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Hiromi Matsunaga talks about the appeal of the “endangered species” switch hitter (3)

The 2024 professional baseball season is reaching its climax, but this season, the tendency for pitchers to hit well and hit poorly is more pronounced than ever before. We asked Hiromi Matsunaga, who accumulated 1,904 hits during his active career and hit 203 home runs, the most of any switch hitter, about his thoughts on switch hitters (switch hitters), who are now few and far between in the Reiwa era of professional baseball. Photo by author

Icon fopv vbvqbakaduJunichi Swan | 2024/09/26

――現役時代の松永さんはスイッチヒッターとしてご活躍されました。プロ入り後に転向されたそうですが、何かきっかけはあったのでしょうか?

松永:当時のコーチに勧められたのが一番の理由でしたけど、今振り返ってみると、昔から他人と違うことをやるのが好きだった自分の性格も、もしかしたら影響していたかもしれません。

例えば右と左に道があって、みんなが左に進んだら、自分は右を選んでみたくなるタイプで……。

もし、僕が右側の景色を見れば、多数派の左を選んだ人たちに様子を聞くと、自ずと左右双方のことが見えてくる。昔からたくさんの情報を知って、一石二鳥を狙いたい性格だったんですよ。

――プロ野球を見渡すと、今年限りでの引退を発表した金子侑司選手(西武)や田中和基選手(楽天)など年々スイッチヒッターが少なくなっている印象を受けますが、この辺りについて松永さんはどのように感じていますか?

松永:出来ると思うんだけどね……。プロ入り後に左打者になり、その“作られた左”で通算打率3割打てましたし、僕は一般的に言われるほど難しいものだとは思っていなくて。時代の違いはあるかもしれませんが、それでも「1年くらい一生懸命にやれば絶対にできる」と僕は思っています。

現役時代には、僕の所に来て「1ヶ月で完成しました」と言ってきたような選手も実際にいましたから…。

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©YDB

――それでも多くの選手がスイッチヒッターを断念する現状も見られます。

松永:僕が試合を見ていると「スイッチヒッターをやってみてほしいな……」と思う選手もいるんですけどね。

右投手に苦戦する右打者とかを見ていると、「左打席に立てば打てるんじゃないのかな?」とか、「変えてあげたいな」と思うような場面も実際にありますから。

でも、経験者が少なくなっているせいなのか、両打ち転向が選択肢になりにくくなっているところはあるのかなと思います。

――松永さんは左打席に立ってみて苦労されたことはありますか?

松永:左打席に立ち始めたばかりの頃は、インコースのボールが来た時は怖さがありました。

でも「全然怖くなかった」というスイッチヒッター経験者もいますから、これは人それぞれなんじゃないかと思います。

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松井稼頭央(出典/Getty Images)

――松永さんは通算203本塁打を放つなど、走攻守揃った選手として活躍されました。

松永: 僕の現役時代にはなかった自分のOPSの数値を見たら、.837もあることを知って、 松井稼頭央の現役時代(日本通算.793、MLB通算.701)よりも高くて驚いたことがありました。

――OPSが.810以上ある選手は、本塁打打者として分類されるそうです。

松永:そうなんですよ。僕と同時期に現役だった選手で言うと、谷沢健一さん(中日、.848)とかに近くて。 「そんなに数字が高いんだ…」と思ってビックリしましたよ。

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横浜DeNAとの交流戦では、試合前のレジェンド対決に登場し遠藤一彦投手と対決。変わらぬ姿を見せた。(©YDB)

――近年は1980〜90年代のプロ野球にはなかったさまざまな指標が生まれ、一般的になりました。

松永:確かにそうですね。でも、僕は言葉の捉え方や切り口が変わりつつある一方で、野球そのものについては、そこまで大きく変化しているとは思っていなくて、基礎になっているものはそこまで大きく変わらないと感じることの方が多いです。

どの時代においても野球をプレーするのは人間ですし、上達するためにはグラウンドでの経験を通じて自分の技術を磨いていかないといけないわけですから。

相手のことは変えられないけれど、自分のやり方や考え方は改善の余地がある。どの時代においても、変えられるものと変えようがないものをしっかり判別して、意思を持って取り組んでいかなければいけないんじゃないかと思っています。

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Photo by author

――4<人のお子さんの父親でもあり、カミチク軟式野球部の監督としても指導にあたられています。あえて時代の変化を感じる点があるとしたら、どのあたりでしょうか?

松永:頭で理解していることと、身体が正しく動かせることを一緒のこととして捉えてしまっている人は増えているかもしれません。いつの時代も正しい手法に気づいて、それに合わせて意思を持ってやってかないと、なかなか上達はしませんし、それが見えにくくなっている所はあるのかなと思います。

あと僕が自分の子供達に事あるごとに伝えているのが、「僕は『きつい練習は成長に繋がる』と思っているけれど、辞めたいと思っていないか?」という問いかけです。もし、少しでも練習中に辞めたいと言う気持ちがあったら、「前向きに練習している人との気持ちの差はどんどん大きくなっていくよ」と話しています。

僕はどんなにきつくて辛い練習であっても、一つでもポジティブな要素を取り入れることで結果は大きく変わっていくと思っていますし、前向きにやり続けることで見えてくるものもあると思う。その辺りは僕が現役だった1980年代から全く変わっていないところなのかなと僕は思っています。

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Photo by author

松永浩美(まつなが・ひろみ)
1960年9月27日生まれ、福岡県出身。高校2年時に中退し、1978年に練習生として阪急に入団。1981年に1軍初出場を果たすと、俊足のスイッチヒッターとして活躍した。その後、FA制度の導入を提案し、阪神時代の1993年に自ら日本球界初のFA移籍第1号となってダイエーに移籍。1997年に退団するまで、現役生活で盗塁王1回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞4回などさまざまなタイトルを手にした。メジャーリーグへの挑戦を経て1998年に現役引退。引退後は、小中学生を中心とした野球塾を設立し、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスでもコーチを務めた。2019年にはYouTubeチャンネルも開設するなど活躍の場を広げている。

URL:http://matsunaga-hiromi8.com/