
名将・栗山英樹誕生までの足跡 「野球をやるのが怖かった」“非エリート”として味わった苦境と掴んだ日本ハムでの歓喜
2023年に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表の侍ジャパンを3大会ぶりの世界一に導いたのが栗山英樹さん。現役時代はヤクルトスワローズで7年間プレーした栗山さんは、2012年から日本ハムファイターズを率いて10年で2度のリーグ優勝、16年には日本一に導くなど、名将としてのキャリアを築いてきた。配信サービス「Lemino」のドキュメンタリー番組『Number TV』で栗山さんの口から語られたのは、“非エリート”として積み重ねた現役時代や日本ハムの指揮官として苦闘した日々であった。※トップ画像提供/NTTドコモ Sports Graphic Number

テスト入団のヤクルトで積み重ねた日々
1961年生まれの栗山さんは東京学芸大を経て、83年にヤクルトスワローズにテスト入団。84年から90年までプレーし、89年にはゴールデングラブ賞に輝くなどの活躍を見せた一方で、7年間プレーしたプロの舞台では苦しい状況を経験することも多かった。
番組内で栗山さんの前に置かれたのが現役時代の練習中に撮られた1枚の写真。1年目は1軍出場2試合、2年目は29試合とプロの世界でもがいていた日々について栗山さんが振り返る。
「これはファームでボロボロになっている時よりもちょっと出だしたくらいだと思うので、1番いい時だったなと思います。結果が出なくてもがき続けているなかで、とにかくヒットを1本でも打ちたくて、どうやったら打てるんだろうともがきながらバットを振り続けている。自分の中ではあの時代が1番よかったなと思います」
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苦境のなか出会った恩師
現役時代の栗山さんを支えた恩師として紹介されたのが内藤博文さん。元ヤクルトの2軍監督を務めた内藤さんは、栗山さんが「全然ダメな僕を信じてくれた唯一と言っていいくらい。誠心誠意僕をなんとかしようとそばにいてくれた」と明かしたように、プロ生活で葛藤していた日々を支えた存在である。
栗山さんが“挫折地点”として言及したのがドラフト外として入団して味わったプロの世界。
「想像を超えていましたね、キャッチボール、ペッパー、ノックが全く違うので、これはどうやったらこのレベルに自分はいくのだろうという。自分に対しての疑問とか不安とか、そこから本当に野球が下手くそになっていた」と最初にぶつかった壁について明かし、「人は自分がダメになった時にどれだけダメになるのかという経験を僕はするんです」とプロ入りの後の日々について語った。
「野球をやるのが怖かった」と当時の想いを吐露した栗山さんの唯一の拠り所となっていたのが内藤さん。栗山さんに対してかけられた「人と比べるな」という何気なく放たれたこの一言が栗山さんにとっては支えになった。
「人の心に対して本当に寄り添う心や、『こいつのためになんとか信じてあげる』とか、愛情を注ぐとか。そういうのに出会えなければ本当に1、2年で終わっていたと思います」と語った栗山さん。その後の栗山さんの監督キャリアに結びつく選手と指導者の関わりを、現役時代に出会った内藤さんとの日々で吸収していたように感じられた。
スポーツキャスターなどを経ての監督抜擢
栗山さんは1990年の現役引退後はスポーツキャスターや大学教授を務めるなどグラウンド外から野球界を見守る日々が続いた。
そんななか、2011年のオフに梨田昌孝前監督の後任として日本ハムの監督に就任。それまでプロ野球でのコーチ経験のなかったなか抜擢となった栗山さんは、50歳を過ぎて迎えた日本ハム1年目のシーズンは不安と隣り合わせの日々だったという。
「サインひとつ出したとしても選手、コーチ、スタッフからは『台座に乗せられてみんなが見定めている状態』だった。一つひとつ考えましたし、結果を出すための根拠だったり理論だったりはなんとなくが一切許されない。僕にとってはすごく大きなもので、逆に言えば2度とあの年には戻りたくない」
そんななか、栗山さんは就任1年目の2012年にいきなりリーグ優勝を成し遂げる。ダルビッシュ有が前年にメジャーリーグへ移籍し、絶対的エースを失ったなかでの船出となったが、斎藤佑樹を開幕投手に指名し、中田翔を日本の4番として育てるべく不調の時期があっても固定し続けるなど、栗山さんの選手を信じて使い続けるというらしさが垣間見えたシーズンでもあった。
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栗山さんは就任1年目でのリーグ制覇に対しては、「(優勝は)嬉しいんでしょうけど、ホッとした感じしかなかったです」と率直な想いを明かし、「周りも僕も『僕みたいな人がなんで監督に?』というのは思っていますけど、とにかく僕を信じて任せてくれた人にだけは裏切れない想いがあってやってましたから、迷惑かけなくてよかったなという感じしかなかったです」と振り返った。
その後、栗山さんは日本ハムでの10年のキャリアを経て侍ジャパンの監督に就任し、WBCで世界一に導くことになる。
「まさか僕が最初にテスト生として入団してプロに入った時を見てた人があそこで(大谷)翔平とWBCを戦っている映像を思い浮かべた人がいるかといったら誰もいない。人は変われるし、全ての人のなかにはすごいものがあって、それがいつその人にとって最高の場所に行くかは分からない」と語った。順風満帆ではなく、苦しい時期も経験してきた人生のなかで、矢印が変わり始めた監督キャリアのスタートであった。
"NumberTV" The point of failure - The reason I looked forward at that time
title:#5 栗山英樹
Release date:September 26, 2024 (Thursday) 0:00 ~ 24 episodes in total (scheduled to be distributed twice a month)
content:This documentary program focuses on the "failures" and "comebacks" of top athletes. In a special space (the Number Room) decorated with old photos, the athletes themselves look back on their lives and talk about moments of failure and the reasons they were able to move forward.