パリ五輪・日本人メダリストの活躍と注目の戦いを総括(大会14日目①)
現地時間7月26日に開幕したパリ五輪も、8月11日の閉会式をもって17日間にわたる熱戦に幕が落とされた。ここでは8月9日(日本時間8月9〜10日)の大会14日目にメダルを手にした日本人選手たちの活躍や、注目選手の戦いぶりを振り返る。※トップ画像出典/Getty Images
大会14日には、レスリング女子53キロ級で藤波朱理選手が金メダル、セーリング混合470級で岡田奎樹選手と吉岡美帆選手のペアが銀メダルを獲得した。
レスリング女子53キロ級 藤波朱理 金メダル
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中学2年生から続く公式戦の連勝記録を134に積み上げて初の五輪に臨んだ藤波朱理は、初戦で一昨年の世界選手権王者に輝いたドミニクオリビア・パリッシュ(アメリカ)と対戦した。実績のある相手に臆することなく果敢に攻めた藤波は、序盤からタックルなどでポイントを重ねて6-0とし、わずか2分間でフォール勝ちを決めた。続くフラン・バトフヤグ(モンゴル)との準々決勝では、一時は2点差を追いつかれる苦しい状況に追いつかれたものの、すぐさま得意のタックルから相手の背後に回り再び勝ち越すと、最後は8-2でフォール勝ちし、準決勝へと駒を進めた。準決勝では、前回大会銀メダリストの龐倩玉(中国、パン・キアンユ)と顔を合わせた。藤波は昨年10月に行われたアジア大会で勝利した相手に対し、圧倒的な試合を展開。開始1分30秒でバックを取って2点を先行すると、次々と得点を重ねて10-0とし、テクニカルスペリオリティ勝ちで決勝進出を決めた。
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そして悲願の金メダル獲得を懸けた決勝戦で藤波は、ルシア・ヤミレト・ジェペス・グスマン(エクアドル)と対戦した。世界ランキング1位の難敵に対しても臆することなく攻めた藤波は、開始わずか45秒でバックを取って2点を先取。1分40秒過ぎにも2点を追加するなど、巧みな攻撃でポイントを重ねて第1ピリオドを6-0で折り返すと、第2ピリオドでも次々と得点を重ねて10-0のスペリオリティ勝ち。世界一を決める舞台でも圧巻の強さを見せた藤波は、自身初の金メダルを獲得。中学2年生の時から続く自身の連勝も137に伸ばして大会を締め括った。
<パリ五輪の戦績>
1回戦:ドミニクオリビア・パリッシュ(アメリカ)/○6-0
準々決勝:フラン・バトフヤグ(モンゴル)/○8-2
準決勝:龐倩玉(パン・キアンユ、中国)○10-0
決勝:ルシア・ヤミレト・ジェペス・グスマン(エクアドル). ○10-0
セーリング 混合470級 岡田奎樹・吉岡美帆ペア 銀メダル
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今大会から装いを新たにし、男女混合種目として実施されたセーリングの混合470級に岡田奎樹・吉岡美帆ペアが出場し、銀メダルを獲得した。なお同種目としては、関一人・轟賢二郎ペアが銅メダルを獲得したアテネ五輪以来、20年ぶりの快挙となる。
セーリングの470級は、2選手がヨットに乗りながら「マーク」と呼ばれる海面上に設置されたブイを回りながら順位を競う種目で、まずは8レース(※)の予選が行われた後に得点上位10選手によるメダルレースが行われ、最終順位が決められる。
(※)本来ならば10レースの合計で競われるが、無風によりレースが実施できない状況が発生し、8レースで順位が決められた。
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予選8レースを合計35点(※)の3位で通過した岡田・吉岡ペアは、メダルレースに駒を進めた。
(※)1位=1ポイント、10位=10ポイントといった形で、各レースの着順によって与えられるポイントの合算によって得点は決められ、最も低いレ―スのポイントは除外される。なおメダルレースだけは着順による得点が倍に設定されている。
