Makoto Hasebe's impact continues even after he leaves the pitch - A new chapter brings hope to Japanese soccer

引退を表明したその会見は、ドイツ語で行われた。長谷部の言葉は、彼がこの国とその言語、文化にどれほど溶け込んでいたかを物語っていた。  

「サッカーを通じて得た経験と、ここドイツで学んだことは、私の人生の財産です。みなさんと共有できたこれまでの時間に心から感謝しています」  

長谷部のキャリアは輝かしいものだった。ブンデスリーガで383試合に出場し、外国人選手としては歴代3位の出場記録を持つ。この数字だけ見ても、ドイツサッカー界における影響力が伺える。フランクフルトのスタジアムで彼のプレーを見ることができたのは、多くのファンにとってこの上ない喜びだった。 

キングカズが認めた才能。長谷部誠、日本のカカから国際的リーダーへの軌跡

写真／清水和良

日本サッカー界における生きる伝説、キングカズが初めて長谷部誠を見たときの印象は、「まるで日本のカカだね」との感想を抱いたという。

その言葉は、長谷部が浦和レッズでデビューした頃のプレースタイルからインスピレーションを得たものだ。若き長谷部は、ブラジル代表のカカを彷彿とさせるような、中央から前線へとドリブルでボールを運ぶ姿が特徴的だった。  

攻撃力が持ち味だった長谷部のプレースタイルは、常に進化を遂げていった。ドイツの地を踏んだ彼は、攻撃的な中盤からさらに役割を広げ、ボランチ、リベロとしての技術を磨き上げた。それだけでなく、チームのキャプテンとしてもその資質を発揮し、リーダーシップを取ることでさらなる高みへとチームを引き上げた。  

長谷部は、監督からの戦術的要求に誰よりも柔軟に対応する能力を持ち、変貌を遂げていった。その彼の変化と成長の証として、日本代表のキャプテンとしての出場試合は歴代最多の81試合に達している。

さらに、ワールドカップでは3大会連続でキャプテンを務め、その姿勢と行動で「苦しい時に背中で仲間を引っ張るのが本当のリーダーシップ」という理念を体現していた。 

日本人選手が国際舞台で成功するためには、文化や言語の壁を越えること

写真／清水和良

日本サッカー史上最高の選手についての議論が再燃する中、中田英寿や本田圭佑、小野伸二などの名前が挙がるが、長谷部のリーダーシップと国際舞台での成功も彼を特別な位置に置いている。

長谷部は、外国でのプレイを通じて日本人選手の可能性を広げ、新たな地平を切り開いた。その証拠として、フランクフルトの街では、外国人選手としてではなく、精神的支柱として受け入れられ、地元コミュニティにも深く愛された。    

その理由を紐解くと、長谷部のリーダーシップは、戦術の知識だけでなく、人間としての深い理解と共感に根ざしている。自らを前面に出すことなく、チーム全体の利益を考え行動していたため、外国人の集団の中でも特に際立っていた。  

これに対して、他の日本人選手たちは主にピッチ上での技術で評価されており、チームの精神的支柱としては見られなかった。長谷部のリーダーシップはドイツの厳しい環境下でも認められ、彼なしにチームの成功を想像することは難しいとされている。  

しかし、すべての選手に引退の時が訪れる。長谷部は自身の体と心に耳を傾け、このタイミングが正しいと判断した。  

「ファン、家族、そして友人たちと共有したこのキャリアには無限の感謝をしています。そして、これからもフランクフルトとともに、新しい役割でサッカー界に貢献していきたい」と語った。  

引退会見の最後には、地元メディアからの質問が相次いだ。長谷部の決断を尊重しつつも、彼がこれまでのキャリアで経験したこと、特に日本人選手として外国で成功を収めた秘訣について質問を重ねた。  

これらの質問にも丁寧に答え、日本人選手が国際舞台で成功するためには、文化や言語の壁を越えることの重要性を強調した。  

記者会見が終わると、場内からは温かな拍手が沸き起こったらしい。そんな長谷部の言葉には、常に他人を尊重し、チームとファンへの深い愛情が込められていた。  

フィールドを離れても変わらぬ影響力―日本代表監督への道が開かれる