
「僕はもう、ここまで…」どん底から世界一への飛翔を支えたものー男子フィギュア・宇野昌磨がリンクで味わった“悪夢”
平昌五輪・北京五輪の男子フィギュアスケートメダリスト宇野昌磨。日本男子初となる世界選手権連覇を成し遂げた宇野選手だが、その競技人生は決して順風満帆と呼べるものではなかった。配信サービス「Lemino」のドキュメンタリー番組『Number TV』にて宇野選手が、華々しい栄光の陰に隠れた「過酷な試練」について語る。※トップ画像:出典/VCG via Getty Image

トリプルアクセルが飛べない…挫折し続けた“5年”から生まれた大技
宇野選手は、浅田真央さんとの出会いがきっかけで、5歳からフィギュアスケートを始めた。その後は全日本ノービス4連覇など、天賦の才を早々と開花させるなか、宇野選手自身が「失敗が体に染み込んでしまった、一番苦しかった時期」と振り返る期間がある。それが、小学校高学年から高校2年までの5年間だ。宇野選手は高校2年生まで、高難度ジャンプ“トリプルアクセル”を一度も成功させられず、もがき続けた。男子のトップスケーターでは必須とも呼べる技に苦戦し、あせりが募る。しかし、ジャンプの回転速度を評価していた2014年四大陸選手権王者・無良崇人選手から「4回転をやってみればいい」と助言を受けたことが「挫折」から前へ進む、大きな転機となる。
「今となっては4回転が飛べて当たり前のような風潮がありますけど、当時は4回転を飛べたら世界のトップと言われるほど飛べる人が少なかった。無理だとは思いながら4回転の練習を並行して始めてみると、1ヶ月ほどで飛べるようになった。そこからは楽しかったですね」
4回転トウループという大きな武器を得た宇野選手は、後にトリプルアクセルも習得。勢いに乗ったまま世界ジュニア選手権を制し、力強く跳躍していく。

提供/ NTTドコモ Sports Graphic Number
「このまま音楽が流れなければいいのに…」どん底の2018-2019シーズン
2018年の平昌オリンピックにて銀メダルを獲得した宇野選手は、さらに“上”のステージを目指し、勝ちにこだわり始める。しかし熱い思いとは裏腹に成績は振るわない。そこで、停滞から抜け出すために、幼少時代からの恩師と袂を分ち、たった独りで自分のスケートと向き合う道を選択した。もともとトレーニングメニューを自身で考えていたこともあり、コーチ不在であってもスキルアップは不可能ではないという思いも後押しになった。
言いしれぬ不安を打ち消すために練習量を増やし、最大限の努力を重ねて臨んだGPフランス杯では、ジャンプをことごとく失敗する。結果、シニアワーストの8位で大会を終えた。「試合のスタートポジションに立ったときに『このまま音楽が流れなければいいのに』というメンタルになっていた」と、宇野選手は当時の心境を明かす。落ちていく“恐怖”に押し潰され、引退も頭をよぎったという。
ステファン・ランビエール氏との出会いで、再び世界を席巻
人生最大の崖っぷちに立たされた宇野選手の前に、救世主が現れる。トリノ五輪銀メダリストであり、現在はスイスにて選手の育成を行うステファン・ランビエール氏だ。自身を“宇野選手の大ファン”と語るランビエール氏は、コーチ就任後、まずは技術ではなく、モチベーションや氷上を舞う喜びを取り戻すための精神的ケアを重視したという。信頼するコーチの元、宇野選手は再び、笑顔を取り戻す。そして“悪夢”のフランス杯から1ヶ月半後、二人三脚で臨んだ全日本選手権にて、本来の力を出し切り、大会4連覇を成し遂げた。
さらに、宇野選手の闘志に火を点けたのが「君が世界のトップになるには何が必要だと思う?」とのランビエール氏の問いかけだった。「スケート人生で一番燃えていた」と振り返る五輪シーズンでは、4回転ジャンプを4種類5本盛り込んだプログラムに着手。最高難度の演目を見事に演じ切り、北京五輪では銅メダル、世界選手権では金メダルを獲得。翌年には、日本男子初となる、世界選手権に連覇の快挙を達成した。

提供/ NTTドコモ Sports Graphic Number
宇野選手にとって挫折とはどんなものだったのか
「挫折」と真摯に向き合い、人との出会いを通して成長してきた宇野選手にとって、「挫折」が持つ意味とは何か。
「『挫折』することはとても辛く悲しいものだけれど、『挫折』できるほどいっしょうけんめい取り組んでこられた証。『挫折』があるからこそ、より嬉しさや楽しさ、幸せを感じることができます。『挫折』は、『挫折』したところで終わってしまえば『失敗』になるけれど、どんな形であれ、『挫折』した経験を人生で活かすことによって、『挫折』が“成功に繋がるためのプロセス”になると、僕は思っています」
『NumberTV』 挫折地点~あのとき前を向いた理由~
title:#11 宇野昌磨
Release date:September 26, 2024 (Thursday) 0:00 ~ 24 episodes in total (scheduled to be distributed twice a month)
content:This documentary program focuses on the "failures" and "comebacks" of top athletes. In a special space (the Number Room) decorated with old photos, the athletes themselves look back on their lives and talk about moments of failure and the reasons they were able to move forward.
*The information in this article is current as of the time of publication.