得点が倍になるメダルレースに挑んだ日本の岡田・吉岡ペアは、首位のオーストラリアを6差で追う展開の中で、序盤から安定したレースを展開。メダルレースを3位で終えた日本チームはスペインを逆転し、最終順位2位で競技を終えて銀メダルを獲得した。
陸上男子110mハードル 村竹ラシッド 5位
男子110mハードルに出場した村竹ラシッドは、日本勢として同種目で初めて決勝に進出し、日本人の五輪最高記録を塗り替える13秒21のタイムを記録して5位入賞を果たした。
予選を13秒22の組1着で走り終えた村竹は、準決勝では13秒26とタイムを落として4位に。上位2着に入ることはできなかったが、タイムで上位8名に入って決勝への進出を決めた。
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決勝に臨んだ村竹は、中盤まではスピードに乗った伸びやかな走りを見せたものの終盤に失速し、13秒21の5位でフィニッシュ。日本勢初のメダル獲得も期待されたが、13秒09で銅メダルを手にしたラシード・ブロードベル(ジャマイカ)の記録には惜しくも及ばなかった。
陸上女子1500メートル 田中希実 準決勝敗退
陸上女子1500mの日本記録保持者(3分59秒19)で前回大会で8位入賞を果たした田中希実は、さらなる上位進出を目指して準決勝に挑んだものの、3分59秒70のタイムで全体11着に終わり、2大会連続の決勝進出を逃した。
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予選1組に登場した田中希実は、ラスト1周で後続の選手と接触。その影響により大きく順位を落とし、4分4秒28の11着でレースを終えた。準決勝に進出できる上位6名以内に入ることができず、本来ならば予選敗退となるところだったが、接触による救済措置が認められ田中は準決勝へと駒を進めることとなった。
準決勝に進んだ田中は、序盤からハイペースな走りを見せる先頭集団を猛追。順位こそ8番手付近ながらも、自身が持つ日本記録更新も狙える走りで上位進出のチャンスを窺ったが、終盤に突き放されて11着でフィニッシュ。3分59秒70の好記録だったが、決勝進出は逃すこととなった。
陸上女子100mハードル 福部真子選手 田中佑美選手 準決勝敗退
日本記録(12秒69)を持つ福部真子と、日本人選手ではこれまでに4人しか記録出来ていない12秒台のタイムを持つ田中佑美が陸上女子100mハードルの予選に挑んだ。
福部真子選手
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予選1組に出場した福部は、伸びやかな走りを見せ12秒85の好記録をマークしたが、3着に100分の1秒差で4着に。4着以下の選手の中で上位3番目のタイムだったことが功を奏して、ギリギリで準決勝進出を決めた。
続く準決勝で福部は、のちに同種目の金メダルを獲得することとなるマサイ・ラッセル(アメリカ)ら、メダリスト3人が顔を揃える準決勝3組に登場。日本人の五輪最高記録となる12秒89で駆け抜けたものの5着に終わり、上位2着以内もしくは3着以下のタイム上位者2名に出場権が与えられる決勝進出は逃した。
田中佑美選手
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予選2組に登場した田中は、鋭いスタートで幸先の良いスタートを切ったものの、レース途中で7つ目のハードルに足が引っかかってしまい、12秒90の5着でフィニッシュ。準決勝進出を懸けて敗者復活ラウンドを戦うこととなった。
敗者復活ラウンドに出場した田中は、準決勝進出に向けて上位2着以内に入らなければならない状況の中、序盤から攻めの走りを披露。軽快な走りで先頭争いを繰り広げて12秒89の2着でゴールし、準決勝進出を決めた。
準決勝へと駒を進めた田中はまずまずのスタートを切ったものの、5つめのハードルで足が引っかかってしまうなど、徐々に先頭に離されて12秒91の7着でフィニッシュ。決勝に進出することはできなかった。