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The beautiful goddess of handball, her quietly burning passion and challenge vol.2

日本女子ハンドボールリーグに立つ選手たちは、まだプロの選手ではない。マイナースポーツとしての現実と向き合いながら、日中は仕事に励み、夜には練習や試合に挑む彼女たち。飯塚美沙希もその一人だ。プロ化が進まない現状、観客との距離を縮めるための挑戦、そして新たに立ち上げたアパレルブランド「IZMSPES」。スポーツとファッションの二つの世界を行き来しながら、彼女は今も自分の限界を超え続けている。その歩みの先に見据える未来とは?プロ化の難しさを超え、新たな挑戦に立ち向かう彼女の姿を追う。※メイン画像:撮影/長田慶

IconIppei Ippei | 2024/09/15

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The beautiful goddess of handball, her quietly burning passion and challenge vol.1

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現状の壁、プロ化が進まない女子ハンドボールリーグ

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Photography/Kei Nagata

 日本女子ハンドボールリーグ。その舞台に立つ選手たちは、まだプロ選手ではない。ハンドボールは日本においてマイナースポーツとされ、プロ化への道は険しい。「多くの選手が、日中は仕事をこなし、夜には練習や試合に励んでいるんです」その言葉からは、厳しい現実が伝わってくる。

 プロ化に向けての取り組みは進んではいるものの、まだ道半ば。「選手のパフォーマンスに影響が出るのはもちろんのこと、チーム運営にも課題が山積しています」彼女の目には、その課題を乗り越えようとする強い意志が宿っている。

 プロ化を進めることが、リーグ全体のテーマだ。だが、その道は決して平坦ではない。「選手と協会の間で、認識のずれがあるのも大きな問題です」と冷静に現状を見つめる。その言葉には、現場で戦う者としてのリアルな感情が込められていた。

観客との距離、プロ化がもたらす未来

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画像提供 / 本人(飯塚美沙希)

 ハンドボールの試合会場を訪れる観客たち。彼らの期待に応えるためにも、プロ化は重要だと飯塚は考えている。「観客動員数は、過去には2000人を超えることもありましたが、平均すると700人ほどが多いです」

 試合に足を運ぶ人々の顔を思い浮かべながら、飯塚は言葉を紡ぐ。

「女子の試合には男性ファンが多く、男子の試合には女性ファンが多いんです。年齢層は30代が中心ですね」ハンドボールの魅力を広め、さらなる観客を引きつけるためには、プロ化が重要な一歩となる。「プロ化が進めば、もっと多くの観客が会場に足を運び、ハンドボールの知名度が上がるきっかけになると信じています」。

 彼女の願いは、ハンドボールがより多くの人々に愛されること。その思いは、プロ化の実現へとつながっていく。「私たち選手も、ぜひプロ化を実現してほしいと強く願っています」と意気込みを語る。

デジタル時代の挑戦!YouTubeで広がる世界

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Photography/Kei Nagata

 飯塚は、ハンドボールの魅力を広めるために新たな挑戦を始めた。その一つがYouTubeチャンネルの開設だ。彼女の目には、スマートフォンを手にした若者たちが、日々どのように情報を受け取っているかが映っている。

「YouTubeを始めたきっかけは、ハンドボールをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いからです」と語る。さらに、「ファンを増やしたい」という強い願いもあったという。

 YouTubeを通じて、彼女は自身の試合や日常を発信している。「動画を通じて試合を見に来てくれる方が増えたんです。ハンドボールに興味を持ってもらえることが、こんなにも嬉しいなんて思ってもいませんでした」。

SNSの力、ファンと繋がる新しい方法

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Photography/Kei Nagata

 デジタルの時代において、飯塚はSNSの力も大いに活用している。「SNSでは、試合や練習の様子だけでなく、普段のプライベートな一面も積極的にシェアしています」SNSは、彼女にとってファンとの距離を縮めるための大切なツールだ。

