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モンゴル代表に日本人を発見!~錦戸雅俊の挑戦~
10月10日に日本代表が対戦するモンゴル代表。そのモンゴル代表に日本人がいるという情報が入った。もちろん選手ではない。トレーナーだ。どのようにしてモンゴル代表のトレーナーになったのか?など興味深い話を聞かせて頂いた。
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――まずはモンゴル代表のトレーナーになった経緯を教えてください。
錦戸:日本では大学2年生の時に、大学サッカー部のトレーナーを2年半ほど経験しました。在学中にモンゴルへの留学を決めていたので、大学卒業後に3ヶ月ほど整骨院で働かせて頂いてから、モンゴルの大学院へ向かいました。
大学院ではもちろん修士を取るために来ましたが、その空き時間を使って、トレーナー活動をしようと思い、知人からErchim(モンゴルリーグに所属しているチーム名)の監督を紹介して頂きました。
直接、電話で「トレーナーを必要としていませんか?」と聞き、次の日からサポートさせて頂くことになりました。その方が代表でもコーチとして関わっていることから、A代表やU19、女子のU16などでも関わらせて頂くことになったんです。
ちなみに今は大学院を卒業して、モンゴルの大学に勤務しています。並行してモンゴル代表のトレーナーをさせて頂いています。
――自ら道を切り開いてきたんですね。トレーナー活動をされている中で、モンゴル人の筋肉のつき方や身体能力は日本人とどのように違いますか?
錦戸:筋肉や骨格は日本人と大差はないと思われます。ただモンゴルの冬は非常に寒く、乳児に"おくるみ"で全身を包んでしまい、股関節が伸びた体勢で締められ、動けない状態をつくります。
これは発育性股関節形成不全を引き起こしてしまう原因にもなるため、日本では赤ちゃんの足を広げて抱っこするようになっているかと思います。
その影響があるのか、股関節の可動域が非常に小さい傾向が見られます。
また、国技であるモンゴル相撲は非常に人気が高く、幼少期から遊びの一環で取っ組み合いをしています。その為、スポーツ選手に限らず、足腰の強さはあるように思います。
――モンゴル人選手と日本人選手と接していると思いますが、それぞれの性格の違いを教えてください。
錦戸:個々にそれぞれの性格があるため、一概にモンゴル人と日本人での違いを述べることはできません。
強いて言うなら、モンゴルの方々は勝負事に熱くなりやすいと感じます。ウォーミングアップの一環でいわゆる鬼ごっこのような単純なゲームをするときでも、怪我をするのではないかというほど、本気で追いかけ本気で逃げます。
そういった点は日本人にはあまり見られないように思います。
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――モンゴルの医療レベルやモンゴル人のトレーナーの現状を教えてください。
錦戸:サッカー以外にもバレーやレスリングなど、いくつかの競技でもサポートしてきましたが、どの現場においてもトレーナーはゼロです。チームドクターもいません。いたとしても、一般的な伝統医療医師やPTなどです。
近年、モンゴルのドクターたちも韓国や日本をはじめ、様々な国に留学をして、医療の知識や技術を身につけて戻ってきております。そのため、手術をする整形外科分野は以前に比べ発展してきていると思います。
しかし、筋肉や靭帯などの軟部組織損傷に対する治療やスポーツ復帰のためのリハビリなどは十分に行われておりません。
怪我をしてもただ休むだけで、痛みがなくなったらすぐに復帰してしまう。または痛みがあっても休まずプレーをしてしまう。そのようなことが一般的に行われており、結果として再発してしまったり、怪我が治りにくかったりすることも多々あります。
――モンゴルで苦労していることはなんですか?
錦戸:一番は治療を受ける施設や備品が当たり前のようにあるわけではないことです。例えば、アイシングをするにしても製氷機はどこにもありません。
予防でテーピングをしたくてもなかなか手に入らなかったり、あったとしても高くて質が悪かったりします。もちろん無いなら無いで、代用できるもので対応します。
あと、そこまで困っているわけではありませんが、医療に関する知識の相違では選手を説得するのになかなか理解が得られないことがあります。
「脳震盪に対して頭をマッサージする」「突き指を引っ張る」など、古くから伝統的に行われていることもあり、私は無理に自分のやり方を押し付けることはしません。リスクを伝えた上で、あとは選手の判断に任せるようにしています。
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――モンゴル代表の見所や注目選手を教えてください。
錦戸:ほとんどの選手が埼玉スタジアム2002のように大観衆の中でプレーをしたことがありません。また、FIFAランクで見ても日本との差は150位以上もあります(2019年9月時点)。
当然劣る点は多々ありますが、そういった中でも少しづつ力をつけてきています。また、チームは多くの若手選手で構成されており、これからが非常に楽しみとなっています。
その成長の過程で格上の相手に対して、最後まで熱く食らいつく姿勢が見られるのではないかと思います。
――10月10日の日本代表との試合では凱旋帰国になると思いますが、意気込みを教えてください。
私はピッチに立ってプレーをするわけではありません。あくまでサポートをするだけです。
モンゴルの選手たちはW杯やヨーロッパのリーグなどで活躍する日本代表と対戦できることを非常に楽しみにしております。その選手たちが全力でプレーできるようにサポートしていきます。
そして、今回の試合やこの記事を通してモンゴルの現状を知ってもらい、少しでも興味を持っていただけたり、トレーナーとして活動する仲間ができると非常に嬉しく思います。
(了)
写真提供:錦戸雅俊
錦戸:日本では大学2年生の時に、大学サッカー部のトレーナーを2年半ほど経験しました。在学中にモンゴルへの留学を決めていたので、大学卒業後に3ヶ月ほど整骨院で働かせて頂いてから、モンゴルの大学院へ向かいました。
大学院ではもちろん修士を取るために来ましたが、その空き時間を使って、トレーナー活動をしようと思い、知人からErchim(モンゴルリーグに所属しているチーム名)の監督を紹介して頂きました。
直接、電話で「トレーナーを必要としていませんか?」と聞き、次の日からサポートさせて頂くことになりました。その方が代表でもコーチとして関わっていることから、A代表やU19、女子のU16などでも関わらせて頂くことになったんです。
ちなみに今は大学院を卒業して、モンゴルの大学に勤務しています。並行してモンゴル代表のトレーナーをさせて頂いています。
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――自ら道を切り開いてきたんですね。トレーナー活動をされている中で、モンゴル人の筋肉のつき方や身体能力は日本人とどのように違いますか?
