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15年ぶり来日のアーセン・ヴェンゲル氏と岡田武史氏が対談 日本サッカーの未来を語る
元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏が、東京渋谷で開催されたイベントに登壇。元日本代表監督で、現在は今治FCのオーナーを務められている岡田武史氏との対談が開催された。
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「グランパスの監督をされていたときは、挨拶する程度だったが、日本代表の監督として2010年の南アフリカワールドカップに向かう前にアドバイスをもらって、そこから親交が深まった」と話す岡田氏。
10年前にヴェンゲル氏から「この予選グループ(日本、オランダ、デンマーク、カメルーン)を突破できるわけないだろう。セットプレーでやられて終わりだ。もし突破した時には、東京に像を建ててやる」と言われたエピソードを明らかにした。
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ーーー日本サッカーの現状について?
岡田:日本サッカーは、確実に進歩していますが、どうしても主体的にプレーできる選手が少ないという点が課題です。なので、一旦歯車が狂うと、カバーできなくなる。ドイツワールドカップのオーストラリア戦、ブラジルワールドカップのコートジボアール戦が良い例です。
Wenger:かつて日本で監督をした時に、何かに付けて「どうするんですか?」と聞いてきたので「自分で考える。それがサッカーだ」と言ったことはありましたね。
岡田:ヨーロッパでは幼少期から、「原則を教えた上での自由」があるような気がしますが、日本はそれがないと感じた。だからFC今治では、主体性を持ってプレーできる選手を育てるという課題意識を持って、育成に取り組んでいます。
Wenger:日本人は、まだ最後の1歩を踏み出す自身が足りないと思います。メンタルが強く、プレッシャーが掛かる場面でも、不安に打ち勝てるような自分自身を持っていることが大切です。
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ーーー岡田さんが日本代表の監督として2回のワールドカップを戦ったときに感じた「世界との差」について
岡田:1998年のフランス大会では世界との大きな差がありましたが、2010年の南アフリカ大会では、それがかなり縮まっているように感じました。
世界的に有名な選手であっても、アンダー世代の時に勝った経験がある選手がいたりする状況だったので、自信を持った状態で試合に臨めていた気がしましたね。
日本人は、個人がフィジカルで突破する力は落ちますが、チームワークを生かせば世界でも戦える。あとは選手の主体性を身につけることかなと、その時は感じましたね。
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ーーー理想の選手育成について、どのように考えているか?
Wenger:サッカーは、目指すものに目を向けてパフォーマンスを良くしていくという、非常にシンプルなもの。トップ選手は、身体能力に長けているだけではなく、現状と目標の距離を埋めることが出来ています。
もし、指導者が効果的なフィードバックを伝える場合には、3つのポジティブな1つの課題点意見と併せて言う必要があります。そうしないと、なかなか受け入れてもらえないように思います。
岡田:人間は苦労がなく、楽にできることがしたい。困難が少なく生きていける現代、スポーツのジャンルでだけメンタリティが強い人なんてそうそう出てこない。
私はフランスワールドカップの最終予選のとき、加茂監督の更迭によっていきなり日本代表の監督に就任し、壮絶なバッシングも受けました。
実際に、ジョホールバルで行われたイラン戦の前日には、妻に「試合に負けたら日本に帰れない。海外住むことになるかもしれない」と電話で話したりもしていましたが、最終的には「現時点の自分の力を出すしか出来ない」と、開き直ることができました。
まるで遺伝子にスイッチが入ったような感覚。この時点から人生が変わりましたね。怖いものがなくなりました。
困難な経験が出来る環境を社会がなくしつつあるなかで、スポーツだけでメンタリティを維持するのはとても難しい。テクノロジーを使った便利な生活だけでなく、誰かと力を合わせて困難を乗り越える幸せが経験できる社会であればいいなと思います。
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ーーープレッシャーに負けず、良いパフォーマンスをするには?
Wenger:トップ選手も、試合前に「怖さ」を感じています。良い結果を出すためには、試合の状況を予測し、そこで起こりうる問題を解決することと、自分自身に「勝つ」ことしかない。高いモチベーションとリラックスできる環境を整えることが大切です。
ーーーJリーグの将来についてはどのように感じているか?
