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俳優、レゲエDeeJay、陶芸家、そしてゴルファー。多彩な表現者“窪塚洋介”が語る「今を生きる」哲学

俳優、レゲエDeeJay、陶芸、ファッション、日本酒――さまざまなジャンルを横断し続ける窪塚洋介が、来年ついに芸能生活30周年を迎える。国内外で多彩な表現を追求してきた彼が今回語るのは、“スポーツ”との向き合い方。幼い頃に「キャプテン翼」に憧れて始めたサッカー、青年期に挑んだサーフィン、そして今、新たに夢中になっているゴルフまで。人生の節目ごとに触れてきたスポーツは、彼の中で一貫したテーマとして根付いている。 「今を良く生きる」――その信念を掲げ、多様なスポーツから学んだ“ゆるく深い”哲学に触れることで、スポーツが人生にもたらす新たな魅力を発見できるだろう。窪塚洋介流の自由で自然体なスポーツ観が、私たちに新しい視点をもたらすはずだ。※トップ画像撮影/松川李香(ヒゲ企画)

IconIppei Ippei | 2024/11/21

窪塚洋介が語る“ゆるく深い”スポーツとの向き合い方

― スポーツとの出会いはどのような感じだったんですか?

最初のきっかけは、小学生の頃に読んだ「キャプテン翼」だったんです。サッカー漫画として有名ですが、当時、単行本を買ってもらって夢中で読んでいましたね。キャプテン翼に憧れて、親にサッカーボールをねだって買ってもらい、それを持って公園に通う日々が始まりました。壁に向かってボールを当てたり、友達と蹴り合ったりしているうちに、スポーツが自分にとって欠かせないものになっていったんです。そう考えると、これが自分の「原体験」だったんでしょうね。

実は、もっと小さな頃から体を動かすのは好きで、幼稚園時代には体操クラブに入っていましたし、小学校ではソフトボール、中学に上がるとバレー部とサッカー部に所属していました。でも、途中でサッカーをやめてバレーに専念したりして、自分でも「何にハマるのか」はまだ試行錯誤していた感じです。

高校に入ると水泳部に入部したんですが、実際には漫画「稲中」のキャラのように(自分で言うのもなんですが)あまり真面目にやっていなかったですね(笑)。

それからは部活もやめて“帰宅部”になり、放課後は友達と遊んで過ごしていました。そうして迎えた高校生のある日、友人に誘われてサーフィンを始めることになったんです。海で波に乗る感覚はこれまでのスポーツとは全然違っていて、一気に夢中になりました。

― 当時のサーフィンって、今ほど盛り上がっている感じではなかったですよね?

当時、サーフィンは今ほどの大ブームというわけではなかったんですが、ローカルのサーファーやショップはしっかりと存在していました。

有名どころで言えばムラサキスポーツのような大手もありましたし、地元の小さなローカルショップも点在していて。今みたいに「サーフィン文化が盛り上がってる!」といった感じではなかったんですけど、むしろだからこそ、コアな層がかっこいいカルチャーを静かに築いている印象がありましたね。

なんかこう、ブームに流されない“本物”の雰囲気が根付いている感じで、当時の自分にとっても、それがすごく魅力的だったんです。

「波に乗るってかっこいい」軽い憧れから始まった、サーフィン体験

― サーフィンには「地球と一体化する」という表現もありますが、窪塚さんはどんな感覚でしたか?

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

正直、そこまで高尚な思いでサーフィンを始めたわけじゃないんですよ(笑)。単純に“波に乗るってかっこいいな”って思ったし、サーフィンしている人たちの雰囲気も魅力的で。そういう軽い憧れがあって始めた感じです。どちらかというと、ちょっと“軽いノリ”ですよね。

でも、実際に波に乗る瞬間ってすごくアドレナリンが出るし、楽しいんです。波と一体になる感覚も少しは分かる気がするんですが、そこまで“地球と一体化”って境地に達する前にやめちゃったんで、もし続けていたら、そういう境地にもたどり着けたかもしれませんね。

― その頃には俳優業も始めていたんですか?

そうですね。中学3年の卒業のタイミングで芸能界に入っていて、いわば「片足を突っ込んでいる」ような状態でした。だから、サーフィンをしていた時期と俳優業は、うまく両立していた感じですね。

― サーフィンと俳優業を両立していたことで、何か相乗効果はありましたか?

