさんと同じです。だいたい午前0時頃に寝ています。
午前0時には目をつぶりたいので、30分前に電子機器を置いて睡眠の質を保ったりするように心がけていて、色々と勉強していくうちに作業時間は減っていきました。
7時間が6時間半、さらにお風呂、ご飯の時間もあるので、実質6時間くらいでしょうか。
最近は練習を夕方16〜17時頃に終えた後に、3〜4時間くらいしか(ラグビー教室の業務に)時間を割けていないので2年前から比べるとだいたい半分くらいになりました。効率化を進めてはいますが、やっていることは減りました。
――ラグビー教室の活動を見ているとそのような印象はまったく感じませんでした。
それは活動してきた年数が増えて、積み上がっているという証拠ですね。僕の活動時間が半分になった分、皆さんに補ってもらっているんだと思います。
©岸岡智樹のラグビー教室
――組織づくりについてもお聞きしたいのですが、教室を運営されているスタッフの皆さんにはどのように声をかけられたのでしょうか?
基本的には全員知り合いで、皆さんそれぞれ分野の違う本業を持っています。夏休みだけの期間限定イベントなので、「一緒にできる人いませんか?」と一人ずつ声をかけて、今もサポートしていただいています。
これはラグビーから学んだ部分だと思うのですが、僕はまずは自分が動いてみることが一番大切だと思っているんです。そうしないと何が上手くいっていて、どこを修正すれば良いのかがわかりませんから。
僕のラグビー教室も、2021年に始めた時は5人ぐらいで始まりました。
今はインターネットを調べたらある程度は情報が出てきますけど、当時は情報もほとんどなく、何もわからないような状況からのスタートでした。
詳しい人に声をかけて、わからないことを一つ一つ解決したり、これまでに出会ったいろいろな人に支えてもらいながら、なんとか今の形を作り上げました。
――他人へのお願いは苦になりませんか?
そうですね。僕ができないことをお願いする形なので、全然苦ではありません。
もし、僕がお願いをされる立場になったとしたら、何も頑張っていない奴には力を貸さないと思うんですけど、必死な人のお願いだったら「1%とか10%くらいなら、サポートしようかな」と思える。自分たちのできないことをお願いする立場なので、一緒にやる相手にワクワクしてもらえるような提案を心がけています。
©岸岡智樹のラグビー教室
――ラグビースクールは来年を目処に全国制覇予定ですね。
2020年に横浜と大阪で行った単発のレッスンが始まりでした。
その打ち上げの場で「来年からいろいろな場所に行こう!」と意気投合し、翌2021年に今の形でスタートを切ることになりました。
今年で4年目になりますが、2年目の2022年頃から、徐々に全体像が見えてきて、
全国を回る必要性を感じるようになりました。
僕らは『地域格差の是正』を目標・目的に置いているので、格差がある場所に行かなきゃいけない。最初は人が集まりやすいところから始めて、だんだん「人が少ないところにも届けに行きましょう」という流れになりました。今年と来年で47都道府県制覇する予定でプロジェクトを進めています。
©岸岡智樹のラグビー教室
――「地域格差」の具体的なエピソードはありますか。
まずボランティア精神ですね。悪い文化じゃないとは思いますが、(スポーツの指導現場においては)いわゆる無償ボランティアが多すぎるように感じました。やはり価値あるものにはしっかりお金を払わなきゃいけないと僕は思います。
あとは機会の格差ですね。試合や練習環境もそうですし、そもそも試合や練習に必要な人数が揃わないこともありますから。
ただ面白いことに、お金にはあまり格差がないなと……。もちろん都心部に近いほど人が多いので、1回あたりのイベント収入金額も大きいですが、一人あたりにかける金額と考えると、そこまで変わらないことに気づかされて。こういったことは現地に足を運んだから見えてきた部分かなと思います。
©岸岡智樹のラグビー教室
――今後はラグビー教室をどのように発展させていくのでしょうか?展望をお聞かせください。
模索中です。
『地域格差の是正』という目標に対して、今僕らが持っている情報としては「(格差が)あります!」ということしか言えないからです。
「(地域格差が)あるだろう」から「あるよね」という確信に変わったフェーズです。その表面化したところで、僕ができるものがあるのか、それとももう別に何も施す必要がない可能性もある、格差は共存すべきだなという考えになってきていて。機会は平等にしたほうが良いと思うのですけど、レベルだったら差はあって当然だと思っているのです。
どこに対しての格差があって、どれに対して是正する必要があるのかを見定める必要があるなというのが、47都道府県行った後の次のフェーズ。どこに次の焦点を当てるかというのを、今年の数ヶ月と、来年の一年間で決めたいです。
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