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西村菜那子が語る、第101回箱根駅伝の展望ー3強による優勝争いの行方と三冠誕生の可能性

西村菜那子は長野県出身で、2015年から22年までNGT48のメンバーとして7年間にわたり活動。在籍中から「駅伝に詳しすぎるアイドル」として注目を集め、駅伝や陸上関係のメディアに多数出演するなど、豊富な駅伝知識を活かして活躍の場を広げてきた。今回キングギア では正月の風物詩として行われる第101回箱根駅伝を控えたなかで西村さんにインタビューを実施。10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を終えて、3強による優勝争いが予想される今年度の戦いについて聞いた。※トップ画像撮影/長田慶

Icon 30716468 1048529728619366 8600243217885036544 nYoshitaka Imoto | 2024/11/26

出雲、全日本駅伝に見られた“共通点”

ーー三大駅伝があるなかでも箱根駅伝は特別なブランド力があってメディアの注目度も高いと思います。西村さんが思う箱根駅伝の魅力はなんですか?

箱根駅伝がほかの駅伝と比べて違うなと思うのは、そのチームで走るのが最後の大会ということ。4年生もこの箱根が最後で、実業団に行くランナーもいると思うんですが、引退するランナーもいる。少なくともそのユニフォームを着て走るのはこの大会が最後だということが多いので、ほかの大会に比べて箱根駅伝がより神格化されているのは、そのチームで走るのが最後だということが一番大きいんじゃないかと思います。

ーー今年度の箱根駅伝についてですが、11月の全日本大学駅伝はどうでしたか?

今回の全日本と10月出雲駅伝では上位の6校が全く一緒だったんです。國學院大、駒澤大、青学大、創価大、早稲田大、城西大。こんなにも上位層が変化しない駅伝はあまりないと思っていて、それくらい上位チームが今まで以上に強くなっているということを実感しています。

ーー今年の出雲、全日本をとった國學院という大学はどう見てますか?

國學院大はどこのチームよりも「駅伝で勝ちにいく」という気持ちが強いのかなというのは取材をしながら感じていて、前田康弘監督にインタビューをした時に「駅伝に勝つための練習をしている」と言っていたんです。

この1年間で選手は箱根だけを走っているわけじゃなく上半期はトラックシーズンなので、普通に5000メートルとか1万メートルとかハーフマラソンを走っているわけなんです。國學院はそれも大事だけど、何よりも駅伝の練習をしている、駅伝を獲りに行っていると言っていたので、國學院は駅伝に懸ける想いがすごく強いなと思います。

ーー今年は青学大、駒澤大との3強という見られ方がされてるなかで、ほかの大学と比べた國學院大はどうですか?

つなぎの区間を走る選手の走力がすごいです。エースの選手は各校にいるんですけど、エースの選手の実力はそれほど変わらない。エース選手の実力は変わっていなくて、全日本でいうと8区間あったんですけど、7、8番目の区間の選手の走力が國學院大は強いんです。中間層がすごく強くなってるのが國學院で、それは駅伝でも活かされていると思います。

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Photography/Kei Nagata

駒澤大・山川拓馬が見せた激走

ーー駅伝というスポーツはどうしてもエースに目がいきがちで、エースが強いところが強いのかなと思ってしまいます。そこまでうまく橋渡ししていくことも勝つためには求められますか?

とくに國學院大のエースでキャプテンの平林清澄選手はみんなをまとめるのがすごく上手みたいで、監督に「チームの雰囲気がすごいですよね?」と聞いたら「平林がなんとかやってるんじゃないですか?」と言っていたんです。監督もそれだけ平林選手に信頼を置いているのも感じましたし、チーム力という意味でも全体をよくしているというのを國學院を見ていて感じます。

ーー平林選手は大阪マラソンで優勝していますが、西村さんは彼の1年生からの成長を見守ってきた感じですか?

私が初めて彼の走りを見たのは彼が1年生の時の出雲駅伝だったんです。その時に私はフジテレビで出雲駅伝の副音声を柏原竜二さん、神野大地さんと担当していたんですが、その時にみんなが平林選手に対して「この子ガリガリだけど大丈夫?」と言っていて(笑)

小柄だし、すごく痩せている感じだったんですけど、どんどん追い上げていく姿を観て、神野さんが「この子すごいね!」と言っていました。神野さんも、もともとすごく華奢な方だったので通じるものを感じたのか、現場でも「この子は今後強くなりそう!」みたいな感じになっていて、本当に強くなっていった感じです。

ーー全日本のレースでいうと、駒澤大は最初に遅れて最後に捲った感じでした。駒澤はいかがですか?

私が感動したのがアンカーを走った長野県出身の山川拓馬選手が時計を外して走っていたことです。それはなぜかというと、時計を気にしていたらペースを気にしちゃうじゃないですか?それにとらわれていたら意味がなくて、山川選手は前を追うだけ。彼は青学大と2分37秒差だったんですが、世間的には3位は確定だったんです。

でも、彼の目は優勝を狙う目をしていたし、優勝を狙う走りをしていたのに感動しました。残念ながらもともと3位だったということもあり、途中経過があまりテレビに映らなくて状況が読めなかったんです。ラスト2キロの直線で突然山川選手が青学大を抜かした時は「なんでカメラ映さないの?」という感じでした(笑)

ーー駒澤大のチームとしての力は全日本を観ていかがでしたか?

