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MLBはいつから「2番打者最強」となったのか?2013年にトレンドを変えたあのパワーヒッター

いまやMLBで「チーム最強バッターの証」だと言われているのが2番打者。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平を始め、今シーズンの2番打者には、前年度MVPを獲得するなどした有名なパワーヒッターがずらりとそろっている。一方NPBでは、2番に長打力は求められていないのが現状。「MLB’s ON FLEEK」#6より「最強打者・THE2番」に焦点を当て、元北海道日本ハムファイタース内野手で解説者の杉谷拳士らが「2番打者」の日米の違いについて分析した。※トップ画像出典/Getty Images

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MLBでは2番打者は「チーム最強バッターの証」

いまやMLBでは「チーム最強バッターの証」と言われているのが2番打者だ。

2番打者で思い浮かべる選手を聞かれた杉谷は「巨人なら川相さん」と話す。さや香の新山は「昔で言うとアライバ(荒木・井端選手)さん」と、読売ジャイアンツ時代の川相昌弘や、中日ドラゴンズ時代の荒木雅博、井端弘和を挙げた。3選手に共通するのはパワーヒッターでなく、チームバッティングに徹していた点だ。

一方、現在のMLBの「チーム最強の2番」に近い感覚の打者もいたという。杉谷は「ライオンズで栗山さんが2番を打っている時に、バントを一切しなかったのが、メジャーに近いスタイルだなと感じた」と、埼玉西武ライオンズ時代の栗山英樹のエピソードを明かした。

私にとって最強2番はデレク・ジーター

番組では「なぜMLBでは、2番が最強なのか?」「最強打者の証は4番じゃなかったのか?」 「なぜ日本で流行らないのか?」などの疑問を掘り下げた。

「私にとっての最強2番はヤンキースのデレク・ジーター元選手」だというMLBジャーナリストのAKI猪瀬は、MLBで超一流と言われる2番打者を紹介。大谷選手を始め、ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウト、セントルイス・カージナルスのポール・ゴールドシュミット、ニューヨーク・ヤンキースのフアン・ソト、テキサス・レンジャーズのコーリー・シーガーと、そうそうたるメンバーだ。5人の2023年本塁打数を合計すると155本。「平均で2番が31本打つ」というまさに驚異的なデータが出ている。

出塁率&長打率──全打順の中で最高のOPSはじき出す2番打者

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Source: Getty Images

さらに、興味深いデータも。AKI猪瀬によると「昨シーズン、2番打者が全打順選手の中で最高のOPSをはじき出している」。

「OPS (On-base Plus Slugging)」とは、打撃力を評価する略称で、出塁率 (OBP=オンベースパーセンテージ) と長打率 (SLG=スラッキングパーセンテージ) を足し合わせて算出されるもの。出塁率は、選手が打席で出塁する頻度を、長打率は打撃の長打力を示し、OPSが高いほどチームの得点に貢献する打者とされる。

2023年の打順別OPSは、2番打者が.785と3番.774、4番.767より高い。「MABでは2番がもっとも得点が取れる選手」(猪瀬)と、データでも「2番最強説」を裏付けた。

「2番打者革命」が起こったのは2013年

もともとMLBでも、最も優れた打者は3番か4番を打つのが定石だった。「革命」が起こったのは2013年と言われている。AKI猪瀬によると「1990年代から2000年初頭に強かったヤンキースでもジーターが2番に入ったことによって、ヤンキースの得点力・勝率がぐっと上がった。このジーターを超える存在が、2013年に2番に固定されたエンゼルスのトラウト選手。よりアグレッシブな2番が誕生した」とのことだ。

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Source: Getty Images

トラウト選手は、2番固定された翌年には36本塁打111打点を記録し満票でMVPに選出された。「優秀な打者を2番に置くと3番4番より回ってくる打席数も多いから、こういうトレンドになった」と、MLBではジーター&トラウト効果で打順のトレンドが変わったとAKI猪瀬は分析していた。

なぜ日本で流行っていないのか?

「なぜ、2番最強バッター戦法は日本で流行っていないのか?」

杉谷氏は「日本の戦い方は(MLBとは)ちょっと違う。アメリカは下位打線でもホームラン打ってくるバッターいますが、日本は3番、4番にチャンスをつなげられる選手を2番に置く。日本は下位打線がそこまで強くないですから」と日米の違いを強調した。

2023年のNPBデータでも、OPSは3番、4番が最も高く、セ・パリーグともに2番打者のOPSは6番目となっている。

「ちなみに、2023年にNPBの2番が記録したバント数は245MLBではわずか28」と、AKI猪瀬が語る。日米では、2番打者の役割が全く違うことが、数字でも明らかになった。


『ABEMA MLB’s ON FLEEK』#6「ナ・リーグ開幕戦1カ月通信簿」より

配信日:2024年5月24日(金) 12:00 〜 12:15 毎週金曜に配信
内容:日本人選手の見どころ&独自の情報などMLBをもっと見たくなる情報を週1で発信。 

※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています