“見えない薬”がもたらした偽りの栄光-スポーツ界を揺るがすドーピングスキャンダルの真相
2000年代初頭、アメリカのスポーツ界を中心に起こった前代未聞のドーピング事件、通称「バルコスキャンダル」。Netflixドキュメンタリー「Untold: 衝撃のドーピングスキャンダル」は、中心人物であるバルコ研究所のビクター・コンテと、トップアスリートたちの証言を通して、栄光の裏に隠された薬物使用の実態を暴き出す。スポーツの“フェアネス”とはなにか、その本質を問いかける一作だ。※トップ画像提供/Netflix映画『Untold: 衝撃のドーピングスキャンダル』2023年8月15日より独占配信中
スポーツ界に蔓延する薬物、“見えない薬”はいかにして生まれたのか

バルコ研究所の創設者であるコンテは、アスリートの栄養コンサルタントとして地位を確立。合法的なサプリメントの開発で成功を収めた。1988年のソウルオリンピックではバルコ研究所がトップアスリートのサポートチームを組むまでになる。当時、陸上界では圧倒的な強さを発揮していたベン・ジョンソンのドーピング違反が大きな話題となったが、彼のコーチであるチャーリー・フランシスが「クリーンに走り負けるか、薬物を使って勝つか」と語ったように、競技の世界では運動能力向上薬の使用が当たり前のように広まっていた。
既存のドーピング検査が進化するなか、“次世代型”のステロイドが求められるようになり、これをビジネスチャンスと捉えたコンテは科学者パトリック・アーノルドとともに検出困難なステロイド「THG(テトラヒドロゲストリノン)」通称“クリア”の開発に成功する。
世界記録プロジェクトの裏側にあったコンテの野望とは
THGによって多くのトップアスリートが記録を塗り替え、金メダルを手にする。女子陸上界のスター、マリオン・ジョーンズは、トレーナーのトレバー・グラハムを通じてコンテと関わり、2000年のシドニーオリンピックでは5つの金メダルを獲得した。メジャーリーガーのバリー・ボンズも、薬物使用が疑われていた。彼のトレーナーであるグレッグ・アンダーソンが、コンテからTHGや「クリーム」を受け取っていたとされる。ただし、コンテ本人はボンズと直接、会話したことはないと証言している。元世界記録保持者ティム・モンゴメリも、世界記録更新のためにコンテとプロジェクトを始動。グラハムとアンダーソンも加わり薬物投与のタイミングなどを細かく計画することで、記録更新を現実のものにしようとしていた。
コンテにとってはバルコ研究所の名を世界に知らしめるための戦略であり“クリーンな薬”でスポーツ界に新たな秩序を築こうとしていた。

告発によって暴かれたドーピングスキャンダルの全貌
バルコ研究所によるドーピングスキャンダルが明るみに出た最大のきっかけは、グラハムによる内部告発だった。
2003年、グラハムはTHGが含まれた使用済み注射器をアメリカ反ドーピング機関(USADA)に送りつけ、USADAは長い解析の末に新型ステロイドの存在を突き詰めた。告発を受けたFBIとIRSは、合同でバルコ研究所の家宅捜索を行う。そして、研究所内からは多くの薬物関連の証拠が見つかり、コンテ本人も拘束された。こうしてスキャンダルは世界中に知られることとなった。
2003年10月20日、モンゴメリを含む数十人の著名アスリートが大陪審に召喚される。モンゴメリはドーピングの関与を認め、自身が臨床試験もされていない薬物の「実験台にされた」と語った。この事件は、勝つためなら手段を選ばないスポーツ界の危うさと、そこに入り込むビジネスの闇を象徴するものとなった。バルコ研究所の製造したクリーンな薬は、フェアプレーの理想とはかけ離れた現実を突きつけた。

バルコスキャンダルから問われるスポーツの正義とは
この事件は、42件の起訴が申し立てられ、約40件が不起訴となった。当時THGなどの新型ステロイドは法律上「違法薬物」と明確に分類されておらず、アスリート本人が薬物と知って使用したことを証明するのにも証拠が不十分だった。ドーピング使用を認めたジョーンズは、メダルも剥奪されこの事件で唯一服役した。一方、ボンズは一貫して故意の使用を否定し続け、いまだに疑惑の渦中にある。
コンテの最終的な刑罰は、ステロイド供給の共謀罪と資金洗浄。禁錮4か月、自宅軟禁4か月と軽いものだった。コンテは自身の行為を、偽善に満ちたスポーツ界への警鐘だと言い「誰もがやっていたことを少し早く、巧妙にやっただけ」と語っている。アスリートや薬物提供者だけでなく、劇的な勝利や記録更新を求めるマスコミや観客の期待もまた、ドーピング文化を助長していた可能性はないだろうか。ルールを守る者が報われない社会の中で「正義」とは何かを問い続けなければならない。
Netflix映画『Untold: 衝撃のドーピングスキャンダル』2023年8月15日より独占配信中
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