「ファンクラブを作り、そこでファンの方々と直接交流する機会を設けることも意識しています」。ハンドボール業界では、女性アスリートがファンクラブを運営することはまだ少ない。しかし、飯塚は新しいモデルを築き上げようとしている。

「SNSでの発信は難しいと感じることはなく、むしろ楽しんでいます」その言葉通り、彼女は写真だけでなく、その時々の気持ちを日記のように書き込んでいる。「試合で負けた時の悔しい気持ちや、それをどう乗り越えているかという心の動きを素直に伝えたいんです」彼女のSNSは、ファンにとって彼女のリアルな姿を垣間見ることができる貴重な場所となっている。

アパレルブランド「IZMSPES」の誕生。自分を表現する新たな挑戦

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画像提供 / 本人(飯塚美沙希)

「昔からファッションには興味がありました」と彼女が立ち上げたアパレルブランド「IZMSPES」は、ただの洋服ブランドではない。そこには、アスリートとしての経験、そして彼女自身の信念が詰まっている。

「アスリートとしての経験を活かして、何か新しいことに挑戦したいと思ったんです」その思いが形となり、「IZMSPES」というブランドが生まれた。まだ立ち上げて1年ほどだが、飯塚の目には確かな自信が宿っている。最初は限られた人にしか届かなかった商品も、今ではオンラインで少しずつ注目を集めている。

ブランド名「IZMSPES」には、「ありのままの自分が美しい」という意味が込められている。「洋服にはそれぞれ、いろんな着こなし方があると思いますが、その人なりのスタイルで美しくあってほしい」という願いが、彼女の言葉から伝わってくる。このブランドを通じて、飯塚はファッションを通じた自己表現の可能性を広げようとしている。

シンプルさと機能性の融合「IZMSPES」のコンセプト

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Photography/Kei Nagata

 「IZMSPES」のコンセプトは、シンプルでありながら、スポーツの移動着としても私服としても使える、どちらにも対応できるデザインを意識している。「日常生活とスポーツシーンの両方に溶け込むアイテムを提供したい」と語る。彼女のデザインする服は、ただ美しいだけでなく、機能的であることが求められる。そこには、アスリートとしての実感に裏打ちされた哲学がある。

未来を見据えて、無理なく楽しむブランドの運営

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Photography/Kei Nagata

「今後の展望としては、大きな計画は特に持っていません」と正直に語る。しかし、その言葉には確固たる信念が感じられる。「自分がやりたいことにはどんどん挑戦していきたいと思っています。現在の事業もその一環です」

 彼女は、ブランドを無理に拡大することよりも、自分が楽しめる範囲で、自然体で続けていくことを大切にしている。

「お店を出す計画などは今のところありません」と微笑む。飯塚にとって、ファッションとは自己表現の一環であり、楽しみながら続けていくものだ。彼女の視線の先には、ハンドボールのコートと同じように、自分らしさを追求する新たなフィールドが広がっている。

 スポーツとファッション。二つの世界を行き来しながら、飯塚は新たな自分を発見し続けている。ハンドボール選手として、そしてアパレルデザイナーとして。彼女の挑戦はまだ始まったばかりだ。


Vol.3につづく


飯塚美紗希
1996年7月30日生まれ、千葉県出身。桐蔭横浜大学を卒業後、日本ハンドボールリーグでアランマーレ富山や三重バイオレットアイリスなどのチームでプレー。現在もハンドボールの魅力を伝えるために活動を続けている。 ハンドボールは他のスポーツに比べて認知度が低いと感じているが、この競技をより多くの人に知ってもらいたいとの思いで、YouTubeチャンネル「みーちゃんねる」を開設。また、自身のアパレルブランド『IZMSPES(アイムスペス)』も立ち上げ、InstagramやTwitterを通じて活動の幅を広げている。


Hair&make:Moeka Omi  (PUENTE.Inc)
Photo:Kei Osada
Styling:Waraya(KING GEAR)