錦戸:筋肉や骨格は日本人と大差はないと思われます。ただモンゴルの冬は非常に寒く、乳児に"おくるみ"で全身を包んでしまい、股関節が伸びた体勢で締められ、動けない状態をつくります。
これは発育性股関節形成不全を引き起こしてしまう原因にもなるため、日本では赤ちゃんの足を広げて抱っこするようになっているかと思います。
その影響があるのか、股関節の可動域が非常に小さい傾向が見られます。
また、国技であるモンゴル相撲は非常に人気が高く、幼少期から遊びの一環で取っ組み合いをしています。その為、スポーツ選手に限らず、足腰の強さはあるように思います。
――モンゴル人選手と日本人選手と接していると思いますが、それぞれの性格の違いを教えてください。
錦戸:個々にそれぞれの性格があるため、一概にモンゴル人と日本人での違いを述べることはできません。
強いて言うなら、モンゴルの方々は勝負事に熱くなりやすいと感じます。ウォーミングアップの一環でいわゆる鬼ごっこのような単純なゲームをするときでも、怪我をするのではないかというほど、本気で追いかけ本気で逃げます。
そういった点は日本人にはあまり見られないように思います。
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――モンゴルの医療レベルやモンゴル人のトレーナーの現状を教えてください。
錦戸:サッカー以外にもバレーやレスリングなど、いくつかの競技でもサポートしてきましたが、どの現場においてもトレーナーはゼロです。チームドクターもいません。いたとしても、一般的な伝統医療医師やPTなどです。
近年、モンゴルのドクターたちも韓国や日本をはじめ、様々な国に留学をして、医療の知識や技術を身につけて戻ってきております。そのため、手術をする整形外科分野は以前に比べ発展してきていると思います。
しかし、筋肉や靭帯などの軟部組織損傷に対する治療やスポーツ復帰のためのリハビリなどは十分に行われておりません。
怪我をしてもただ休むだけで、痛みがなくなったらすぐに復帰してしまう。または痛みがあっても休まずプレーをしてしまう。そのようなことが一般的に行われており、結果として再発してしまったり、怪我が治りにくかったりすることも多々あります。
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――モンゴルで苦労していることはなんですか?
錦戸:一番は治療を受ける施設や備品が当たり前のようにあるわけではないことです。例えば、アイシングをするにしても製氷機はどこにもありません。
予防でテーピングをしたくてもなかなか手に入らなかったり、あったとしても高くて質が悪かったりします。もちろん無いなら無いで、代用できるもので対応します。
あと、そこまで困っているわけではありませんが、医療に関する知識の相違では選手を説得するのになかなか理解が得られないことがあります。
「脳震盪に対して頭をマッサージする」「突き指を引っ張る」など、古くから伝統的に行われていることもあり、私は無理に自分のやり方を押し付けることはしません。リスクを伝えた上で、あとは選手の判断に任せるようにしています。
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――モンゴル代表の見所や注目選手を教えてください。
錦戸:ほとんどの選手が埼玉スタジアム2002のように大観衆の中でプレーをしたことがありません。また、FIFAランクで見ても日本との差は150位以上もあります(2019年9月時点)。
当然劣る点は多々ありますが、そういった中でも少しづつ力をつけてきています。また、チームは多くの若手選手で構成されており、これからが非常に楽しみとなっています。
その成長の過程で格上の相手に対して、最後まで熱く食らいつく姿勢が見られるのではないかと思います。
――10月10日の日本代表との試合では凱旋帰国になると思いますが、意気込みを教えてください。
私はピッチに立ってプレーをするわけではありません。あくまでサポートをするだけです。
モンゴルの選手たちはW杯やヨーロッパのリーグなどで活躍する日本代表と対戦できることを非常に楽しみにしております。その選手たちが全力でプレーできるようにサポートしていきます。
そして、今回の試合やこの記事を通してモンゴルの現状を知ってもらい、少しでも興味を持っていただけたり、トレーナーとして活動する仲間ができると非常に嬉しく思います。
(了)
写真提供:錦戸雅俊
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2019/10/07
The world's best martial arts and e-sports are fused! "ONE Martial Arts Fan Festival"
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2019/10/03