
あの一球を振り返る―カブス・今永昇太が大谷翔平にストレートを投げた理由
東京ドームで幕を開けた今季のメジャーリーグ。ロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスによる開幕戦は、昨季のリーグMVP・大谷翔平がいかに活躍するかで持ちきりになっていた。しかし、そんな空気を切り裂いたのはカブスの先発マウンドに上がった今永昇太であった。今永は大谷を見事に2打席ともノーヒットに抑えたが、勝負を決定づけたのは初球。なぜ今永は大事な初球にストレートを選んだのか?対戦を振り返りながら考察する。※トップ画像出典/Getty imges

エース・今永は記念すべき初球にストレートを選択
メジャー移籍1年目の昨季は15勝3敗という好成績をマークして、早くもチームのエース格に成長したカブス・今永昇太。
そんな今永はドジャースとの記念すべき開幕戦に先発投手として登板。1番・DHを打つ大谷といきなり対決することになった。その第1球は、真ん中高めに決まる149キロの浮き上がってくるストレートだった。
この初球には隠されたドラマがあった―。
昨季は2度対戦して5打席ノーヒットに抑える
昨季、今永は大谷と2試合で5打席対戦。2024年4月7日の初対戦では、ストレート中心の配球で組み立てて、9球目に152キロのストレートで空振り三振を奪った。さらに2打席目もストレートを大谷が打ち損じ、サードファールフライに打ち取った。2度目は9月10日に対戦。今永は、調子を上げていた大谷に対して1打席目は外角高めのストレートを打ち損じさせてショートフライ。しかしながら、残り2打席はスライダーとスプリットのみを使う配球で大谷を凡退させた。
なぜ、今永は9月の対戦では変化球を多投したのか。それにはデータが基づいていた。

一昨年まではサウスポーのストレートが苦手だった大谷
2023年まで大谷はサウスポーが投じる150キロ以上の速球を苦手にしており、打率は1割台。しかし大谷も進化を続けており、2024年は同じボールから3割以上の数字を残していた。そこを見抜いたカブスバッテリーはストレートを控えめにしていたのだった。
では、シーズン明けの開幕戦では初球をどう攻めるのか? マスコミもその配球に注目した。
そんななか、今永は試合前の会見で「初球に何を投げるかを教えるのはじゃんけんで『チョキを出すよ』というようなもの。1球目は言えないけど25球目くらいなら言えます」と煙を巻くような発言でクールに交わす。この発言を聞いたかどうかは定かではないが、大谷も初球にどんなボールが来るか読めていなかった。
運命の初球は高めに決まる149キロのストレート
そんな探り合いのなかで迎えた東京ドームの開幕戦。すさまじい歓声が大谷に注がれる緊張感の張り詰めた場面で今永が選んだ初球は、真ん中高めのやや外に決まる149キロのストレートだった。判定はストライク。大谷は予想と外れたのか、ややタイミングが合わなかった仕草で見送った。もしくはボールと判断したのかもしれない。いずれにせよ初球にストライクを取ることができた今永は余裕を感じたはずだ。
この一球で勝負は決まった、と―。
第1打席はボテボテのセカンドゴロに仕留める
大谷の中で迷いが生じていたかもしれない。昨季、最後の対戦は変化球中心だった。この後の配球は変化球で交わしてくるのではないか…。しかし、今永は1-1から懲りずに150キロのストレートを投じた。力んだ大谷は完全に詰まらされてセカンドゴロに打ち取られてしまう。初球にストレートがあったからこそ、「ここはストレートはない」と大谷は思ったのかもしれない。
甘いスイーパーを捉えるものの、セカンドライナーに
3回に迎えた2度目の対決も今永に分があった。1ボールからまたも渾身のストレートを投じると、大谷はフルスイングで空振り。今度は大谷の脳裏にストレートが残ったままだった。ここで今永はスイーパーを投じる。やや甘めに入ったがここまで効果的にストレートを見せていたこともあり、大谷の打球は上がらず、鋭いセカンドライナーに終わった。
初球に見せたストレートがあったからこそ、この結果に繋がったのだろう。こうして今永は、昨季の配球と初球のストレートによって大谷を封じ込めたのだった。
次戦の対戦ではどのような駆け引きが織りなされるのか? 世界を代表する打者と投手の一騎打ちに今後も注目だ。
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