岡田:ヨーロッパやアメリカは、日本よりも娯楽が少ない。娯楽がある場所まで、遠すぎて行けない地域もある。身近な場所で、手軽に楽しめる選択肢がサッカー観戦です。
さまざまな娯楽があふれる日本で、「強い」というだけで満員にできるのか?多くの人に受けいれてもらえるのか?疑問に感じる部分もある。
海外の歴史があるクラブに学ぶところもありますが、日本型のマーケットを作ることが、スポーツビジネスの成功にもつながるのではないかと思っています。
Wenger:ヨーロッパが、「週末にサッカー観戦以外はやることがない」というのは、ちょっと反対ですね(笑)
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ーーー2020年には東京オリンピックが行われます。「勝者のメンタリティ」を持ったチームを作り上げる必要があるわけですが、どうすれば良いでしょうか?
Wenger:トレーニングには、トレーニングのため、競うため、勝つためという3つの目的があります。居心地が悪い状態を、居心地の良いものにするための挑戦を続けなければいけない。
どうやって試合に臨み、試合を運んでいけば勝てるのか。前もって想像しておくことが大切です。
岡田:監督をしていたときは、ロッカールームの雰囲気が、「ヤバい」と思ったらときにはきちんと指摘しましたし、選手同士が熱く議論している時には言わない。選手の気持ちをどのようにコントロールするかが大切です。
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ーーーサッカーの未来像について、どんな風になるとお考えですか?
岡田:男子サッカーは、速さと強いプレス。「速さと正確性」が求められる一方で、新しい戦術が生まれにくくなりつつある。この傾向は、もう少し続くのではないかと思っている。 その後、ルール変更などがあったときに、また新しいサッカーや戦術が見られるのではないだろうか。
Wenger:テクニカル、フィジカルはトップレベルにあると思っていますが、その一方で、想像力豊かな選手が解雇されたり、試合に起用されないという状況も目にしてきました。
サッカーは「アート」でもあるので、表現力はあり続けなければいけない。現代のサッカーは、クリエイティブなプレーが、潰される傾向にあるので残念です。 若い選手には、フィジカルとクリエイティブの双方を実践していってほしいです。
司会のフローラン・ダバディ氏の「いろいろなサッカーがあるから面白い」という子園とでコメントで、この日の二人の対談は幕を閉じた。
オーナーを務められている今治FCのJ3昇格が決定したばかりの岡田武史氏と、 9月に吉本興業との契約を締結したアーセン・ヴェンゲル氏。今後の活躍にも注目したい。
Photo courtesy and coverage cooperation: Yoshimoto Kogyo Co., Ltd.
10年前にヴェンゲル氏から「この予選グループ(日本、オランダ、デンマーク、カメルーン)を突破できるわけないだろう。セットプレーでやられて終わりだ。もし突破した時には、東京に像を建ててやる」と言われたエピソードを明らかにした。
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ーーー日本サッカーの現状について?
岡田:日本サッカーは、確実に進歩していますが、どうしても主体的にプレーできる選手が少ないという点が課題です。なので、一旦歯車が狂うと、カバーできなくなる。ドイツワールドカップのオーストラリア戦、ブラジルワールドカップのコートジボアール戦が良い例です。
Wenger:かつて日本で監督をした時に、何かに付けて「どうするんですか?」と聞いてきたので「自分で考える。それがサッカーだ」と言ったことはありましたね。
岡田:ヨーロッパでは幼少期から、「原則を教えた上での自由」があるような気がしますが、日本はそれがないと感じた。だからFC今治では、主体性を持ってプレーできる選手を育てるという課題意識を持って、育成に取り組んでいます。
Wenger:日本人は、まだ最後の1歩を踏み出す自身が足りないと思います。メンタルが強く、プレッシャーが掛かる場面でも、不安に打ち勝てるような自分自身を持っていることが大切です。
ーーー岡田さんが日本代表の監督として2回のワールドカップを戦ったときに感じた「世界との差」について
岡田:1998年のフランス大会では世界との大きな差がありましたが、2010年の南アフリカ大会では、それがかなり縮まっているように感じました。
世界的に有名な選手であっても、アンダー世代の時に勝った経験がある選手がいたりする状況だったので、自信を持った状態で試合に臨めていた気がしましたね。
日本人は、個人がフィジカルで突破する力は落ちますが、チームワークを生かせば世界でも戦える。あとは選手の主体性を身につけることかなと、その時は感じましたね。
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ーーー理想の選手育成について、どのように考えているか?