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

サーフィンはあくまで趣味、というか気分転換としてやっていましたね。とはいえ、普段は会わないような人たちと知り合えたり、普段と違う空気に触れる機会にはなりました。けれど、深くコミュニティに入り込んだわけでもなくて、“サーフィンを通じて人脈が広がった”というほどではなかったですね。今思えば、もう少しサーフィン仲間とのつながりを大切にしてもよかったかな、なんて少しもったいなく思うこともあります。

当時、ストリートで遊んでいてもスケートボードに熱中するわけでもなく、地域のコミュニティにどっぷり浸かっていたわけでもなくて、自分のペースで自己満足する程度に楽しんでいました。だから俳優業に直接的なフィードバックがあったかというと、そこまではなかったですね。ただ、サーフィンは純粋にリフレッシュにはなっていたと思います。

サーフィンで波に乗る感覚が直接演技に生かされることはないかもしれませんが、もし『サーファー役』が来た時には『ああ、こういう感じか』って、思える程度の体験にはなっているかもしれませんね。

「根を張るような安定感」窪塚洋介の45歳ボディメンテナンス

― 今年で45歳ですが、変わらない体を保つためにどんな工夫をしていますか?

まず整骨で骨のバランスを整えてから、ピラティスで可動域を広げて、それから柔軟も兼ねた筋トレで体幹を強化して、最後にワークアウトに入るという流れですね。一気にやるというよりは、循環を意識して無理なく続けています。このルーティンを取り入れてから、まるで地面にしっかり根を張った木みたいに、体に安定感が出てきたと感じますね。

― 窪塚さんの作品を長年見続けてきましたが、その唯一無二の表現力に強く惹かれます。その感性の源はどこにあるのでしょうか?

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

そうですね、元々の感性もありますが、成長の中で吸収してきたものも大きいと思います。人間って、まずは親や兄、友人といった身近な人の真似から始まって、そこから少しずつ自分なりのセンスができあがっていくものですよね。その『サンプリング』の過程で、自分らしさが形作られていく感覚があります。それに加えて、自分が触れてきたカルチャーの影響も大きいですね。

特に母の影響で幼い頃から本や言葉に触れてきたので、言葉に引きつけられる感覚がずっとありました。言葉には『言霊』としての力を感じる瞬間があって、僕の表現の核は、体を動かすというよりも、まず言葉から生まれているんです。

窪塚洋介が語る「言葉」の力―表現の核にある“言霊”の美学

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Photography: Rika Matsukawa (Hige Kikaku)

― 言葉からインスピレーションを受け、それが窪塚さんの自己形成の基盤になっているイメージですね。

ええ、言葉には本当に大きな力があると思っています。たとえば『勇気』や『根性』といった言葉がなければ、それを自分の中で育てたり発揮したりするのは難しいかもしれないですよね。言葉があるからこそ、その意味が自分の中で生まれ、エネルギーになるんです。僕にとって、言葉は自分を導いてくれる存在ですね。

よく言われることですが、日本語は花の種類ごとに『最後の表現』が違うんです。たとえば、椿は『落ちる』、梅は『こぼれる』、菊は『舞う』、そして牡丹は『崩れる』。わざわざ使い分けているところに、日本語の美しさを感じますね。

― 確かに、言葉を知らないと、理解したり感じたりすることも難しいですね。

そうなんです。例えば『人に優しくしなさい』と言われても、その言葉の意味がわからなければ、何をどうすればいいのか理解できないですよね。『はじめに言葉ありき』というように、言葉は人間のアイデンティティの大きな部分を支えているものだと思います。僕は言葉に敏感な方なので、その力が自然と表現にも表れているんだと思いますね。

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窪塚洋介、ゴルフに目覚める 「絶対やらない」から週3回のゴルフ漬けへ、内観と成長の物語

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窪塚洋介
1995年にドラマ「金田一少年の事件簿」で俳優デビューし、2000年にドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で注目を集める。2001年公開映画「GO」で第25回日本アカデミー賞新人俳優賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。2017年にマーティン・スコセッシ監督作 『Silence -沈黙』でハリウッドデビューを果たし、2019年に公開されたBBC×Netflix London制作の連続ドラマ「Giri/Haji」でもメインキャストを演じ、2024年はHBO Max×WOWOW共同制作ドラマ『TOKYO VICE Season2』に出演。12月6日からDMM TVにて配信予定の「外道の歌」でも主演を務めるなど、国内外で活躍。映画を中心に舞台でも活躍するほか、音楽活動、モデル、執筆と多彩な才能を発揮。カラダにいい、ココロにいい、ホシにいい。をテーマにした自身の番組『今をよくするTV』をYouTubeにて配信中。また、ゴルフアパレルブランド「8GSHOOT」、日本酒「福霧」などのプロデュースも手がけるなど、活動の幅をさらに広げている。


Hair&make:Shuji Sato(Botanica make hair)
Photo:Rika Matsukawa