今回篠原倖太朗選手がキャプテンですごくいいキャプテンなんですよ。ただ、主力の佐藤圭汰選手という3年生が怪我で離脱しているというのがひとつの懸念点でした。絶対的エースのひとりである佐藤選手が出雲、全日本と走っていなくても2位に持っていく力は流石だなと思います。

ーー今回3位に入った青学大についてはいかがですか?

青学大は選手のポテンシャルでいったら圧倒的ナンバーワンなんですよ。エースの数も1番多いんです。ただ、全員の足並みが揃わない部分があってこの結果になってしまってるとも思うので、全員が調整して本調子が出せたら青学がぶっちぎりで勝てると思います。その姿を箱根では観たいなと思います。

ーー青学大は近年の箱根を象徴する大学ですね。この大学について思うことはありますか?

選手が自立している子が多いなと思っていて、原晋監督は選手をスカウティングする時に1番気をつけてるのは自己プレゼンが上手いことだと言っていました。自分のことを説明できて、「僕はこれがしたくてこういう人間です!」というのを喋れる子をスカウティングしている。それだけあって、青学大の選手にインタビューをすると、みんな話すのが上手なんです。

あとは監督がメディアに出る機会が多く、なかなか練習に顔を出せないこともあるんですね。なので、選手が自立しているという意味では青学が私は1番しているのかなと思っているんです。青学は「ちょっと派手で、いい意味でチャラい」みたいなイメージを持たれることもあるのですが、確かに明るいことは間違いないですが、それ以上にしっかり自立している選手が多いという印象があります。

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Photography/Kei Nagata

駅伝ファンが期待する東洋大4年生ランナー

ーーそのほかの大学で気になるところはありますか?

立教大です。優勝争いはさっきの3強だと思うんですけど、シード争いで気になっているのは立教です。立教は前回の箱根は14位なんですけど、今年の箱根駅伝の予選はトップ通過していて、その2週間後の全日本駅伝では7位に入って初の全日本駅伝でシードを獲得しているので、かなり急上昇の大学ではあります。この立教が今回シード争いに加わって、トップ10に入ったら面白いなと思います。

ーー今回の箱根で頑張ってほしい「推し選手」はいますか?

東洋大の石田洸介選手という4年生のランナーで、中学時代1500メートル、3000メートル、5000メートルの3種目で中学生記録を持ってるんですよ。高校生で5000メートルの記録保持者として東洋大に入ったスーパールーキーで、1年生でも出雲、全日本駅伝と区間賞をとっていたんです。

そこから怪我とかもあってあまり駅伝に出れなくて、去年は1年間ほぼ休養をしていた状態で、4年生の今年、全日本で約2年ぶりに駅伝に出たんですけど、6区に入って21位だったんです。彼はスター性というか、走ってると空気が変わるような気がしていて。彼はラストの箱根で意気込みも高まっている状態だと思うので、彼が走ってくれたら嬉しいなと思います。これは私の意見でもありますし、駅伝ファンみんなが思っていることだと思います。

ーー今年は國學院大、駒澤大、青学大の3強による優勝争いとされていますが、箱根でもこの3校が抜けているという見方でいいですか?

箱根はほかの駅伝と違って10人で20キロを走らないといけないので、そもそも20キロをしっかり走れるランナーを10人集めることが難しい。やっぱりこの大学が頭抜けているのかなと思います。

ーーそのなかでも國學院の三冠の可能性はどのくらいあるとみてますか?

願望ですが、とってほしいなと思っています。ただ、順調に行くと青学大なのかなと思ったりもするんです。國學院大はまだ箱根で優勝したことがないので、國學院には優勝してほしいなという私の想いはあります。

ーーここ最近だと2022年度に駒澤大、16年度に青学大が三冠を達成している一方で、出雲、全日本をとっていても箱根は逃してしまうというケースもみられます。三冠をとった大学ととっていない大学、箱根で最後に勝ち切るにはどういうところで差が出るんでしょうか?

やっぱり、特殊区間をしっかり対応できる選手がいるかいないかなんじゃないかと思います。箱根の山を走る選手は1年間ずっとその練習をしていると聞きますし、そういう箱根の山下りの特殊区間に対応できる選手が育っているかいないかは大事かなと思っています。

ーーそういう意味を含めて3校を並べてみるといかがでしょう?

現実を見ると青学大、駒澤大、國學院大だと思いますが、願望だと國學院、駒澤、青学の順です。山登りが強いのはおそらく駒澤なんですが、ただそれは現時点で目に見えている状況であって、青学、國學院は隠している可能性もあります。この2校がそこはどうなのかという点には注目したいと思います。

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Photography/Kei Nagata

西村菜那子
1997年8月11日、長野県出身。元NGT48のメンバー。“駅伝に詳しすぎるアイドル”として、その知識を活かし陸上や駅伝関連のメディアに多数出演。メディアでのコラム連載も担当している。さらに自身の名前を冠したWebマガジン「#西村駅伝」を2023年3月よりスタート、自ら取材を行いコンテンツ配信を行っている。長野県長野市出身として2021年4月には「長野市城山動物園」の親善大使、同年9月には「NAGANO未来デザインアワード」のアンバサダーに就任。


Hair&make:Anri Toyomori (PUENTE.Inc)
Photo:Rika Matsukawa