Wenger:サッカーは、目指すものに目を向けてパフォーマンスを良くしていくという、非常にシンプルなもの。トップ選手は、身体能力に長けているだけではなく、現状と目標の距離を埋めることが出来ています。
もし、指導者が効果的なフィードバックを伝える場合には、3つのポジティブな1つの課題点意見と併せて言う必要があります。そうしないと、なかなか受け入れてもらえないように思います。
岡田:人間は苦労がなく、楽にできることがしたい。困難が少なく生きていける現代、スポーツのジャンルでだけメンタリティが強い人なんてそうそう出てこない。
私はフランスワールドカップの最終予選のとき、加茂監督の更迭によっていきなり日本代表の監督に就任し、壮絶なバッシングも受けました。
実際に、ジョホールバルで行われたイラン戦の前日には、妻に「試合に負けたら日本に帰れない。海外住むことになるかもしれない」と電話で話したりもしていましたが、最終的には「現時点の自分の力を出すしか出来ない」と、開き直ることができました。
まるで遺伝子にスイッチが入ったような感覚。この時点から人生が変わりましたね。怖いものがなくなりました。
困難な経験が出来る環境を社会がなくしつつあるなかで、スポーツだけでメンタリティを維持するのはとても難しい。テクノロジーを使った便利な生活だけでなく、誰かと力を合わせて困難を乗り越える幸せが経験できる社会であればいいなと思います。
ーーープレッシャーに負けず、良いパフォーマンスをするには?
Wenger:トップ選手も、試合前に「怖さ」を感じています。良い結果を出すためには、試合の状況を予測し、そこで起こりうる問題を解決することと、自分自身に「勝つ」ことしかない。高いモチベーションとリラックスできる環境を整えることが大切です。
ーーーJリーグの将来についてはどのように感じているか?
岡田:ヨーロッパやアメリカは、日本よりも娯楽が少ない。娯楽がある場所まで、遠すぎて行けない地域もある。身近な場所で、手軽に楽しめる選択肢がサッカー観戦です。
さまざまな娯楽があふれる日本で、「強い」というだけで満員にできるのか?多くの人に受けいれてもらえるのか?疑問に感じる部分もある。
海外の歴史があるクラブに学ぶところもありますが、日本型のマーケットを作ることが、スポーツビジネスの成功にもつながるのではないかと思っています。
Wenger:ヨーロッパが、「週末にサッカー観戦以外はやることがない」というのは、ちょっと反対ですね(笑)
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ーーー2020年には東京オリンピックが行われます。「勝者のメンタリティ」を持ったチームを作り上げる必要があるわけですが、どうすれば良いでしょうか?
Wenger:トレーニングには、トレーニングのため、競うため、勝つためという3つの目的があります。居心地が悪い状態を、居心地の良いものにするための挑戦を続けなければいけない。
どうやって試合に臨み、試合を運んでいけば勝てるのか。前もって想像しておくことが大切です。
岡田:監督をしていたときは、ロッカールームの雰囲気が、「ヤバい」と思ったらときにはきちんと指摘しましたし、選手同士が熱く議論している時には言わない。選手の気持ちをどのようにコントロールするかが大切です。
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ーーーサッカーの未来像について、どんな風になるとお考えですか?
岡田:男子サッカーは、速さと強いプレス。「速さと正確性」が求められる一方で、新しい戦術が生まれにくくなりつつある。この傾向は、もう少し続くのではないかと思っている。 その後、ルール変更などがあったときに、また新しいサッカーや戦術が見られるのではないだろうか。
Wenger:テクニカル、フィジカルはトップレベルにあると思っていますが、その一方で、想像力豊かな選手が解雇されたり、試合に起用されないという状況も目にしてきました。
サッカーは「アート」でもあるので、表現力はあり続けなければいけない。現代のサッカーは、クリエイティブなプレーが、潰される傾向にあるので残念です。 若い選手には、フィジカルとクリエイティブの双方を実践していってほしいです。
司会のフローラン・ダバディ氏の「いろいろなサッカーがあるから面白い」という子園とでコメントで、この日の二人の対談は幕を閉じた。
オーナーを務められている今治FCのJ3昇格が決定したばかりの岡田武史氏と、 9月に吉本興業との契約を締結したアーセン・ヴェンゲル氏。今後の活躍にも注目したい。
Photo courtesy and coverage cooperation: Yoshimoto Kogyo Co., Ltd.
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2019/11/19
Former Japan national football team Seiichiro Maki holds a retirement match in his hometown of Kumamoto "Returning the real thing to Kumamoto's children"
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2019/11/18
"The Challenge of Japanese Soccer is Mental" Mr. Asen Wenger gives a lecture in Tokyo
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2019/11/17
Japanese women are not defeated by China, and silver medals are positive for the Tokyo Olympics. Yoshimasa Ito "I want to come back to this place with the power to win" [JA Zennotsu ITTF Table Tennis World Cup Team Finals]
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2019/11/15