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悲願のシングルス五輪初出場 平野美宇が見せた進化と深化、東京からパリへつないだ道のり

7月26日に開幕するパリ2024 オリンピック競技大会(以下、パリ2024)でメダル獲得が期待される卓球。女子メンバーでは唯一東京2020オリンピック競技大会(以下東京2020)に続く2大会連続出場を果たすのが平野美宇。今大会は自身初となるシングルスと団体戦にエントリーしている。同級生の伊藤美誠、早田ひなとともに“黄金世代”として長らく卓球界をけん引してきた平野は、華やかな経歴の一方でリオ2016オリンピック競技大会でのリザーブメンバー、東京2020でのシングルス落選など苦しい想いも経験してきた。24歳を迎えた平野が、パリまでに歩んだ道のりとはーー。※トップ画像:(C)WTT

Icon 30716468 1048529728619366 8600243217885036544 nYoshitaka Imoto | 2024/07/16

新世代が台頭した女子卓球界

平野は東京2020の選考レースでは石川佳純との激しいシングルス出場争いの末に落選。団体戦のメンバーとして初選出され、石川と組んだダブルスとシングルスで活躍し銀メダル獲得に貢献したものの、悔しい気持ちも味わった。

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画像 /(C)ITTF

迎えたパリ2024に向けた選考は、これまでの世界ランキング上位者ではなく日本独自の選出方法に変更。国際大会に加えて、国内での選考会やTリーグも対象大会となり、国内外への遠征を繰り返しながら選考ポイントを積み重ねていくことが求められた。

そんな過酷な戦いのなかで、平野は第1回のパリ2024選考会となった2022年3月の「LION CUP」で8位に終わりスタートでつまづいた。さらなる成長を見せていた早田や東京2020で金、銀、銅、3つのメダルを獲得した伊藤という同級生ふたりに加えて、長﨑美柚、木原美悠、張本美和といった若手が女子卓球界では台頭してきた。

平野にとってはパリに向けてキャリアを重ねていくなかで、これまで若手として年長の選手に挑んでいく側から、後輩からの突き上げがある中堅へと変化を感じながら進めていく選考となった。

伊藤美誠と繰り広げたデッドヒート

そんななかでも、平野がパリをかけた戦いでデッドヒートを繰り広げたのは伊藤。ともに10代から脚光を浴び、国内外で活躍してきた両者は盟友でありしのぎを削ったライバルでもある。リオ2016では平野が出場を逃したなかで、同い年の伊藤は団体メンバーとして初選出され銅メダルを獲得した。

さらに、東京では平野がシングルス出場を逃したなか、伊藤は3種目に出場し、シングルスでは銅、団体戦では銀メダルに輝いた。そして、最大のハイライトとなったのが水谷隼と組んだ混合ダブルスで、日本勢では史上初の金メダルを獲得。伊藤は、五輪においては常に平野の一つ先をいく存在だった。

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画像 /(C)ITTF

パリ2024に向けた選考レースは早田が独走したなかで、平野が2023年6月の「Tリーグ NOJIMA CUP」で優勝を飾るなど序盤のつまづきを取り戻して2位につけ、伊藤が3位から平野を追いかける状況になった。東京2020に続いて厳しい2位争いになった平野だが、この選考期間を通して見せたのが経験を積んだことによる精神的な成長だった。

伊藤との決勝を制したNOJIMA CUPの優勝後には「前回の東京2020(の選考)では2017年に結果が出たこともあって結果を考えてしまった」と振り返りながら、「5、6年が経って、今の自分のレベルを考えた時に自分は挑戦者だと思っている」と冷静に今を分析し、目の前の戦いに挑む姿は印象的だった。

新たな姿で掴んだ悲願

平野はリオ2016落選後の2017年に「ハリケーン・ヒラノ」と呼ばれる高速卓球で中国の強豪や国内の有力選手を次々に倒して国内外でタイトルを獲得。衝撃を与えた一方で、各方面からの対策も進み、東京2020ではシングルスの選考で落選し、パリ2024に向かう過程のなかではアップデートも求められた。

そんななか、打球に緩急をつけた新しいスタイルや、種類の豊富なサービス、レシーブを操り戦術面でも引き出しを増やすなど、選手としての幅を広げた。22年に移籍したTリーグの木下アビエル神奈川で、かつてJOCエリートアカデミーで指導を受けた恩師、中澤鋭監督と再会し自らの卓球を見つめ直したことも助けになった。

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画像 /(C)WTT

その努力が実を結んだのが今年に入った1月の全日本選手権。「自分の人生は自分で決める」と覚悟を持ち挑んだ大会で、伊藤が6回戦で敗れたのに対し、平野はベスト8まで勝ち進み悲願のシングルス出場権を獲得。東京2020ではあと一歩のところですり抜けた権利を自らの進化で掴み取った。

早田も成し遂げていない世界1位撃破

パリでは早田とシングルスでメダルを狙う平野だが、それに加えて2大会連続でメンバーに選出された団体戦では中国勢撃破も期待されている。

平野は2023年の「WTTコンテンダーザグレブ」決勝で世界ランキング1位の孫穎莎相手にフルゲームで勝利して優勝を果たした。孫穎莎相手の勝利は日本のエースに成長した早田と、急激な成長を見せて団体戦メンバーに選出された張本も現時点で成し遂げていない。

さらに平野は今年2月の「世界卓球団体戦」でも決勝で当時世界3位の王芸迪相手にストレート勝ちを収め、日本勢の金メダルへあと一歩という状況を作った。団体戦で過去最強とも呼べる陣容を揃えてパリ2024へ挑む日本チームのなかでも、平野のオリンピックにおける経験とキャリアを重ねても健在の“爆発力”が日本の行方を左右する面は大きい。

紆余曲折を経ながらも東京から歩みを進め、オリンピック2度目の出場を果たす平野。“ハリケーン”と呼ばれた勢いに加えて、選手としても人間としても深みを増した24歳はパリの舞台でどのような姿を見せるのか。

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画像 /(C)WTT