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【スポーツ書評】名将・落合博満が結果を出し続けた“考え方”

名将・落合博満ーいわずとしれた日本プロ野球界のレジェンドのひとりだ。プロ野球選手としても監督としても数々の実績を残し、その考え方や行動力は多くの人に影響を与えている。そんな彼の著書『決断=実行』(ダイヤモンド社)より、人生で大切な「決断力」の磨き方のヒントをご紹介する。※トップ画像/筆者撮影

Icon img 8236 1 冨田隼来(じゅんじゅん) | 2025/01/31

名将・落合博満について

三冠王を3度達成した圧倒的な打撃力、日本プロ野球史上唯一、三冠王(首位打者・本塁打王・打点王)を3回達成した選手(1982年、1985年、1986年)。打者としての卓越した技術と努力の賜物であり、いまだに破られていない偉業だ。そして中日ドラゴンズ監督としての成功も記憶に新しい。2004年から中日ドラゴンズの監督を務め、8年間で4度のリーグ優勝、1度の日本一(2007年)を達成。結果を出す監督として、選手の個性を活かし、チーム全体を最大限に機能させる采配力を発揮した。

なかでも筆者が特筆して推したいのは、彼の「自分の信念を貫く姿勢」。常に自分の哲学を貫き、他人に流されることなく結果を出してきたことも彼の大きな特徴であり魅力だ。「勝つことがすべて」というシンプルな信念を軸に、プレッシャーに屈せず決断を実行する姿勢は、多くの人に勇気を与え続けている。

この書籍のタイトルにもあるように、彼の強さはその「決断力」にある。それを培うためのポイントとは?

結果を出し続けた名将だからこそ響く、“考え続けることの重要性”と「決断力」の磨き方

それでは落合氏の『決断=実行』(ダイヤモンド社)より、「決断力」を磨くためのヒントを紹介していく。

決断の重要性と責任

成功には「決断」が不可欠であり、決断したら必ず「実行」に移すことがとても重要になってくる。自分が下した決断に対して、結果の責任を取る覚悟を持つ。

何か出来事が起きた時に人のせいにするのは簡単だ。その時に自分自身とどう向き合うのかが大切だとこの書籍を読んで改めて感じる点だといえそうだ。


目標設定と戦略

明確な目標をチームで立て、それを達成するための具体的な戦略を考える。その時に重要になってくるのが、自分自身やチームに合ったやり方を見つけることだ。

中日ドラゴンズの監督時代、守り勝つ野球を徹底して、常勝軍団を作った。彼が出した“結果”からもわかる通り、チームの特徴を理解していくことが大切であり、ビジネスパーソンにおける組織形成にも活かしていけるアドバイスがつまっている。


データと直感の活用

判断の基礎には、徹底したデータ分析が必要だ。そのデータ分析を活用しつつ、最終的には直感も大切にする。

落合氏は特に監督を務めている期間に、選手の状態や試合の流れを見極めて“柔軟に”対応していくことで結果を出し続けた。そう、ただ闇雲に行動するのではなく、工夫・改善を繰り返していくことが、大きな“結果”に結びつくのだ。ビジネスにおける“PDCA”の考え方に通じるだろう。アクションを起こし、その結果を分析し、改善していく。ビジネスにもスポーツにも活きる考え方といえそうだ。

直感というと勘と思いがちだが、積み重ねた己の感覚も重要で、決断するための原動力ともいえそうだ。


人材育成とリーダーシップ

チーム(選手)の個性を理解し、それぞれに適したアプローチを取る。一律のやり方ではなく、個々の能力を最大限に引き出す方法を考える。

彼は「チームの底上げを10%する」ことを掲げて、キャンプに取り組んでいたことがある。この目標も決断だといえるだろう。

さらにチームを底上げするということは選手一人ひとりの長所や短所を見極めて、それぞれをどう成長させるか考える必要がある。ただ高い目標を掲げるのではなく、全体として達成すべき目標として組み立てる。そのうえで目標を決める。これもまた決断だ。


挑戦と変化を恐れない

変化を恐れるのではなく、必要に応じて挑戦する姿勢を持つ。失敗は成功へのステップと捉え、試行錯誤を繰り返すことが成長につながる。

ここは前述の箇所と通じている。同じアクションを起こすのではなく、いろいろ挑戦して失敗する。この失敗を分析して改善して成功に近づけるのだ。

この体験を重ねることで、自分なりに“失敗しない決断をしていく”感覚がわかってくるのだろう。


結果を出すための努力

結果が全てという厳しい世界において、結果を出すための準備や努力を怠らない。「勝つためには何をすべきか」を常に考え続ける。

結果を出すことに対して、やはり挑戦する、変わる“怖さ”があって、どうしても逃げてしまいがちではないだろうか。その自分の気持ちや現実にしっかり向き合うのか、それとも逃げるのかで、大きく結果は変わってくることをこの書籍で改めて理解できた。


自己管理と継続性

自分自身の体調やメンタルを管理し、持続的に力を発揮することの重要性を説く

一時的な成果ではなく、長期的に成功し続けるための努力が重要だ。長く結果を出す上で絶対に必要になってくるのが「健康」だ。プロである以上、常に自覚を持って行動が非常に大切で、この考えはビジネスパーソンにも十分通じる考えといえそうだ。

決断することはエネルギーが必要だし、その決断を成功させ、継続させるにもまた体力が必要だ。よく身体は資本というが、まさに決断力を養うためにも身体は大切だ。

人生や仕事に役立つ、「決断力」を磨く5つの考え方

1. 責任を持つ覚悟:決断には必ず責任が伴うが、それを恐れず挑戦する姿勢が大切

2. 戦略的な思考:徹底したデータ分析と経験に基づき、効率的かつ的確に行動する

3. 柔軟性と挑戦:状況に応じて変化を恐れず、新たな道を切り開く勇気

4. 結果へのこだわり:結果を出すために最善を尽くし、プロセスを常に見直す

5. 個々の力を最大化:自分やチームの特性を理解し、適材適所で最大の成果を引き出す


「決断力」を養うため、また迷いや不安を乗り越えて結果を追求する行動指針として、この書籍を一読するのをおすすめしたい。